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ふつうのふつうのお姫様  作者: 榊原彩花
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5話

「お嬢様ー。」

慌ただしくティーナが入ってきた。ティーナは侍女の鏡のような人なので、走ることは珍しい。

「どうしたの?ティーナ。そんなに慌てて」

ティーナは得意げな顔で「何だと思います?」と言った。

ティーナが得意げな顔をするもの?それってなんだろう?

どんなことにも完璧にこなすティーナだが得意になることは無い。いつもふつうにこなしていくのだ。

「ええー?分かんない。何かいい事?」

「はいっ。やっとお渡しすることができます。」

そして、ずっと背中に隠していた何かを取り出した。

「それってまさか」

ティーナの手に握られていたのはわたしがずっと待っていた木刀だった。

「ありがとう。うれしい。これで暇はないようなものだね。」

木刀は私の手にきっちり収まって振りやすそうだった。

「喜んでいただき、嬉しいです。」

そう笑ったティーナの顔にうっすらクマがついていた。

「あれ?ティーナ、寝てないの?」

ティーナは気まずそうに目をそらす。そんなに忙しいことがあったのだろうか?ティーナが寝てない理由・・・。

「ま、まさかこの木刀ティーナが作ったの?」

「え、ええ。ああ、まあ」

ティーナには、珍しい端切れの悪い口調だった。

「ごめんなさい。」

私が木刀を欲しいなど我が儘を言ったせいで、ティーナの睡眠時間を削ってしまった。只でさえ侍女という仕事は、休みがなく辛いと聞くのに、

頭を下げたわたしをティーナがそっと元の姿勢に戻した。

「お嬢様が謝らなくても良いのです。わたしが勝手に作ろうと思っただけですから。それに、王宮の侍女さん達とも仲良くなることが出来ました。わたし自身とても楽しい作業だったのですから。」

そう、いつだってティーナは優しいのだ。そして完璧だ。なんて言ったってこの木刀は売り物みたいに滑らかで、綺麗な形をしていたのだから。これを削って作ったなんてどれだけティーナには、得意なことがあるのだろう?

「あっ?でもお嬢様この木刀を使っていいのは、この部屋のみですからね。」

「分かってるけど・・・。」

本当は、外で使ってみようかな?なんて思っていたけどこんなことを言われてしまっては使えるものも使えない。

それにわたしの周りにはいつもティーナがいるのだ。ティーナに見つからずに外に出るなんて、出来るわけがない。

やっぱりここには自由がないのだ。







王子と過さなければならない日まであと3日にせまった。 どんどん近づいてくるその日が来なければいいのにとまだ思っていた。

でも時間はすぎていく。暇な時間はぜんぜん進まないのに、剣を振っている時間はあっという間に進むのだ。

でも最近あっという間に進まなくなった。なぜなら少し飽きてきたのだ。もちろん剣を振ることは好きだし、楽しいのだが何せここには相手になってくれる人がいないのだ。

ティーナ以外わたしは、いつも会わない。外に出てもやる事は無い。それにほかの嫁候補に会ってしまう可能性がある。会ってもどうせ馬鹿にされるのだ。それなら会わない方が断然いい。と残るのはティーナだけなのだがティーナは剣をやらない。一回誘ってみたが断られてしまった。

せめて違うところで練習したい。いつもこんな所では絶対飽きてしまう。あの嫁候補に会ってもいいから、どこが違うところで練習したい。

でもティーナにダメだって言われている。

コンコン

何もしたくなくてダラーとしていると、私の部屋がノックされた。

ティーナがドアを開けるとそこには1人の侍女が立っていた。

「あの、レベッカ様。ティーナをお借りしてもよろしいでしょうか?」

えっとレベッカ?

ああ、わたしの事だ。そうだ。わたしは、レイラではなくここではレベッカだった。あまり人に呼ばれないから忘れてた。

ティーナもわたしの事は、お嬢様と呼ぶし。

いやいや、そうじゃなくて、違うところにずれた頭を慌てて元に戻す。うーんなんだっけ?そうだ。ティーナを借りてもいいかだっけ?

ティーナは、わたしのそばを離れることは無い。いやもしかしたらこれはチャンスかもしれない。ティーナがそばにいなければわたしは、自由に外で木刀を使える。

「ええ、どうぞどうぞ、お好きなだけお借りください。」

「ありがとうございます。」

嬉しそうにティーナが行くことを許すと、ティーナは、じとりとした目でわたしを見た。

「お嬢様、だめですからね。」

わたしの事などお見通しだと言うふうにティーナが言った。

でも、あとでティーナに怒られたって別にいい。わたしはやるのだ。外に出るのだ。

「だから、だめですからね。お嬢様」

再度ティーナがわたしに釘を指した。


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