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異世界でまた君と  作者: 長星浪漫
第三章
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大戦の幕開け

 そしてシーらのもとにディニラビア帝国からの宣戦布告が届いた一時間後、三つの騎士団の団長がエルドラドの前に集められていた。エルドラドの側にはソーレ、ドラゴそしてシーラが控えている。オーネストは今すぐにもエミューリアの元に駆けつけたかったがシーラに説得されしぶしぶここにいる。

 話されたのはアルバソルの現状だ。アルバソル王国を囲む国々はすでにディニラビア帝国に侵略されそれらの国のほとんどの兵力げアルバソル王国に向いている。それぞれの国内にはディニラビア帝国に抵抗するレジスタンスか存在し、それらの勢力に手を貸してもらえるように動いているそうだ。だが仮にそれらの勢力にさを吸収できたとしてもディニラビア帝国の力は圧倒的だった。ルーナモンド皇国も力を貸してくれるらしいがそれでも戦力が足りない。故に緻密な作戦と協力が必要だった。

 作戦はドラゴが立案した。第1騎士団は王都の守護、第2騎士団は幅広く展開し対応、第3騎士団はディニラビア帝国の正規軍とあたる第2騎士団と共に行動することになった。




 会議が終わると団長たちはすぐに行動を開始した。その中でもオーネストはかなり焦っているように見えた。王族たちもルーナモンド皇国や連絡がついたレジスタンスとの合流のために動きはじめた。ドラゴはいったん自室に戻る。控えていたアルプスが口を開く。

「想定外の事態ですね」

「想定はしていたさ」

 ドラゴは戦闘を行う場合の正装に着替えながら言った。アルプスは怪訝な顔をした。

「ではなぜ対策をとらなかったのですか?こうなる前になんとかできたでしょう」

「これもこの国の未来のためだ」

「…さすがに理解できないのですが」

「理解は求めていないさ、だが俺は常にこの国の事を一番に考えている…何よりも最優先にな」

 着替えを終え部屋を出る。後ろにアルプスが続く。

「念のため、ディニラビアに潜ませている者に報告はしておきます」

「まかせる」

 そのままドラゴはブリーフィングに向かった。




 作戦が施行され、アルバソル王国の王都を中心にルーナモンド皇国を背にし全方向に広がるように戦力を均等に分散させるように進行した。ルーナモンド皇国からも援軍が加えられた。兵の数は圧倒的に負けていたが、アルバソル・ルーナモンドの兵は一人一人が質が高かったので戦闘は拮抗していた。だが、無理矢理戦わされている帝国に支配された国の兵士よりも明らかにモチベーションが高いので徐々に押しつつあった。

 そんな戦況の中、オーネスト、朧月、エレビア、キャシー、ヴォルフの五人は戦闘を切り抜けながらディニラビアに向かっていた。シーラの計らいで潜入捜査の名目でディニラビアへ向かっていた。なるべく帝国軍を避けて行動していたが、帝国が近づくにつれて交戦回数が増えていった。戦闘が続くにつれて帝国の兵に妙な違和感を感じていた。

「この兵たちおかしい」

 帝国に近づくにつれて増えていく兵たち、それ自体は特におかしくはないのだがその動きが妙だった。始めのうちはこちらの攻撃に対して防御行動をとっていたのだが、今目の前にいる兵士たちはオーネストたちの攻撃に対して防御行動をとらない。それどころか攻撃を受けて負傷しても止まらずに襲ってくる。中には腕がちぎれても足がちぎれても襲ってくる者までいた。

「まるでゾンビみたいだな…」

「…団長…こいつら本当にゾンビかもしれません」

「え?」

「この兵たちからは生命反応がありません」

「それって死んでるってこと!?」

 まさか本当にゾンビだったとは…

「じゃあ死体使い(ネクロマンサー)がそばにいるってこと?」

 この世界にはゲームみたいに死んだ人間を操る死体使い、いわゆる“ネクロマンサー”と呼ばれる存在がいることは知っていた。

「だけど操れる死体はここまで多くはないはずだろ!?」

 死体を操るのは並大抵の魔力では行えない、死体ひとつを動かすのに並みのウィズ一人分の魔力げ必要といわれる。だが目の前にいる死体とおぼしき兵たちは確認できるだけでも50はいる。

「近くに術士がいるのか!?」

 死体操りは魔力を使うだけではなく効果範囲も制限が狭い。故にかなり近くに術士がいなければならない。しかもこの死体の数ならば相当な人数の術士が近くにそばにいなくてはならないはずだった。だが周りには誰もいない。

「どうなってるんだ?」

 対処を考えているうちに敵の数は増えていく。

「にゃあ!?」

「キャシー!」

 キャシーを襲っていた兵士を斬り倒しキャシーを引き寄せる。切られた兵士はそれでも体を起こし向かってくる。

「もう躊躇していられないな。みんな!ボクの側に!」

 オーネストの声にエレビア、ヴォルフ、朧月がオーネストの後ろに移動する。

「『魔装展開(マキナ・チャージ)』!」

 魔素を纏い武装するオーネスト。戦闘中に所々にできた火の元から炎の魔素を多く取り込み赤を基調とした鎧を纏う。

「申し訳ないが、二度と動けないように焼き払わせてもらう」

 次の行動を察したエレビアが魔法で防御壁を展開する。

「“灰炎の円輪(フレア・チャクラム)”」

 オーネストが左右に伸ばした手のひらから直径一メートル程の炎のリングが現れた。

「南無三!」

 二つのリングはオーネストの操作のもと縦横無尽に飛び回りディニラビアの兵士を切り刻み、切り口から上がった炎がその体を焼いていった。燃えながら動こうとする個体に対しては目にはいる度に炎のハンマーを生成し押し潰した。

 数分後には周りにいた大量のゾンビ兵は完全に焼失し辺りには焼けた肉と灰の匂いが漂っていた。

(…覚悟はしていたけど)

 前世では平和が当たり前で“戦争”なんて歴史か別の世界の出来事だと思っていた。だが、この世界ではそうではない。今までも対人戦闘はやったことがあったが、相手は犯罪者ばかりだったし殺すまではしていなかった。だが、目の前の兵士たちはそうではない、アルバソルへの驚異ではあるが戦いたくて戦っているわけではないだろう。そう考えてしまうと割りきれなかった。両手を合わせた。

「おいなにしてんだ!早く行くぞ!」

 ヴォルフに急かされオーネストは先を急いだ。




 その頃アルバソル王国でもゾンビ兵が数を増していた。

「なんなんだこいつらは!?」

 切っても潰しても動ける限り迫ってくる敵兵たちにアルバソル軍は肉体的にも精神的にも疲労がたまってきていた。そんな中さらに追い討ちをかけるような情報がもたらされる。

「帝国方面から魔物の群れが多数接近しています!」

「魔物だと!?」

 一体や二体くらいならまだわかる。だが、魔物が群れをなし、しかもこの苦しいタイミングで

「以前に何度かオーネストに魔物の不可解な行動については聞いていたが、タイミングが悪すぎないか?」

 まるで誰かの指示で動いているかのような感じさえする。

「団長!第三小隊が壊滅しました!」

「このままでは戦局が維持できません!」

 徐々に押されはじめるアルバソル軍、戦線を後退させ始めたその時、背後から斬撃が走り目の前の敵をなぎ倒した。

「!!」

 まさか背後から攻撃がくるとは思っていなかったアルフォードは慌てて剣を構えた。困惑するアルバソル軍の割れた人垣の間に数人の剣士を引き連れた男が一人立っていた。

「何者だ?いや、その顔どこかで見たことがあるような…?」

 その男が右手を挙げると後ろに控えていた剣士が一斉に行動を開始した。

「お、おい!」

 止めようとするアルフォードを前に男は威厳たっぷりに礼をする。

「お初にお目にかかる。俺はーーー」

「行き倒れさん!」

 突然横から幼い少女の声が聞こえてきた。声の方を見ると急に動きを止め、しかも知らない剣士が援護に来たのでその詳細を確認しようと残っている第3騎士団の数人が来ていた。その中で一番幼いリリィ・レーベルがその男を見て驚きに目を見開いていた。

「おぉ嬢ちゃん。久しぶりだな」

 その男はリリィに軽く返事を返すと改めてアルフォードに向き直った。

「俺は騎士国家『マルス』の王をやらせてもらってる“アーサー・マルシュグラ”だ。以前その子の所属する第3騎士団に助けられた恩を返しに来たぜ!」

 言葉が終わると同時に剣を一振りすると近づいてきていた魔物の群れを一掃していた。騎士王の力を目の当たりにしたアルバソル軍の士気は再び高まった。

 


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