第23話 異形達の夜。
静まりかえった闇森の中、
世にも美しい不気味と世にも醜い不気味が対峙していた。
美醜というコントラストを利かせながら調和もたらすのは両者の『不気味』。
その両極なる同属性が禍々しい夜の森風景を更にと禍々しく歪めていく。
美しくも不気味なる男ジン。
揺るぎない。
そのくせ、とてつもない不安定を醸している。
気配が不気味に揺らいで見える。
闇に近い夜の森に在ってまるで微光を吸い寄せているかのように、頭髪が淡く水色に光って見える。
顎にちらほらと生やす無精髭までが淡く光って浮いて見える。
そして一番に目を引くのは
『何でもない』というあの表情だ。
確かに揺るぎない。
だがそれは絶対の拒絶にも見える。
全てを受け入れているようにも見える。
結局何に属する表情なのか判別つかない。
種族にしたってそうだ。
確かに現実離れして美しい容姿だが、かと言ってエルフではないと分かる。美形で知られるエルフやハーフエルフには髭が生えないはずだから。
それに、肉体を見てもそうだ。
引き絞られてはいるが、エルフと呼ぶには線が逞し過ぎた。
揺るぎなく、美しく、逞しく、確かにそこに在るもの。
であるのにどれをとっても何に当て嵌めていいのか分からない。そんな存在というものは逆に不気味さを感じさせるものであるのかもしれない。
巷で『死神』と噂されるのも無理もない…とつい思えてしまう。
対峙する変異種オーガも負けていない。
ジンが放つ不気味に負けず不気味なる異形。
今、気持ち悪い顔をぐにぃと歪めた。
どうやら嗤っているらしい。
キマイラをも蹌踉めかせたジンの轟爆なる拳骨。
それすらもこの魔物には効いていないようだった。
キマイラに比べればサイズは小さい。(それでも身長は3mを超えているが)
だがその見た目はあのキマイラですら可愛く見えるくらいに不気味で、醜悪だ。
微妙に色違いの、変色してしまった皮膚片を縫いつなぎ合わせて出来上がった斑状の疑似なる皮膚。
そんなおぞましいスキンスーツで全身がスッポリと覆い尽くされている。
しかもそれは元々の皮膚に同化してしまっているようだ。呪いの装備に属するものであるのやもしれない。
そのスキンスーツには何かの異物がボツボツと…所狭しと複雑な模様を形どるようにして埋め込まれ同化している。大変に気持ち悪い。
オーガのトレードマークである角もそのシルエットは通常と違い大変にいびつ。
多分だが同族の、力有る者から寄りすぐってもぎ取ったのであろう何本かの角。それを自身の角が延長するように巻き付けている。
…これも、同化してしまっている。括り付けた紐状の何かと諸共にだ。
見た目としては瘤だらけでぐねり伸びた、一本の長過ぎる角になってしまっている。
そのようにして原形がもはや解らなくなるほど改造された結果なのか…骨格までもが他のオーガとはまるで違うものに変異していた。流石の変異種。
猫背に見えるほど背中の筋肉が発達し、デコボコとして見えるはずだった背筋群は、陰影がなくなるほどボール状に、ひとまとまりに膨張している。
腕の筋肉も膨張仕切っていてやたらと太く、そして長い。拳はそんな腕が細く見えるほどやたらでかい。逆に脚は短い。その脚も太くでかく発達しているので更にと短く見えてしまう。
全体のシルエット的にはボサボサとして捻れた白い長髪以外に体毛を持たず、ボコボコと太く長過ぎる一本の角を頭に生やす猫背にして無毛のゴリラ。ゴテゴテとした表現だが、正にそんな感じだ。
そしてその両手に持つ棍棒は、グリップ以外が馬鹿みたいに太く、その太さに見合わない短さで、小さなトゲトゲでびっちりと埋め尽くされていた。
シ ルエットで言えばその太い部分は地球で言う所の果実の王様、ドリアンに酷似している。臭ってきそうな醜悪さだ。
美と醜。
異質である事のみを共通項として生まれた相克。
夜の森にて遭遇し、相対す。
そんな中、
【…いやいや雰囲気出してるとこ悪いんだけど何なのジン?気に入っちゃッたのもしかして?その、『とりあえずぶん殴る!』ってやつっ!】
空気を読まずにツッコミを入れられるジンなのであった。
『呟きの彼』も流石に呆れ果てたのだろう。そして思ったのだ。『いい加減にしろ』と。
ああ、ちなみに言っておくがジンは多重人格という訳でもない。この『呟きの彼』はジンとは全く別の人格なのである。ジンの中に住みジンとは別に自律して思考する存在だ。
どうやらジンが抱えるミステリアスの向こう側も裏側も網羅してその全てを理解した上で話しているような口振り。
つまり彼はこの、無言なるジンと直接にコミュニケーションが取れる唯一の存在であるのかも知れない。
【あ…。】
『呟きの彼』は何かを思い直したようだ。
【…なるほどね…新しい力を試してたんだ…。…にしたってさ。『変異種のオーガ』をぶん殴るとか…】
美しく動じないままに結局の無為無策、粗野丸出し…そんな風に暴れているようにしか見えなかったジンであったが…どうやら『呟きの彼』は何かを察したようだった。
つまり、一応、ジンにはジンなりの考えがあったらしい事に気付いたらしい。…まあ、それでも呆れ返るしかないようであるのだが。
▼▲▼▲▼ステータス▼▲▼▲▼
レベル
名前 名無し
種族 カンニバルオーガ
(鬼属 オーガ族 変異種)
年齢 9歳
職種 鬼無双 鬼職人
状態 呪い『狂え。』
HP
MP
魔力
生命力
称号
【鬼殺し】【同族殺し】【同族喰らい】【残虐王】
レアスキル
【壊腕LV2】【恐縛LV3】【思い憑きLV5】
種族特性
【鬼力】【鬼肌】【鬼覚醒】
コモンスキル
【剛棍鎚術LV11】【投擲術LV3】
【呪術LV1】
【怪力LV11】【脚力LV4】
【体幹LV4】【剛健LV9】【甲肌LV11】
【骨格LV5】【身操力LV4】
【大跳躍LV7】【獣脚歩LV6】
【気配感知LV6】【魔力察知LV1】
【危険感知LV6】【聴覚察知LV3】
【味覚察知LV4】
【解体LV5】【裁縫LV2】
【二刀流LV4】【能力成長LV1】
【斬撃耐性LV2】【打撃極耐性LV11】
【衝撃耐性LV3】【刺突耐性LV2】
【貫通耐性LV3】
【土耐性LV4】【闇耐性LV5】
【毒耐性LV2】【麻痺抗耐性LV6】
【減衰耐性LV4】【呪い耐性LV1】
【即死耐性LV2】【病魔抗耐性LV6】
【苦痛抗耐性LV8】【恐怖極耐性LV12】
装備
オーガスキンスーツ
鬼歯棍
鬼魂角
戦闘力
生産力
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本日もう一話投稿します。
次話投稿は12時予定です!