6話
わたしは、自分には度胸というものが備わってないと思っていた。だってあの、何も無い部屋にいた時だって、わたしは1度も逃げ出そうなんて思ったことがなかったから。でも、ちゃんとわたしにも度胸はあったみたいだ。
ティーナがいなくてからわたしは急いで準備した。いつティーナが帰ってくるのかわからないから。
いつものようにフリフリした動きづらいドレスではなく、シンプルなドレスに着替える。
でもどこに行こう?出来ればあの嫁候補達に会わない場所がいい。
だとすれば、みんなが来ない場所がいい。
わたしが知っているみんなが来ない場所といえばもうあそこしかない!!
「いやー、やっぱりここだよね。」
わたしが剣の練習場所に選んだのは、中庭だ。
中庭はたくさんの人が来ると思われがちだが、ここはちょっと違う。
王宮には何故か中庭が3つある。そんなに必要ないとわたしは思うのだが、王宮の経済力をアピールするためだろうか?
でもわたしにとってはありがたい限りだ。
ほかの二つの方が今わたしがいる場所よりも豪華だ。だから中庭に行くんだったらそのふたつの方に行く。わざわざここに来る必要はない。
だから今この場所はわたしが独り占めしている。
中庭で練習する剣はいつもと違って楽しかった。やっぱり人間には息抜きが必要だ。
少し疲れたら、中庭にある花を眺めればいい。それにしてもこんなに花ってこんなに綺麗なものだったんだ。
わたしの家にも中庭はあった。でも、お母様はどうやら花は赤い薔薇が一番綺麗だと思っているみたいで、赤い薔薇しか植わっていなかった。
それは異常な光景で、はっきりいって少し不気味だった。まるで全体が血で塗られてしまったみたいに、気持ち悪かった。
でもここの中庭は、どの花をどのくらい植えれば綺麗に見えるのか分かっているのか、色とりどりで、やはり花はひとつに執着すべきではないのだ。
「君、なにしてるの。」
不意に男の声がした。
驚いて振り返るとそこにはとてもかっこいい男が立っている。男の髪は銀色で、瞳は吸い込まれそうな紫色だった。
なんでこんなところに人が?誰も来ないだろうと思っていたのに。それにここはあまり男がいてもいい場所ではないと思うのだが・・・。
「ねえ、聞いてる?」
ふきげんそうな男の声がまたした。
わたしは、慌てて男の方に向き挨拶をする。
「わたくしレイラ、、じゃなくてレベッカ・アンダーテと申します。以後お見知り置きを。」
「アンダーテ・・・。あぁ」
男はわたしの名前に心当たりがあるのかううーん?とうなった。
そして、男もわたしに挨拶をしようとする。その姿をみてピンと来た。言葉を遮るのはあまりいい事ではないが、分かっていたことをアピールしたくて思わず遮ってしまう。
「僕は「騎士様ですよね。」
「えっ?」
「その恰好何処からどう見ても、騎士様ではありませんか。腰に剣を下げていらっしゃいますし、」
騎士様は少しの間驚いて止まっていた。
まさか間違っていたのかしら?でもここに入ることが出来る男なんて騎士様以外いないと思うのだか。
「うん?ああ、そうだ。僕は騎士だよ。よろしく。」
「やっぱり、そうですよね。ですよね。」
ああ、やっと会えた。王宮に行けば会えるかなと思っていたが、まさかこんなにはやく会うことが出来るなんて。今日はいい日だ。いつもと違う場所で剣の練習を出来たし、まさか騎士様にも会うことができるなんて。
騎士様に逢えたらずっと言おうとしていたことが、やっと今日言うことが出来る。
「あの、それ騎士様。お願いがあるのですが・・・、わたしと剣で戦ってはくれませんか?」
「........、えっ?君と?君お嬢様でしょ。そんなことしてもいいの?」
やっぱりそこを気にするよね。でも、この王宮に来て初めて人と戦えるのだ。こんなこともうないと思う。
「大丈夫です。でもほかの方には言わないでいていただけるとありがたいのですが?」
「言わないけど。でも僕今この剣しか持ってないんだけど。」
騎士様は自分の剣にそっと触れる。大事にしているのがすぐに分かる仕草だった。
こんな事もあろうかとティーナは、木刀を2本作ってくれていた。くれぐれも、わたしに伝えてから、やってくださいね。と言っていたが、
ごめんなさいティーナ。たぶん事後報告になります。
この騎士さんは本当に強かった。あの少年に剣を振りかざしていたあの男とは比べものにならないくらい強かった。
まだわたしは一回も勝つことが出来ていない。
「はぁはぁはぁはぁ、」
「もう、終わりにする?君、倒れそうだよ。」
呆れた声で騎士様がいう。
「はぁ、ま、まだやれます。はぁはぁ、お願いします。」
乱れた息をととのえながらまたわたしは木刀を構える。
「でもさぁー。」
騎士様が渋ったその時
「キャー。お、お嬢様。何やってるんですかーーー。」
中庭にティーナの叫び声が響き渡った。
「えっ?ティーナどうしたの?」
ああ、もう見つかってしまった。
「どうしたのじゃ・・・」
急にティーナの声が止まった。そして固まった。
どうしたのかとティーナの視線を追うとその目は騎士様に向けられている。
「騎士様?ティーナ、騎士様がどうかしたの?」
わたしの言葉でティーナは、固まっていたのがとけた。
「お嬢様この方は騎士様などではありませんよ。この方は第二王子のトーマ様です!!」
えっ?えーと、トーマさま?騎士様が第二王子?
ああーーーー!!!!
「トーマ様ってまさか、この国の第二王子の!!」
「だからさっきからそう言ってるじゃありませんか!」
目の前の騎士様、改めてトーマ様は「やっと、気がついたの。」と馬鹿にしたように鼻で笑った。
自分のイメージとは違ったので、王子の性格、王子の髪と瞳の色を変えさせていただきました。
勝手に本当に申し訳ございません。