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第4話 急襲。 怪物。


 ブクマ、感想、評価ポイント、感謝です\(^o^)/



 エコノセール所属の騎士団精鋭の100名は今から、森の中深くへと突入する。魔物を討伐するためだ。


 そう、100騎ではない。100名。


 森に入る以上、馬を降りなければならない。

 馬というのは神経質な生き物だからだ。

 なので森の中へ突入するには適さない。


 騎士団の全員がそれを理解している。

 なので団長の指示を待つことなく、既にそれぞれが担当する馬を木や即席の杭に繋ごうと作業していた。

 それを確認し頼もしく思いながら、ジャスティンは数人の結界師達を呼んだ。それは馬を守っているように指示を出すためだったが……



 その時だった。


 

〈〈ギョギャガアアアァァァアアアア!!〉〉



 突然。



 躍り出て来た。

 森の中から巨大な影が。

 ゴボッと大量の太枝を一音のもと圧し折りながら。

 しかも頭上から。

 …降ってきたその巨大の正体は件の魔物。

 

 それはなんとも醜悪な姿であった。

 獅子の胴と脚。恐らくは4足歩行。

 だが獅子の魔物ではない。

 頭の部位がおかしい。頭の殆どが口。

 それ程の『大口』。

 大喰らいだとひと目で分かる。

 そんな『大口』。

 尾の部位もおかしい。

 胴体の径をそのままにして伸びた…

 オタマジャクシの尾を思わすほどに太い尾。

 尾だと思えば違う…アレは頭?蛇。大蛇?

 蛇と言うには太すぎて短すぎるが。

 

 そんな異形の姿を下方から見上げながら 


(巨体であるのに…何と恐るべき身軽さか…)


 …などと、変な冷静さを利かせジャスティンは思っていた。

 現実味を全く持てなかったがためだ。巨大な魔物は、ゆっくり、ゆっくりと近付いて来る。ジャスティンは呆然としてそれを待つしかない──。


 ジャスティンだけではなかった。


 団の全員が完全に不意を突かれてしまっていた。

 全員が呆然と立ち尽くすのみだった。

 まさか魔物が、自身にとって有利な『森』というテリトリーを捨てて襲いかかって来るとは思いもよらなかったのだ。


 それに、魔物の被害にあったという村に立ち寄った時、全員がその現場を見てしまっていた。予備知識として仕入れたその情報が、ここでは完全にアダとなってしまった形だ。


 食い散らかされていた3頭のモース(家畜用の魔物。その姿は牛をさらにと大きくした感じ。)の死骸は、どれも凄惨なものだった。

 いや、死骸と呼べるモノは一つもなかった。どれもが『ひと噛みで大部分を消失』させられていたのだ。

 大量の血以外は、断面にくっきりと歯型を残す前脚や後ろ脚のみが残るという……とにかく異常な現場だった。


 あんなものを見てしまえば、魔物のサイズはかなり巨大なものだと予想できた。そして、腹を満たし動きが鈍った魔物は(ねぐら)に帰っているだろうとも。


 その全ての予想を覆し、この魔物は奇襲を成功させてみせたのだ。


 あの巨体で樹に登り、騎士団の誰にも気付かれずに潜み続け、頭上から襲撃。

 更には騎士団の全員が武器を抜かず、しかも馬を繋ぐ最中という最高のタイミングを察知してかつ、自身にとって有利なはずの森という舞台を捨てまで、した。


 この魔物は理想的な形で奇襲を成功させたのだった。


 奇襲時に大声で鳴くというのは、あの獣らしい見た目に似合ったお粗末さに思えただろうが、それは違う。


 アレは恐らく、【嚇声】という魔物が得意とする威圧スキルだ。肺に溜まった空気に魔力を馴染ませ声帯を極度に振動させ物理的な衝撃と共に威圧効果を敵の心に刻み込む…というスキル。


 つまりは、念には念を入れてきたのだ。あの魔物は。


 実際、今全員が金縛りにあったように動けなくされている。

 視界に映る全てが妙にゆっくりとして見えるのは『死の一歩手前を想起する程の恐怖』を心に植え付けられたからであった。


 更に更にご丁寧にも……この集団の長であるのが誰であるかまでも特定し、その指揮系統を瓦解させんとジャスティンを一番に狙うという徹底ぶりだ。


 見た目の恐ろしさやそこから想起される戦闘能力が目立つが、それよりもこの魔物の恐るべき特性は……その知性にこそあるのだろう。


 獣属の、上位種、しかも大型。

 想定しうる最悪を見込んでこの場に来た。


 …のだが……頭上に迫るはそれを凌ぐ最悪。


(まさか『キマイラ』だとは…。こんな馬鹿をしでかした時に、こんな反則級の魔物にブチ当たるなんて……つくづく自分には運がない…)


 確かに運がない。だが…


(違う。これは自分の判断ミスだ。ああ、やはり。やはり冒険者の連中を待つべきだったんだ。そうだ。これは、自分のせいだ。自分のせいで団のみんなは…)


 そう。…だが今更気付いた所で、もう遅いのだ。


 自分はこの『キマイラ』にひと飲みにされる。

 全身を噛み砕かれるという数瞬の激痛を味わったのちにはこの生涯を終えているのだろう。そしてその後を追うのだ。


 手塩にかけ育ててきた…愛すべき部下達までが。


 ジャスティンのそんな悲観的見解に、もはや他の団員全てが同調しつつあった。開戦早々、キマイラの予想以上早くに、ここにいる全員は瓦解していたのだ。その精神はもう既に、潰走状態に陥りつつあった。






 ただ一人を除いて。






 ガッッヂィィン!  

 

 飲み込まれる──その寸前にジャスティンの目の前、巨大な牙が噛み合わさった。上下の歯間に火花散る。

 ジャスティンを食らうべく大口を全開放していた魔獣の顎が強制的に閉じられたのだ。




 それをさせたのは黒光る、義手。




 その義手に、武器は握られていなかった。

 それは、『武器を構える時間などない』と判断したからなのだが…



(それにしたって……)


 

 まさか、『殴りつける』とは…。


 魔獣キマイラは、その巨大な顎を下から撃ち抜かれたのであった。いつの間にか出現した者が放った拳骨によって。

 カウンター気味にいいのを貰い、口内ではいくつかの牙が砕けて散らばった。しかもそれだけでは終わらなかった。噛み合わされた顎がそのまま上方に向かえば、身体は空中でのけ反る形になる。


 確かに魔物側の圧倒的有利状況であったのだ。

 …なのに、それが一転。

 無防備に晒らされたキマイラのドテっ腹。

 そこへ


 ドッンッッ!ドボドドドドドン!


 何かが分厚い肉を物ともせず突き刺さるようにしてめり込む音。


 一息。 何連もの重拳撃。


 それを放った者の足元を見れば、固い地面にめり込んでいる。攻撃により生じる反動を支えたからこうなったのだろうが…。


 では、その拳に込められた威力はどれ程のものであったのか。


(本当に何者なんだっ!この『死神』…いや、『義肢装具士』はっ!?)


 『義肢装具士』として腕が良いと有名でもあったこの『死神』と呼ばれる男が、『どうやら強いらしい』ということは報告に聞いていた。


 しかしこれは…


(大型の魔物、しかも『進化体』である上に『名憑き(ネームド)』の魔物と正面から殴り合うなど…)


 人間業ではない。というか人間の思考回路ではない。

 報告を聞いてすら想像の遥か上をいく戦闘力だ。

 ───謎過ぎる。


(『死神』────)


 エコノセール領騎士団団長、ジャスティン=クルセイア。


 彼は、(今はこんな精神状態にあるが)元は武名で知られた剛の者である。…そんな彼の目から見ても、目の前の男は異質過ぎる存在だと言わざるを得ない。───謎過ぎるのだ。


  大型の魔物で、変異種確定の進化体、その上『名憑き(ネームド)』との接近戦。


 それを制する者など、異質であると評すほかないではないか。


 一体、どのようにしてそんな規格外の力を手に入れた?何故そんな力を持ちながら『義肢装具士』という生産職に甘んじている?というか、こいつは何処から来たのだろう?闘奴であったという過去以外に何の情報も得られない。これ程の戦闘能力を有していて過去を辿れないなどと怪しすぎる。


 ───謎過ぎる。


 まさしく、『死神』と呼ばれて不足なき者だった。

 意味不明なその力が振るわれれば

 もたらされるは絶対の死…そう見えた。


 だがその不明なる不吉こそが、今ここに至っては何よりも頼もしい。


 騎士団員達は降って湧いたようなその悪運にすがりつく。

 この『闇香る英雄(ダークヒーロー)』のニクイ登場シーンをきっかけにして、無くした筈の士気を取り戻していくのであった───しかし。


 彼らの殆どは知らなかった。


 何故彼が『死神』と呼ばれるのか。

 このような死をも厭わぬ献身を見せる彼が、何故、不吉の象徴として扱われてしまうのかを───。




 ========



 ──ここは、異世界である。


 その異世界のとある街に、腕のいい『義肢装具士』が住んでいた。彼が造り出す義肢は多くの人々の人生を救い、その生活を支えた。その功績から見れば分かる通り、この男の性は『善』にあった。


 であるのに、誰が言ったか…彼は『死神』と呼ばれ、存在自体を忌まわしいものとされている。


 その通り名に相応しく彼の戦闘力は唐突にして突飛。

 戦う姿を見ればどちらが魔物なんだか分からない。

 だから死神と呼ばれるのだろうか?


 もちろん理由はそれだけではないだろう。


 無口…というより何故か喋ることが出来ない彼は弁明する機会を得られぬまま、今日に至っている。


 更に、彼の素性を知る者がいないという現状。彼に近しい者でもその殆どが彼の素性を把握していないのだ。とにかく謎が多い人物であった。

 

 はっきりして解ることは…


 『彼が人並み外れて有能である』…という、ただそれだけだった。…だからこそ彼は疎まれてしまったのかもしれない。


 善行を積んでみれば何故か疎まれ、『死神』とまで呼ばれてしまうというこの、解せない不遇。


 そして更に悪い事に、彼は周囲から疎まれているというのに、その表情を翳らせることをしなかった。実に馴れたものであるようにその不遇に対し無抵抗を貫いた。

 無愛想という訳でも、無表情な訳でもない。ただ、揺るがないだけの顔でいるのだった。


 その人並み外れた胆力からくる『揺るぎなさ』が、また周囲の反応に拍車をかけることになる。誤解される事になる。


 きっと、

 今日も彼は疑われ、

 疎まれ、誤解されるのだろう。


 結局今日も、


 異世界街の義肢装具士は正体不明なままなのである。




 主人公はこのようにしてイイトコ持ってく…ある意味不届き者なんですが…。


 だから嫌われるのかな(笑)


 それでも気になるという方!ブクマ、待ってます\(^o^)/

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