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異世界でまた君と  作者: 長星浪漫
第三章
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交差する思惑  

 「なぜ侵攻が進まない!?」

 圧倒的な戦力差でありながら今だアルバソル王国を落とせない現状にさすかのヴァインリキウスも苛立ち始めていた。

「一体どうなってるんだ!?」

 怒りを露にするヴァインリキウスに報告に来た兵士は震えながら現状を報告した。

「は、はい、騎士国家マルスの加勢に加えアルバソル内に住むエルフや何故か魔物までが加勢して…」

「エルフに魔物……!あいつらか」

 ヴァインリキウスの脳裏にアルバソルに潜入したときにエミューリアを見守った(ストーキング)時に見たエミューリアと仲良くしていたやつらだった。その事に気づいたヴァインリキウスの怒りは頂点に達した。

「人外とケダモノ風情がぁ…!」

 ヴァインリキウスは怒りで真っ赤になっていた。それを見て報告に来た部下は真っ青になって震えた。そばに仕えるニゲルだけが平然としていた。

「私が出ましょうか?」

「いや…」

 ニゲルの提案をヴァインリキウスが制する。

「俺が行く」

 立ち上がり歩を進める。ニゲルはそれに続く。報告に来た部下は慌てて道を開けた。部屋を出て向かった先は先ほど古代兵器の量産型を起動させた地下への入り口。その手前でニゲルを制止する。

「ここからは俺一人で行く」

「私は必要ありませんか?」

 ニゲルが感情がこもっていない声で問うた。ヴァインリキウスはそれに少し笑った。

「こんな時でも感情が出ないんだなお前は、俺一人で行く。俺がいない間城の事を任せる」

「…了解しました」

 少し間をあけ答えたニゲル。それを見届けヴァインリキウスは地下に降りていった。その姿をニゲルはやはり無感情に見送るのだった。

 地下に降り、地下室のさらに奥へと向かった。最新部にはさらに縦に穴が掘ってありそこに例の古代兵器の巨人が立っていた。巨人の足元に立ち上ち見上げるヴァインリキウス。

「今度こそ、俺が守り抜いてあげるからね…さつきちゃん♥️」

 ヴァインリキウスはにやけながら固有魔法“テイマー”を発動させた。すると巨人の目に光が灯り動き出した。しゃがみこみヴァインリキウスの方へ手を差し出した。ヴァインリキウスは差し出された手に乗ると巨人は手を自身の肩のあたりまで運んだ。ヴァインリキウスは肩に飛び乗ると巨人を操り『上昇』と書かれたボタンを押した。すると地面が上に向かって動き始めた。そして止まると同時に目の前の扉が開き外が見える。ヴァインリキウスはさらに魔力を込め巨人を動かす。本来であればヴァインリキウスが直接出撃しなくてもいいのだが今はゾンビ兵に加え量産型古代兵器も動かしているので近距離から魔法を使わなくてはならなかった。

「ついでに試したいこともあったからな、この戦いで試してやろう」

 不適な笑みを浮かべながらヴァインリキウスはアルバソルへと向かった。




 ヴァインリキウスが帝国を出発する1時間前、先に起動した量産型の古代兵器がアルバソルの国内へと到達した。王都に着くまでにいくつかの街や村を破壊していったが事前に騎士団によって住民は避難していたので人的被害はなかった。

そして王都に到達した量産型巨人たちはゾンビ兵や魔物たちをなぎ倒しながら襲いかかってきた。

「まだこんな奴がいたのか!?」

 長引く戦闘に疲労が見え始めたアルバソルの兵士たちに対してマルスの国王アーサーは目を輝かせていた。

「こんな奴今まで戦ったことないぞ!」

 嬉々として巨人に向かっていくアーサーに他の兵士たちは開いた口が塞がらない。アーサーに仕えていた一人の騎士がフォローをいれる。

「一応言っておきますが我が王は決して“戦闘狂”というわけではありませんからね?」

 言い終わった瞬間何かぎ崩れ落ちる音がした。見ると巨人が一匹崩れ落ちていた。倒れた巨人の首を切り離すアーサーの顔は本当に楽しそうだった。その表情に次の言葉が出てこないアーサーの臣下、しかしその強さに背中を押され騎士たちは勇んで巨人に向かっていった。




 その状況を耳にしたドラゴは小さく笑った。

「いやはや、エミューリアの人徳は凄まじいな」

 ドラゴが作戦を立案している場所はアルプスの二人だけで指示は随時魔道具で伝令兵に伝えていた。

「しかしどうなさるのですかドラゴ様。マルスにアルバソル国内の情報を流し加勢に来ていただけたのは大きいですし、エミューリア様が懇意になさっていたウィズダムのエルフやアークゴブリンの集団、その他にもエミューリア様と交流のあった他種族の参戦もかなりのプラスになってはいますが、このままではまだ苦しいですよ」

「ふむ、そもそもヴァインリキウスがこのような手段をとってくること事態が想定はしていたものの低確率と思っていたからな」

「第1騎士団や貴族に関してはいかがですか?居場所はわかっているのでしょう?」

「あいつらはもともと戦力に加えていない。いても邪魔になるだけだからな。力があっても所詮はお飾り剣術だ、正直地下に潜ってくれて助かってるよ」

「…それだけですか?」

 意味深な質問をしてきたアルプスにジロリと目線を向けため息をついた。

「お前には俺がどう見えてるんだ?……まあ、あの貴族共が狭くて暗い地下に長時間居続けられるわけもないからな、色々起こって()()()()()()()()()とは思ってるがな」

 話している間にも目まぐるしく変わっていく戦況がドラゴに伝えられる。その中で一つ明らかにアルバソル国内ではない伝令があった。アルプスはそれを他のものよりも優先してドラゴに渡す。

「『密偵』からです」

「ふむ、帝国でなにかあったかな?………ヴァインリキウスが自ら動き出しただと?」

 伝令文にさっと目を通してため息をついた。

「思ったより早いな」

「いかがなさいますか?」

「動き出したということは今ディニラビアにヴァインリキウスはいないということだ、先に囚われの我が妹を助けようではないか。確かシーラの計らいで第3騎士団が数名ディニラビアに向かっていたな?」

「団長のオーネスト、参謀のエレビア、獣人のヴォルフ、キャシー、忍びの朧月の五名が向かっており、忍びの影無が先だって潜入しているようです」

「なるほどちょうどいいな、“密偵”に一肌脱いでもらおうか」

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