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栄護士りぼん 異世界大豆生活  作者: 多胡真白
第2話 ゼロから始まるFラン生活
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お金がない!

「高橋さんはいつこっちに来たのかしら?」

「りぼんでいいです…。2時間くらい前です。気がついたら森にいて、アンジェリカと会って…。何なんですか、ここ?」

「さあ、わたしも知らないわ。ただ、わたしたちの知る世界とは違うようね」

「はあ…そうですか。葵さん、いやにあっさりしてますね。これがカースト上位層の余裕か…」

 実感できなくても受け入れるしかなさそうです。ガラパゴスな兎を捌いた感触がまだ生々しく残っています。

「その様子だと、何も覚えてないのね?」

「何も。これが手元にあっただけです」

 大豆の袋と食品成分表をバッグから出してテーブルに置きました。葵さんは注意深く扱いました。

「何なのかしら…。りぼんちゃんは料理系の学生?」

「はい。家政科の大学生をしてます」

「なるほどね…。大丈夫よ、そのうち思い出すわ。りぼんちゃんはこれからどうするの?」

「どうしたらいいんでしょう。当座のお金もありませんし…」

 わたしはため息をつきました。あの屋台のりんごの串焼き一本を買うお金すらありません。

「お金がないなら冒険者に登録すれば?自分の食い扶持は自分で稼ぐことね」

 アンジェリカが呆れて言います。

「さっきから出てくる冒険者って何なの?ヒロシの探検隊?」

 ここから先は葵さんが説明してくれました。何でも冒険者とはフリーランスの何でも屋らしく、ここギルドは市民からの仕事の依頼(クエストと呼ばれるそうです)を冒険者に斡旋する場所だとか。ただしギルドは信用社会だそうで、実力の前に実績と身元の証明が重要とのことです。幸いわたしの身元は葵さんが保証人になってくれるそうで(連帯責任はないと言われて安心しました。葵さんに足を向けて寝られません)、まずは冒険者としてギルドに登録を勧められました。その他の説明は、冒険者登録を済ませたあとに詳しくしてくれるそうです。

 冒険者登録の手順は二つ。鑑定士という資格を持つ人に能力の鑑定(職業適性検査だとか)をしてもらい、ギルドのトップである支部長(本部が遠くの街にあるそうです)と面談します。圧迫面接だったらどうしよう…とチキンなわたしがビビっていると、形式的なもので雑談だから安心して、と葵さんに励まされて少し落ち着きました。

「準備するからちょっと待っててね」と言われて早くも数分後、葵さんはメガネの男の人を連れて戻ってきました。男の人は支部長の秘書官のクリスさん。いかにも理知的でクールな感じの人で、ほんのり苦手なタイプです。鑑定室に案内されたときに少し腰が引けてしまいました。

 わたしの想像と違い、鑑定室は宗教的な儀式を行う場所でした。幻想的な光が照らす静謐な空間に堂々とした女神像が置かれており、ベテランの落ち着きを感じさせる鑑定士さんが隣にいます。わたしが女神像の前で跪き、鑑定士さんが祈ることであらゆる能力がわかるそうです。中学時代にクラス一人気の男子に放課後の教室で壁ドンされる妄想に励んだ黒歴史が身バレするようで空怖ろしくなりましたが、考えてみると会社で鑑定士さんを一人雇えば人事部の方々の仕事が捗りそうな気がします。

 しかし、この女神像…かすかに見覚えがあります。どこで見たのか首をかしげつつ鑑定士さんに言われるままに跪いた瞬間、すべてを思い出しました。

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