第3話 騎士団長、ふみはずす。
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───エコノセール領というのは、ドラグーン兵で有名な『帝国』と、冒険者ギルドの総本部が置かれる『共和国』、そしてこの『アウトリア王国の王都』、それら三要所のちょうど中間地点にある領だ。
そしてその領の中心にあり、この騎士団が拠点とする『エコノス』という都市は自然な流れとして交易で栄えるようになっていった。
よってこの都市は商人の都合に合わせて発展してきた。商人達が備蓄している穀物までも含まれる…食料を始めとする様々な物資は、最大利益を見込んで殆どが交易に充てられ都市外部へと流通していく。
なのでこの巨大な都市を自給させる為に城壁の外には広大な田園地帯が広がっており、その田畑を耕す農家はこの都市を中心として衛星的に散らばって在る農村で生活しているのだが、その広く分布している農村を守り、維持する為には、税も然ることながらあらゆる配慮が必要となった。
そういった背景もあり、この交易都市エコノスは『冒険者』という人種が非常に多く、其れに比例して冒険者ギルドが持つ力は絶大だ。
冒険者ギルドは様々な技能に秀でたプロフェッショナルな『個』が集結した団体である。その豊富な人材達をそれぞれ人員が不足している部門に上手くマッチングさせることで、このエコノスという都市を回す上で発生する、ありとあらゆる不具合を解消している。
正直言って、騎士団長ジャスティン=クルセイアはこの現状に不満があった。
なぜなら都市防衛部門でも半分以上…いやそれどころではない多くの部分に冒険者達が食い込んでいるからだ。
かと言ってこの広大過ぎる『人の分布図』全てを騎士団だけで守護するというのは無理がある。
結局は冒険者達には防衛力において一翼以上のものを頼るしかない。
かと言って…騎士団の仕事は『守る事』なのだ。守護する土地の全てを。そんな当たり前な事を『守護対象であるはずの人々』に忘れ去られてしまっているこの現状が、この若き騎士団長にとっては酷くストレスになっている。
『きしだんしゃまは、なんのおちごとをちていぅの?』
ある日いたいけな幼女が、会話の糸口として放った何気ない言葉。そんな何気ない言葉にまで大人気なくも過剰反応してしまうほどに。
『ふ…ふえ、ふえぇぇ〜ん、ご、ごえ…ごえんなしゃ…ふええぇぇ〜ん』
泣かせるつもりなど…なかった。
副団長にも嗜められた。当然である。
アレは自分の過失であったという自覚もある。
しかし抑えきれない想いがあったのだ。
部下達は、誰もがこの地を守る使命に燃えている。
なのに彼らは報われていない。
それは自分が報いてないも同然に思えた。
領民達にとって…騎士団はおそらく、御飾りぐらいにしか思われていないのだろう。もしかしたらあの幼女は親の影響であのようなことを言ったのかも……しれないではないか。
『一体騎士団の奴らは何をしているんだ…』
(あの幼女は両親からそんな話を聞いて……)
もちろん、これが邪推であるという自覚も、ある。
とにかくこのようにしていつしか、ただのストレスは御し難い程のコンプレックスに成長していった。自分でも思う。これはなかなかに厄介な精神状態だと。
『なんと不甲斐ない団長だ』と自分を責める日々。
だから、馬を走らせている。昔在ったはずの誇りを取り戻すべく。
運がいいのか悪いのか…強力な魔物出没の情報をギルドより先に入手出来た。それで、冒険者達よりも先にその魔物を討伐すべしと…。
何度も言うがこの行軍はそう、ただの抜け駆け。
『功を焦っての抜け駆け』なのだ。
そんな風にしてコンプレックスに振り回され行動選択をしてしまうのは、団長として失格であるのも分かっている。
常に冷静かつ適切に判断を下すことを求められるのが、管理職というものなのだから。
そう、全てを分かっていながらここまで来てしまった。引き返すなら今しかない。街道を走っているこの時点なら作戦の立て直しも効く。いや、引き返さずとも良いのだ。ただ隊を止めて、冒険者達で編成された討伐部隊と合流するだけでいい。
(なのに、何故自分はそうしないんだ…)
…ジャスティンは今、深い迷いの中にあった。何の熱に浮かされてここまで来たのか彼自身でもよく解っていないのだ。
ただ彼を弁護させてもらうならば、ジャスティンはもしかしたらノイローゼ状態であったのかもしれない。それ程、あの幼女との一件は彼の心深くに影を落としてしまっていたのだ。
そこに来てあの『死神』氏の登場である。
ジャスティンは『あの男が『死神』と呼ばれるようになった経緯』を知っていた。
『エコノスの義肢装具士。彼が出没する先々には必ずと言っていい程、災厄が降りかかる…。』
そんな都市伝説。
……というか、これはほぼ事実であるらしいのだが。なので彼が追従する今の状況が、如何に不味いものであるのかも理解していた。
(彼がここにいるのを知って尚、目的地に向かう…。この行動は『死地に向かっている』も同然のことなのかもしれないのだぞ?なのに…いいのか?自分。)
何度目かの自問。凝りもせず。
まともな自答が返って来た試しなどないというのに。
(いや、あの『死神』氏を不吉だと思ってしまうのは、あの迷いのないひたむきさが妬ましいからだな。きっと。)
潔い様に見えるが、
それは建設的に見せかけた言い逃れだった。
自分の中にある矛盾を一つ解き明かせた?
『それでは見当外れだ。』
何故この時そう思えなかった騎士団長殿?
もうすぐ到着してしまう。
目的地に。
そこは街道から外れた場所にある。
(……あ…)
騎士団一行はその街道から外れてしまった。
ジャスティンが一人懊悩している間に、
ジャスティンの決断は間に合わなかったのだ。
実は、『街道を外れる』という今の選択はジャスティンにとって『人生の道を踏み外してしまった』に等しい行為であった。
しかし人の身である彼にそこまで気付けるはずもなく。
無情な話だ。だがもう遅い。
ジャスティンは結局、迷いあるまま体だけをこの地に辿り着かせてしまった。彼はその事をこの先ずっと、後悔する事になる。
目の前に広がるそこは
深い森──。
《話中にあった国について》
以下三国はヒューマ主体国家です。
ヒューマというのは、ほぼ人間な感じの種族です。
【王国】…正式名称、『アウトリア王国』。大陸の西。他国より魔素量が多い。魔法か盛ん。
【帝国】…正式名称、『ベルン帝国』。かつて蛮族が支配していた北の土地をドラグーンという兵種を使って駆逐、捕らえた蛮族達の労役によってベルニオーガ大巨壁を作り上げた。王国とは大峡谷伝いで国境が接していて、ライバル関係。
【共和国】…正式名称、『共和国』。迷宮化した遺跡群があり、それらを商業として活用して繁栄。『冒険者ギルド』発祥の地。乱立する迷宮を鎮守するために冒険者ギルドが生まれた。5つの区画で別れており、それぞれに代表として評議員を置くが、それは表向き。実質の支配権はギルドマスターが持つ。冒険者主体の国。野蛮と最先端が混在するカオス国家。
…ていう感じです。設定などまた機会あれば後書きに掲載しますね♪
他に気になる設定などありましたら感想とか活用して下さいm(_ _)m
次話はバトルシーン描写あります。気になる方はブクマボタンポチッとしてみるのもイイと思います(*´ω`*)