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栄護士りぼん 異世界大豆生活  作者: 多胡真白
第4話 自動増補改訂式食品成分表
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近所の市場の特売事情

 オリバーくんが持ってきてくれた井戸水で手を洗い、ブラウンさんに一言断ってから、さて、と宿を出ると、オリバーくんがわたしを待っていました。

『オリバーはあなたを手伝いたがっているんですよ。迷惑でなければ構ってやってくれませんか』とブラウンさんは言っていました。わたしのほうこそ土地勘ゼロなのでありがたくお世話になります。

 オリバーくんが案内してくれた市場は、宿からウエンツ何とかカフェ…ウエンツ・エイジド・コーヒーハウスでした、を挟んで向こうの商店街を抜けた先にありました。

 支部長さんは食料事情を懸念されていましたが、市場は活気で満ちあふれていました。一つ一つの食材をチェックして回ります。

 野菜は主にほうれん草、キャベツ、にんじん、玉ねぎ、かぶ、ひよこ豆、そら豆、えんどう豆、レンズ豆などなど。ビタミンCがほうれん草とカロテンが豊富なにんじん、香味野菜である玉ねぎがあるとは幸先よさそうです。

 果物は特産品だけあってりんごが多く、他には西洋梨、いちご、いちじく、なつめやし、ぶどう、レモンあたりが売られています。

 見当たらないのは、じゃがいも、トマト、とうもろこし、いんげん、唐辛子あたりです。特にじゃがいもとトマトがないのは痛いですが、仕方ありません。焼きとうもろこし食べたいなあ。

 肉は豚、牛、兎、鹿、鶏、うずらなど、種類は豊富なものの、全体的に少量で高めです。どちらにしろアンジェリカは肉がだめなので、肉についてはあとで考えます。

 魚は鮭、たら、にしんの干物や塩漬けが中心のようです。生魚もあるにはありますが、遠い海から運ばれてきたせいで新鮮とは程遠く、どの魚も目が白濁化しており、ハエもたかってたり、明らかに痛んでいます。その代わり、かなり安いようです。到底刺身は無理でしょう。「生魚=痛んでいる」のが常識と思われるこの街では、仮に新鮮な魚の刺身を提供しても拒否されるに違いありません。

 鶏卵も高めです。現代日本の鶏卵と違ってサルモネラ菌がばっちり付いているので、こちらも生は無理です。まあ、もしサルモネラ菌をどうにかできても、生卵のぬるぬるした食感がこちらの方々に受け入れてもらえるかどうかわかりません。

 乳製品は牛乳、やぎ乳、チーズ類が中心のようです。いずれも手に入りやすそうで、こいつはメインに据えたい食材です。いずれ大豆が収穫できるようになれば、体の成長に必要なカルシウムとたんぱく質を安定して供給できます。

 油はオリーブオイルと発酵バターが手に入れやすそうです。

 アルコールはビール、エール、蜂蜜酒、ワインなどがありました。真っ昼間からビールを飲んでる赤ら顔のおじさんを見かけて喉が鳴りましたが、ぐっと我慢です。

 香辛料も見つけましたが、塩も香辛料も少々値が張ります。支部長さんが補助金を出してくれるそうなので買えなくはないですが、保存食にのみ使うとか、できるだけ節約したいです。

 ある一角に、地元の人ではなさそうな人だけが寄っているお店がありました。窓口に天秤が置いてあり、お客さんが渡したコインを天秤にかけて、この街の硬貨を渡しています。オリバーくんに聞いてみると、両替商だそうです。なるほど、大きな荷物を背負ってたり、頑丈そうな靴を履いているお客さんが多いのは、街の外から来ているからでしょう。

 なんとなく気になって傾く天秤を眺めていると、大事なことに気づきました。天秤と言えば秤、秤と言えば計量器具です。バッグにはその類の器具は入ってませんでした。きちんと栄養を計算して料理をするなら、最低でも、小さじ、大さじ、計量カップが要ります。材料の分量が適当になってしまっては栄養バランスも何もありません。

 しかし…この街に調理用の計量器具はあるのでしょうか。と思ってオリバーくんに聞いてみようとすると、オリバーくんは何かをじっと見ていました。視線の先を追うと、焼きりんごの串を売る屋台がありました。

「オリバーくん、焼きりんご食べない?案内してくれたお礼にごちそうしてあげる」

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