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異世界でまた君と  作者: 長星浪漫
第三章
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合わさる想い

 エミューリアがオーネストに“リンク”を繋げた瞬間、オーネストの中にたくさんの想いが“魔力”となって流れ込んできた。そしてその力がオーネストの中で合わさり新たな力を与えた。自然界に存在する火・水・風・土・光・闇の六属性が一度にすべて備わり、さらにそれらすべてに属さない“無”属性も備わっていた。

 流れ込んでくる魔力や想いとともにたくさんの“声”も心に響く。

『頑張れ!』

『ぬかるなよ』

『姫様を任せます』

 第3騎士団やこれまで関わってきたたくさんの人たちの声がどんどん集まってくる。そしてそれがオーネストに新しい力を与え形創っていった。白銀に輝く鎧がオーネストを包み込む。

(力が溢れてくる)

 枯渇していた魔力もどんどん回復してきている。今まで感じたことのない力が満ちてきている。

「うがあぁぁぁ!」

 怒号とともにヴァインリキウスが止めとばかりに攻撃してくる。オーネストは落ち着いた気持ちでその攻撃に対応する。

「ぎゃあぁぁぁ!」

 さっきまで効かなかった攻撃が効いている。

「立石…いや、ヴァインリキウス!今日この場所でお前との因縁を絶つ!」




 “魔装”で剣を生成し巨兵に切りかかる。巨兵は俊敏な動きでそれを回避するがオーネストはすぐに方向を切り替え驚異的な機動力をもって巨兵に切りつけた。ヴァインリキウスの進化した“テイマー”の能力で体の一部を硬質に進化させ受け止めるがそれでも傷がついた。

「いでぇ!?くっそぉ!」

 巨兵の足を持ち上げ地面に叩きおろした。地響きがおきたが空中のオーネストにはもちろん影響はなく、エミューリアにも被害はなかった。

「無駄なあがきはやめろ!」

「はあ!?無駄じゃねぇよお!」

 地面から突然木の根のような触手が何本も現れオーネストに絡み付こうと迫る。気づいたオーネストは上昇して逃げるがそこを真上からヴァインリキウスに狙われた。

「落ちろぉ!!」

 オーネストは攻撃を防いだが勢いに逆らえず触手の中に落ちていってしまった。オーネストを覆い隠す触手、だが光が煌めいた瞬間触手はバラバラに切り飛ばされた。

「ぐうぅ…くそぉ!」

 ヴァインリキウスは魔力を変質させ最大限引き出した。巨兵の体はさらに変質しヴァインリキウスの心をそのまま現したかのようなおぞましい姿に変貌した。

「うがああぁぁああぁあ!!」

 理性が残っているかわからないくらいの雄叫びをあげて滅茶苦茶に攻撃してきた。だがオーネストはそれらをすべて回避し巨兵の胴体に近づき剣を振りかぶった。

「があっ!」

 それよりも早くヴァインリキウスはオーネストを左右から巨兵の両手で潰した。か、オーネストは両手を広げ受け止めた。

「ぐ、うぅ」

 力を込めてもそれ以上巨兵の腕が動かない。それどころか力でも今のオーネストの方が勝っている。オーネストは下降し巨兵の手の中から抜け出した。ヴァインリキウスも下に行くとは予想しておらず手を合わせた状態でバランスを崩してしまう。そのタイミングを狙ってオーネストは上昇し巨兵の手を掴み上げた。

「うおっ!?」

 勢いのまま巨兵の体が少し浮く。オーネストは“魔装”で風と水属性のチェーンを作り出し巨兵の右足に絡めて一気に引いた。体が少し宙に浮いてバランスが崩れた状態でさらに足を引かれたので巨兵はしりもちをついてしまう。そこにさらに追い討ちをかけるようにオーネストは“魔装”で巨大ハンマーを創り倒れる巨兵の頭に叩き下ろした。

「どりゃあ!」

「ぐむっぅ!」

 ダメージを受けながらもヴァインリキウスは止まらない。巨兵の腕を伸ばし今度はしっかりとオーネストの体を掴んだ。

「ふ、ふはははは!づが、まえたぞー!」

「こんなもの…」

「させねぇ!」

 “テイマー”の力で急速進化させ魔法に対する絶対体制を身につける。

「これでどんな魔法攻撃も無効だあぁ!」

 無属性に対しても対策されており魔法攻撃は通用しなくなったが

「攻撃だけが魔法じゃない」

 オーネストが手の中から消えた。

「な!?」

「後ろだ」

「な、ぐあ!」

 一瞬で後ろに回り込まれきつい一撃を受けたヴァインリキウス。

「なんで、後ろに??」

「簡単に言うと“瞬間移動”だよ」

「瞬間、移動だと…?」

 ヴァインリキウスはオーネストとの力の差を理解してしまった。あらゆる攻撃、防御が強い、なによりオーネスト自身の成長スピードがとても早い。もはや自分の固有魔法による進化も限界にきていることもわかっていた。だがここまで力の差を見せられてもヴァインリキウスの心は完全には折れなかった。

(もういい、さつきちゃんが俺以外の誰かとくっつきさえしなければ…)

 巨兵が動き出す。オーネストを狙って腕が伸びる。オーネストはそれを難なく切り払うが巨兵は攻撃をやめない。明らかに無駄な攻撃を続けている。

(なんだ?不自然なくらい攻撃が雑になったぞ?)

 攻撃自体は大したことなかったが、妙に単調すぎた。オーネストは戦いながら相手の魔力を感じ取った。

「これは、まさか!」

 ヴァインリキウスの魔力が巨兵の心臓部分に集まってきていた。それご心臓を膨張させていた。オーネストは本体のいる頭部を破壊しようとするがヴァインリキウスは対策をとっていた。オーネストに向けた攻撃によってバラバラにされた破片を再び取り込み変化させ頭部の周りに広げる。オーネストの攻撃で破壊できるとはいえ肝心の部分には間に合わない。

「なにをする気だヴァインリキウス!」

「手に入らないのなら全部壊しちゃえばいいんだよ!この感じじゃ殺して甦らせるのも難しいしなぁ!だったらいっそ全部壊しちまうぜ、巨兵を爆発させてなぁ!」

「そんなことをしたらこの国までなくなってしまうぞ!」

「それがなんだ?興味ねぇ奴らが何人死のうとどうでもいいんだよ!!」

 そうこうしている間に巨兵の心臓は臨界に達しようとしていた。

「くそ!どうすれば?どうすれば止められる!」

 焦るオーネスト。そんなオーネストの元に声が届いた。

(まことさん!)

「さつき?」

 エミューリアだった。“リンク”で繋がっている以上オーネストと会話は可能だ。エミューリアは急いで続ける。

(私と一緒に魔法の槍を創って!)

「槍?しかし…」

 武器を創って攻撃することは考えた。しかし相手は恐らく心臓に一撃でも加えれば大爆発を起こす。そんな相手に槍とは…?戸惑うオーネストにエミューリアは「大丈夫」と告げた。

(無属性の槍を創るの、無属性はなににも属さない魔法、『ゼロの魔法』とも呼ばれていて、うまくいけば爆発のエネルギーを吸いとれるかもしれない)

「本当?でも…」

 無属性魔法については存在は知っていたがほとんど記録に残っていないほど希少な魔法だ。今エミューリアが言ったような事が本当に実現できるのか確証はない。

「だけど、今はその可能性にかけるしかない!」

 他に有効な手段はない、それに誰よりも愛する人の提案だ。オーネストは槍をイメージし“魔装”を発動する。

「一緒に断ち切ろう!さつき…いや、エミューリア!!」

(一緒に明日を切り開こう!オーネスト!!)

 “リンク”を通じて二人の魔力が重なり一本の巨大な槍になる。その槍を巨兵の心臓めがけて突き立てる。ヴァインリキウスは行動が理解できず攻撃を通した。槍は巨兵の心臓を刺し貫いた。ヴァインリキウスは勝利を確信し大笑いした。

「わはははははは!やけくそになったか?まぁこれで終わりだぁ!!」

 心臓の光がさらに大きくなる。

「(はあああぁぁぁ!!)」

 オーネストとエミューリアが魔力を高める。槍の無属性が発動し爆発のエネルギーを吸収した。

「なんだとぉ!?」

 驚き動揺したヴァインリキウスの動きが止まる。オーネストは槍を引き抜き距離を取った。

「これで終わりだ」

 槍を掲げるとエミューリアの“リンク”によって繋がっているみんなの魔力が集まり形が変化し巨大に輝く剣になった。自分に向けられる圧倒的な力を目の前にしてヴァインリキウスは焦りの表情を見せた。

「ま、まってくれ!もうやめる!さつきちゃ…エミューリアは諦めるから!」

「…」

 オーネストはヴァインリキウスを注視しながら、剣の生成をやめようとはしなかった。その間ずっとヴァインリキウスはわめきながら裏で残った魔力を一点に集めていた。

(ククク、あの剣は凄まじい魔力だがあのクソヤロー本体は完全に無防備じゃねぇか。うちおとしてやる!)

 魔力が体内で大きな鉄球になっていく。そして剣の生成が間もなく終わる直前にヴァインリキウスの方が先に完成した。オーネストには下手に出ながら狙いを定める。そして狙いが定まった瞬間間を置かずに巨兵の腹を変形させ弾を発射した。オーネストの数倍大きい鉄の弾がすごい早さでオーネストに迫る。

「ひゃははぁ!今度こそ死ねえ!」

「本当にしつこいな」

 光が煌めいた。次の瞬間鉄球はバラバラに切り刻まれた。

「………っ!」

 ヴァインリキウスの顔から色がなくなる。オーネストは剣を振りかぶった。今度こそヴァインリキウスは追い詰められた。

「くそ!くそ!なんでこうなるんだ!?お前なんかに負けるんだよ!!認めねぇ認めねぇ!!」

 喚くヴァインリキウスを憐れむ目で見るオーネスト。その表情にヴァインリキウスは怒りと恐怖と悔しさが混ざり感情がごちゃごちゃになる。

「なんでなんだよぉぉ!なんで勝てないんだよぉぉぉ!!」

 泣きじゃくり子供のように喚くヴァインリキウスにオーネストは言い放つ。

「他者の事を考えず、自分の事だけを考えているようなお前にはわからないだろうな」

「ひっ…」

「互いを想い、認め合う事で生まれ繋がる絆の力を!そして!」

 オーネストが巨兵に向かって剣を振り下ろした。

「本当の“想い”から生まれる“愛情(ちから)”を!!」

 オーネストの剣が巨兵の胴体を真っ二つに切り裂いた。オーネストは巨兵に背中を向け剣を消した。背後では巨兵の体が膨張していく。

「こ、んな…ことって…いや、だ…さつ…き」

 巨兵の体が炸裂する。体がバラバラに四散した。

「ぎゃああああ!!」

 断末魔の叫びとともに巨兵は完全に消失した。その様をを見届けたオーネストはエミューリアの所へ降り立った。

「オーネスト」

「終わったよ」

 “リンク”が切れ、“魔装”も解けたオーネストがエミューリアに笑いかける。

「本当に…本当の本当に終わったんだね」

 瞳に涙を浮かべながらオーネストに抱きつくエミューリア。オーネストはその小さな体をしっかりと抱きしめた。

「うん、ずっと君を苦しめていた悪夢はいないよ」

「うん…うん!」

 オーネストとエミューリアはお互いをしっかりと抱き締め、過去からつきまとってた因縁を断ち切れたことを喜びあった。

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