表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でまた君と  作者: 長星浪漫
第三章
35/49

異常な決断

 時は少し戻り四日前、ヴァインリキウスはあることを悩んでいた。

「彼女はどうして俺を見てくれないんだろ?」

 エミューリアと運命的な再会を果たし、過去からの繋がりも明かしたのに一向にこちらを見てはくれない。むしろ何かに怯えているようにも見える。ヴァインリキウスは腕を組んで考えた。だが、原因が自分自身だということは全く頭になかった。

 考えたヴァインリキウスは笑顔でパッと顔をあげた。

「そうか、帰るべき場所があるからいけないんだ!」

 まるで最高の名案が浮かんだかのように喜ぶヴァインリキウス。

「帰る場所があるから、その場所を思い出してしまうから俺のことを見てくれないんだな、ホームシックとマリッジブルーが一緒にきてるんだ!だったら帰る場所をなくしてしまえばすがるものが俺しかいなくなる。そうすれば、俺だけを見てくれるようになる!」

 ヴァインリキウスはすぐにニゲルとランブルに命令する。

「今すぐに全兵力を持ってアルバソルに侵攻しろ」

「お、お待ちください!!」

 ランブルが顔を青くして意見する。

「なぜそのような判断をなさるのですか!?」

「なぜ?」

 ヴァインリキウスは首をかしげた。

「俺とエミューリアの未来のためだ」

「は?いえ、しかし……ぐぅ!?」

 ヴァインリキウスがランブルの襟首を掴んで締め上げた。その目には苛立ちが浮かんでいた。

「ごちゃごちゃうるせぇなぁ?黙って従えや」

「ヴァインリキウス…さま?」

 ランブルは驚いた。ヴァインリキウスは暴君と呼ばれ恐れられているがその強さゆえに本気で怒ったところを見たことがない。それに自分に近しい者には割と優しい所もあった。ヴァインリキウスが本気で怒っているのを初めて見たランブルは驚愕と恐怖に固まってしまう。

「なんだ?俺の話を聞いているのか?」

 無視されたと思ったヴァインリキウスはさらに締め上げる。

「ぐっくっ…」

 謝罪をしようにももう声も出せない。意識がもうろうとしてきた時ニゲルがヴァインリキウスの手を外した。

「そこまでにしてください」

「…ああ、すまなかったな」

「がっは…はぁはぁ…いえ、私も家臣にあるまじき態度をとってしまい…申し訳ありませんでした…」

 息を整えながら謝罪したが、ヴァインリキウスはすでに興味をなくしていた。

「明日には侵攻を開始する。ただちに準備に移れ」

「はい」

「は!」

 ニゲルとランブルはすぐに行動にうつる。ランブルはまだ不安を感じていた。

(ヴァインリキウス様には何か意図があるんだ。帝国の国益になるような意図が)

 無理矢理自分を納得させ侵攻の準備を進めた。

 ヴァインリキウスら三人がいた部屋の床の下に影無は潜んでいた。そしてヴァインリキウスのとんでもない命令を聞いてしまった。

(殿に早くお伝えしなければ)

 その場をすぐに移動した。その途中、先ほど一瞬視線を感じたことを思い出した。

(誰かが拙者の存在に気づいていたのか?しかし気づいていたのならなぜ見逃した?…いや、今はそれよりも伝令が先決だ)

 この後、影無は伝書鳩を使って報告を送ったが、まるで始めから準備されていたかの世家に帝国の準備が早く、宣戦布告が先になされた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ