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第19話 ネクストステージ。

地道にですがブクマ増えてて嬉しいです。応援して下さってる方、有難うございます(*^^*)



 巡回中の騎士団員二人。

 何やら話しながら歩いている。その内容は…


「……おい、また冒険者だぞ。次はお前がいけよ。」


「えー。ヤだな。なんか緊張するんだよ…だからまたお前が言えよ」


「いやそんなの俺も怖いに決まってるし。……しょうがないな…二人同時にいくぞ。」


「そうだな……っていうか今日何度目だよこのやり取りすんのっ。」


「うるさいな知るかよ団長命令なんだからこれも仕事のうちだろ?…ほら諦めろ。来たぞ?言うぞっ?」




「「ど、どうもこんにちわっ!」」


「っどぅわっ!!?」


「っなーんっ!!?」




 急に挨拶された側、

 それは冒険者のノガード兄弟であった。

 相変わらずの兄弟仲の良さを発揮。

 二人して素っ頓狂な声を上げる。

 とてもびっくりした様子。


 普段のノガード兄弟であるならこんなマネは許さない。『るお〜いコラ!』である。『ビックリすんじゃねえかてめえらオラっ!』である。『ああん!?やんのか?アーン?』である。


 のだが


「「ど」」怒?


「「どどど」」怒怒怒?



「「どうも!こんにちわ…!」」あら。


 普段の彼らからは想像もつかない律儀さ。

 なのに如何ともし難い生来の盗賊ヅラ。哀しい。

 それを何とか爽やか笑顔に変えようと四苦八苦。


 まあ 確かに感心なことではある。

 だが、その努力は全く実を結んでいない。

 悪人面は悪人面のままだった。

 その証拠に笑顔を返す騎士団員達の顔面筋は兄弟のそれにつられたか如く限界近くまで引き攣りまくっている。


 両者共に引き攣ったままの静止。

 なのでとても気まずい。

 なのでお互いその場から足早に立ち去ろうとする。


 のであったが……そう、その日はいつもと違っていた。

 『いつもと同じではいけない。』

 誰かの為に、そう思ったのかもしれない。


 ノガード兄は立ち止まり、振り向かないまま


「よう。」


 騎士団員達の後ろ姿に声をかけ直したのだった。


「……な、なんだ?」


 声をかけられた騎士団員達も一応返事をしたが振り向くことをしない。というか出来ない。それは


『これはもしや…因縁を吹っ掛けられるのか…?』


 という半端な覚悟を決めての『振り向かない』だったから。…


 なのだが。


「その髪……えれーカッコいいじゃねえか」


 肩透かし。


「「はあ?」」


 思わず振り向いてしまった騎士団員達。


「ああやっぱそうだよな?アレ格好いいよな?俺もそう思ってたんだけどよ。やっぱ兄貴もそう思うか。」


 大絶賛。

 

「おう。何だアレエゲツねぇくらいにカッコいいと思っちまうんだが何なんだアレ。」


 超 絶賛。


 髪型のみに限定されているが、ここまで褒め称えられると悪い気はしない騎士団員達なのである。だから気前よく教えてやることにしたのだった。


「この髪型は『団長カット』と言って今騎士団で大流行なんだよ。」


「切ってもらう床屋も今や御用達だよなぁ。」


「ああ、今じゃ予約も中々取れなくなってるけどな。」


「それは困りもんだけど…まぁ、あそこは一時寂れもして店を閉じる話もあったから…ともかく今も営業してくれて良かったよ。」


 奇跡。話の糸口は結ばれた。


「おうそいつぁいい話を聞いたぜ。ついでにその床屋がどこにあるのかも教えて欲しいんだが。」


「ふむふむ……あ〜なるほど『オーク三昧』の向かいにあるあの床屋かあ〜『オーク三昧』にはよく行ってるけどよ。知らなかったぜそんな名店が向かいにあったなんて」


「んあ?たまに見ねえと思ったら『オーク三昧』なんて行ってんのか弟よ。よくもまああんなゲテモノ屋…」


「いや兄貴は知らねえから。あそこはよ…」


 ──騎士と冒険者。


 これは他領とは事情が異なるこのエコノスでは歴史的意味を持つ『折角の会話成立』であったのだが…軌道に乗る前に早くも脱線……


 するかと思えば。


「いや、『オーク三昧』はなかなか馬鹿にしたもんじゃない。店先に漂う匂いで敬遠する人も多いみたいだけどあそこの『王骨羅面』ていうスープ入りパスタは病みつきになる。」


「はあ?何言ってんだよ『羅面』ならオーガ屋の『汗塩羅面』が一番に決まってる!」


 妙な感じで会話のキャッチボールは続投された。

 騎士団 ナイスプレー。


「おお?あんた!中々の食通とお見受けしたんだが。『汗塩羅面』をまさか知ってるとはなぁ!」


「なんだよ兄貴それ旨いのかよズリいな。俺まだ教えてもらってねんだけどよー。」 



「うるせぇ弟うるせぇっ!お前だって『オー骨羅面』の情報独り占めしてたんじゃねえかっ!」


「何だよ変なトコで根に持ってんだけどよウチの兄貴は。それを言うなら…」


 またも座礁しかかった…のだが。


「まぁまぁ…折角だから旨いもん屋の情報交換をしようじゃないか。色街にあるから誰でも知ってる訳じゃないけども『食道一直線』て店があってだな……」


「ええ!いきなり最強カードを切る馬鹿がいるかっ!あそこはこの都市最強の旨いもん屋だぞっ!?」


「あっ。そうか。出落ちになるか。」


「だろ?アソコ行った後だと他の旨いもん屋が可哀相だろうが。何処もそれぞれいいトコあんのに。」


 何だかよく分からないが、騎士団員達の意外なトーク回しの腕が発揮されていた。早速喰い付くノガード兄のシュトーゼン。


「なにい!そんな旨いもん屋があるのかっ!?知らなかったんだかっ!」


「まあ兄貴はこう見えて身持ち固えから色街行かねえもんな。」


 え。それは意外。


「…なんて言う俺も行った事あっても食ったことないんだけどよ。アソコの店主は魔物と見間違うくらい見た目怖くてな…。のれんくぐった瞬間引き返したわ。」


「ああ確かに。俺達は巡回の際に話しかけなきゃならない場面もあるから知れたんだけどな。…あの人話してみたら結構面白いぞ?」


「それ聞いてももし怖いってゆーなら……今度一緒に行くかい?俺達が一緒なら裏メニュー頼めるし。」


 おおお?騎士団マジナイス。


「「ヒャッハーーーーーーー!マジでかっ!……ってイヤイヤイヤ……」」

 

 えーいいじゃないか。行けよノガード兄弟。


「……おいおい良いのかよ。お前ら騎士団様なのに。こっちゃぁ…あんたらは俺ら冒険者とつるんじゃマズイのかと思ってずっと遠慮してたりしたんだが。」


「ああ〜まあそうだよな。俺もそういう雰囲気が凄かったように見えたんだけどよ。」


 冒険者は冒険者で気を使ってくれていたらしいことが、ここで判明するのであった。意外に思う騎士団員達。そして申し訳なく思うと同時に、嬉しくも思った。なので自分達も白状する。


「ああ確かに…そんな頃もありました。」


「確かにな。肩肘張って変に敬遠してたとこ、あったよなぁ…でもな。今の騎士団は違うぜ。」


「ああなんせウチの団長はあの『ラッキーアイ』だからな。」


「さっき言ってた床屋も『食道一直線』も団長が教えてくれたんだよな。どちらも今や繁盛店になって……あれって『ラッキーアイ』効果ってやつなのかな…。」


「「ほえ〜。あの『団長殿』すげーんだな。」」


「「まあなっ!」」


 ノガード兄弟は、上司を褒められて心底嬉しそうにする騎士団員二人を、微笑ましく眺めやり、そのようにして団員から高い尊敬を集める『団長殿』を改めて頼もしく思うのであった。


  ……それは、仲間として。


 ──それから数分、立ち話を楽しんだあと、冒険者二人と騎士団員二人は気安い感じで手を振り合って別れた。今迄、何故会話の一つもなかったのか。互いにそれを不思議に思いながら。


 ノガード兄弟は気分良く歩き出した。

 すると背後ではまた…


「「どうもこんにちわ!!」」


 気持ちの良い挨拶が聞こえてきた。


 のに……


「んっだあー!?びっくりした何だお前ら!いきなり大声で気安いなゴラア!アあん!?」


 このように急な変化には

ついていけない者だっている。可哀相に。肩を落とし歩き去る騎士団員達二人。それを見たノガード弟、カルチャーレは……


「おう…兄貴。俺ちぃとアイツ締めてくんわ…。」


 怒気丸出しで吐き捨てる。即断即決なのだ。こうなると有言実行なのだ。カルチャーレはもう動いていた。それは冒険者にとって大事な資質ではあるのだが、


「いやそんなんは姐御にチクれば一発だと俺は思うんだが。それに事を荒立てちまうと『団長殿』が、多分困るしなぁ…。そうなると…俺ぁ申し訳ねえ。」


 さすがは兄である。大人だ。弟も止まった。


「ん〜……あー。まあな。それな。あの『団長殿』はよ。俺も気に入ってんだけどよ。だって、ヘタレなようでそこら上級の冒険者(やつら)なんかより、よっぽど骨がある。」

 

 騎士団と冒険者達。互いにまだ相変わらずの距離はある。だが、確かにゆっくりとではあったが、確実に歩み寄りつつあった。


 互いに『このままではいけない』そう思い始めていた。確かに両陣営共に、末端までは行き届いてはいなかったが、明らかに変化は起こり始めていたのだった。



 そう。ジャスティンは動いていたのだ。

  



 暑さで体調崩さないよう、


 気を付けて下さい(´・ω・`)

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