遅過ぎる筋肉痛の訪れ
どんなにむさ苦しい人、強面な人、スパイシーな人、鎧や武器でがっちゃがっちゃと金属音を立てる人が訪れる雑多な場所でも、やっぱり物理的に汚れた人は敬遠されます。土まみれ汗まみれのわたしたちがギルドに入ると、静かな注目の視線をそこら中から浴びました。
わたしの後悔はよそに、アンジェリカは意気揚々と、しかし疲れたふりも見せて(実際疲れてはいるのですが)受付カウンターの葵さんのテーブルに汚れた麻袋を置きました。はらはらしながら様子を見ていると、葵さんはてんで動じずにテーブルに布のシートを敷き、手袋とエプロンをつけて検品を始めました。
「うん、聞いていた通りの植物ね。二人とも遠い山にまで行って疲れたでしょう。おつかれさま」
「絶対明日は筋肉痛でベッドから起き上がらそうにないですよ。あはは…」
「あら、いいじゃない。明日が筋肉痛なんて」
「へ?どういうことです?」
「筋肉痛が明後日に来る人もいるのよ?ふふふ」
思わず顔が引きつってしまいました。リアクションに困る冗談はやめてください。
「そんなことより、約束通り急ぎで済ませたわよ。さっさと依頼人に確認させて報酬をちょうだい」
「それがね…依頼人が急ぎの用事で街を離れちゃってるのよ。数日中には戻れるようだから、それまで待ってもらえないかしら。報酬は予定通りの金額を支払うから安心して」
「なんですって?急ぎでと言うから無理したのに…」
「そんなに汚れて、がんばったわね。今日のところは早く帰ってゆっくり休みなさい。疲れが取れるまで次の仕事は斡旋しないからね、きちんと休むのよ」
アンジェリカは不服そうにギルドを離れ、スコップを引きずりながらわたしも一緒にブルーベル荘に戻りました。葵さんがホワイトな方でほっと一安心です。きっといい会社に勤めてたんでしょうねえ…。
宿の玄関をくぐると、管理人室から美味しそうな匂いが漂ってきて、強烈な空腹を感じました。この匂いは…玉ねぎなどの香草と豚肉を煮込んだスープのようです。素朴な味のパンをスープに浸して食べる様子が目に浮かびます。
早くごはんを食べたい…その前に汗を流して着替えたい…でも先に少し眠りたい…その前に汗を流してごはんを食べてから…と、堂々巡りで意識が朦朧として、その先は覚えていません。わたしたちは部屋に戻って即ベッドに寝転がると、二人して着替えもせずに朝までぐっすりと眠りこけました。




