新たな人生
長々と書いていた導入部分をまとめました。現在書いていた部分も順次整理していきます
光に到達した僕は見知らぬ女性の腕の中にいた。その女性は見るからに日本人ではないが話している言葉は理解できた。聞こえてきた話から推測すると、どうやら今の僕は赤ちゃんで名前は“オーネスト・ファーレン”というらしい。現時点で得た情報から推測すると僕は生まれ変わったようだった。
生まれ変わって数年がたち、僕は手に入る書物を手当たり次第に読んで現状を理解するための情報と知識を集めた。ここはいわゆる異世界だった。僕はその異世界の『アルバソル王国』の『トラウィルス』という村に生まれた。人々の暮らしは元の世界を基準とすると多分中世くらいの暮らしで電気やガスはなく水道も通っていない。
そして最も大きく重要な違いは“魔素”の存在だった。この世界には魔素と呼ばれる物質が大気中に存在している。この魔素は有毒で大量に摂取してしまうと自我を失ったり最悪死んでしまい、さらに悪くすると死んでからも動いてしまう。だがこの世界の人間には“魔素循環器官”というものが備わっており一日で摂取する程度の量であれば無害化できる。そして、人間の中にはごく稀に“魔力器官”と呼ばれる特殊な器官をもつ者もいる。“魔力器官”は魔素を取り込み“魔力”に変換・蓄積できるもので、これがある人間は魔法が使えるという。僕は魔法に少し期待したのだが人間には滅多に持つものがいないと聞き残念だけどあきらめた。
それからさらに数年がたち僕には妹と弟ができた。前世では一人っ子だったので初めての兄弟は本当に嬉しかった。このまま平凡な酪農家として生涯を終えるのかなと思っていたある日、弟と二人で山菜を取りに行った時に魔物化した熊に襲われそれがきっかけで僕は魔法に目覚めた。この事を両親に話すとかなり驚きそして僕に「その力を生かしなさい」と王都にある騎士学校に行かせてくれた。この騎士学校は七歳以上から入れて五年間様々なことを学ぶ。僕は十歳で入学した。この学校の授業のやり方は前世の大学に近かった。
ここで学ぶ内容はとても面白かった。座学では国の歴史や文学、数学などを学び、実技では剣術や魔法について学んだ。そのすべてが僕にとっては絵本や小説を読んだりゲームをやっているような感覚だったのでとても楽しく、しかもやけに簡単に身に付いた。
学校で学ぶなかでわかったのだが自分はかなり特別な存在のようだった。僕は“魔素循環器官”と“魔力器官”の両方を持っている。これは非常に稀なことで本来は“魔力器官”がある人間は“魔素循環器官”はない。そして“魔力器官”を持つ人間は空気中の魔素を魔力に変換するのと魔力を体内で維持するのにかなりのエネルギーが必要になる。エルフなどの種族と違い人間の体は魔力の保持に慣れておらず、故に“魔力器官”を持つ人間は魔力生成と維持にエネルギーを持っていかれるため体力が非常に劣ってしまう。
だが“魔力器官”を持ちながらそのエネルギーに耐えうる体を持っており、さらに常人をはるかに凌ぐ身体能力を持つ人間がごく稀に現れる。そういった人間は“神に祝福されし者”と呼ばれており、この世界にはほんの数人しかいないと言われている。僕はその“神に祝福されし者”らしかった。
そういう事情もあり本来五年はかかる学園生活を僕はたった二年で卒業できた。さらにその成績が目に留まったようで二つある騎士団の一つ“第二騎士団”の団長アルフォード・ギルクリードに誘われてそのまま騎士団に入った。この時点で魔法・剣術など戦闘に必要なスキルは人並み以上に習得していたので数々の戦果をあげることができ入団して半年くらいで副団長にまでのぼりつめた。
そして19歳になった時、アルバソル王国の王都で行われた次期王候補の御披露目式典があり、護衛として団長とともに会場に入った。式は滞りなく進んでいたが式典の途中僕は確かな殺気を感じた。同時に上空に攻撃魔法が展開されていった。その魔法は王族を狙っていた。いち早く気づいていた僕はアルフォード団長に簡単に説明し王族の元へ急いだ。王がいる場所は“第一騎士団”が守っていたが誰もが混乱し本来守るべき王族を守れていない。その間にも魔法が完成しそうになっている。急いで王族の元に向かおうとするが動揺した第一騎士団が邪魔をしてきた。僕がなんとか振りきろうと魔法を使おうとした時自分が知らない魔法が発動し一気に王族たちのいる場所へ飛ぶことができた。同時に上空の攻撃魔法が完成した。その魔法は現王ではなく第一王子を狙っていた。それに気づいた僕は第一王子の盾になり代わりに攻撃をその身で受けた。
結果的に第一王子、ソーレ・J・アルバソルは怪我ひとつしなかった。攻撃魔法を放った犯人はわからず、僕も怪我をしてしまったけれど…王族の信頼を得ることができ、僕の病室に第一王子のソーレ王子がやって来た。そこて式典の時のお礼と一つのお願いをされた。それは『第一、第二に続く新たな騎士団の設立』だった。その“第三騎士団”の団長に僕を指名したいそうだった。はじめは断ったのだが、その時たまたま病室にいたアルフォード団長の勧めもあり引き受けることになった。ただすぐに設立するわけではなく、僕が動けるようになってから一年の時間を与えられ、一年後に正式な騎士団になれるかが決まる。メンバーはすべて僕が決めていいとのことで体が治った僕はアルフォード団長やソーレ王子の力も借りながら期間内に騎士団の仮設立が完了した。そして一年の間に数々の戦果をあげた。初めは王都の掃除などの雑用だったが、盗賊の討伐、魔物の討伐、護衛任務と内容も騎士団らしくなっていき、成果を出す度に騎士団全体の力も上がっていった。そして最近では数万人の宗教団体の猛攻をたった35人で退け騎士団としての力量を大きく示した。。
十分な戦果を胸に僕の新しい騎士団は明日正式に任命される。この世界に転生してからとんとん拍子で人生が進んでいる。人生の大きな転機も何度も味わった。だが、明日の式典で僕は今までをはるかに凌ぐ“人生の転機”を味わうことになるのだった。