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異世界でまた君と  作者: 長星浪漫
第三章
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窮地に届く声

 オーネストとヴァインリキウスの戦いは激しさをさらに増していた。徐々にオーネストが押され始めていた。巨兵の攻撃はヴァインリキウスの気持ちに呼応するようにどんどん強くなっていく、オーネストも対応しようと固有魔法を応用し2種類の属性を組み合わせながら戦う。巨兵の装甲を剥がし本体であるヴァインリキウスを攻撃しようとするが破壊しても破壊してもすぐに再生してしまう。

「このままじゃ埒があかない、ぐぅ!」

 攻撃が脇腹をとらえた。衝撃は変化前に比べかなり強力になっていて“魔装”で防御したが想像以上の衝撃に吹き飛ばされる。風の“魔装”に切り替え空中で静止したがそこを狙われた。

「叩き落としてやる!」

「しまった!」

 真上からの攻撃に慌てて防御しようとしたが攻撃は直撃してしまう。

「ぎっ…」

 風の“魔装”は機動力は優れているものの防御力は低い。頭をかばった腕の骨にひびが入ったのを感じた。地面に落ちた衝撃はなんとかやわらげられたが巨兵は休む間もなく攻撃してくる。オーネストは痛む体を気合いで動かして飛び逃げる。だがその動きは先程よりも遅い。それに気づいたヴァインリキウスは愉快そうに笑う。

「もう限界まさが近いみたいだなぁ!」

「くっ、うっ!」

 回避しながら後退するが動きが鈍く巨兵の攻撃で抉れた地面の破片があたる。

「ぜぇ、はぁ…」

 オーネストは息も絶え絶えながら闘志はまだ消えてなかった。

「…“奥の手”を出すしかないか…」

 オーネストは気力を振り絞り魔素を集め魔力を込めた。

「何をする気か知らんが叩き潰してやる!」

 巨兵が組んだ腕を振り下ろしてくる。オーネストはほのぼのと風の魔素で盾を作った。

「いい加減見飽きたんだよ!魔法を2つ重ねたところで意味ないってのはわかってんだろぉ!?散れえぇぇ!!」

 さらに力を込めてオーネストを攻撃する。攻撃があたる寸前、オーネストは3()()()()()()()()()()()

「なに!?」

 展開されたのは“水の魔力”。炎の魔力で攻撃を可能な限り相殺し風の魔力でいなし、そして水の魔力で受け止めた。攻撃を止められ怯むヴァインリキウス。オーネストは今が好機と走りよる。

「“闇”!“炎”!“地”!」

 攻撃に特化した魔素を螺旋状にまとめ巨兵の足元に潜り込みドリルのように回転させた。

「つらぬけぇ!」

 魔力の槍が巨兵の装甲にあたりそして削っていく。

「無駄ってのがまだわかんねぇのか!」

 もう片方の足で蹴ろうとした時、オーネストの槍が装甲を貫いた。

「な!?」

「いっけえぇぇ!」

 そしてそのまま装甲の奥の肉を刺し貫いた。

「ぎゃああぁぁ!」

 ヴァインリキウスを襲う激痛、蹴りかけた足の勢いも止まらずバランスを崩し尻餅をついた。ヴァインリキウスは顔をしかめた。

「いてぇ?くそっ、一体化してると痛みまで共有するのか…」

「今がチャンスだ」

「オーネストォォ!」

「“光”!“炎”!“風”!」

 早さを重視した魔素構成を行い相手のガードよりも早く剣を一閃する。少しずれた一閃は巨兵の肩にあたり装甲を切り砕く。

「しぶといんだよぉ!」

 ヴァインリキウスは機敏な動きで体勢を立て直しオーネストを捕まえようとするがその隙間をくぐり抜け剣を巨兵の砕けた装甲の上から突き立てる。

「ぐわああぁぁ!」

 痛みに苦しみ叫ぶヴァインリキウス。

(このままいけば勝てる…!)

 オーネストは腕を上げた。

「“地”!“闇”!“水”!」

 水と地の魔素で大きなハンマーを形作り闇の魔力で威力を高める。

「さっきのお返しだ!」

「くそっ!」

 急いで体を動かしたがハンマーは巨兵の足を叩き砕いた。

「ぎゃああぁぁ!!」

 巨兵と痛覚を共有しているヴァインリキウスに激痛が走る。

「次こそとどめ…」

 再び魔力をこめようとしたオーネストに異常が生じた。

「うぐぅっ!?」

 魔力を込めた右腕に痛みが走ったかと思うと意識が一瞬遠のいた。

「魔素の三種類使用はやっぱりきついな…」

 普段は“魔装”を使う時に魔素を最高で2種類しか使わない。“魔装”による外部からの魔素と体内の魔力機関による魔力生成で2種類が限界なのだが、循環機関も使う事で3種類目の魔力も混ぜることができる。だがそれでは魔素の毒素の分解能力が低下する上に体の負担が大きくなる。長時間続けると最悪体内から壊れてしまう。

「それでも!」

 オーネストは歯をくいしばって前に進む。

「あの人との未来をつかむんだあ!」

 ありったけの魔力を注ぎます大剣を作る。そしてそれをヴァインリキウスに叩きつけた。

「おおおおおお!」

「はあああああ!」

 2つの力がぶつかり合い発生した衝撃波が辺りを凪払う。拮抗する力と力、少しずつオーネストが押し始める。

「くそぉ、くそぉ!」

 巨兵の装甲が剥がれ肉が裂けていく。

「あああぁあぁあ!」

 痛みに叫びながらもあきらめないヴァインリキウス。だがやがてオーネストが押しきった。

「今度こそォォォ!」

 剣が巨兵の体を真っ二つに切り裂いた。同時にオーネストの魔力も低下し三属性を維持できなくなった。

「だけどこれでやっと…」

 今度こそ止めをさせたと安心するオーネスト。地面に落ちる寸前に魔法で衝撃を和らげようとしたが、地面につく前に何かに持ち上げられた。

「な、まだ…」

 オーネストを掴んだのは巨兵の腕だった。先程までヴァインリキウスが居た場所を見ると完全に中に入り同化してしまっていた。先程まで表情がなかった巨兵の表情が動く。

『ここまでやられるとはな、敵ながら天晴れだな』

「かっ…」

 強く絞められ呼吸がままならなくなるオーネスト。ヴァインリキウスの顔は歪みに歪んで本人の心が現れていた。

『もう油断も過信もしねぇ、死ね、死ね、死ね…』

 同じ言葉を連呼さそ締め付けを強めていく。

「あ、がっ…」

 目の前が白んでいく。魔力もほとんどなく対した抵抗もできない。意識がどんどん薄れていき、周囲の音も聞こえなくなっていく中でエミューリアの声だけが聞こえていた。

(エミューリア、結局、この世界でも守れないのか?)

 生と死のはざまで自分の不甲斐なさを嘆くオーネスト。しかし、

(まことさん!!)

「!!」

 頭の中に直接響くようにエミューリアの声が聞こえてきた。意識が戻り目を開けると目の前にエミューリアがいた。

(いや、違う)

 ヴァインリキウスは何も反応していないところを見るとヴァインリキウスには見えていないのだろう。そのエミューリアはオーネストの“心”に直接語りかけてきていた。

(まさかエミューリアの固有魔法“リンク”?)

(そうよ!)

 エミューリアが頷く。そしてオーネストの手をとった。

(まことさん、私も力を貸すわ)

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