4話
「お嬢様、準備はよろしいですか?」
私と一緒に王宮に行くことになった侍女のティーナは、赤毛に茶色の目のかわいくて完璧な優しい人だ。
あの両親は、わたしに令嬢の修行をしてからいって欲しかったみたいだが、出発するのは今日なのでそんな暇はなかった。でも、わたしは、一応令嬢だったので令嬢としての立ち振る舞いは分かる。みんなわたしの事を平民だと思っているので、わたしが令嬢としての立ち振る舞いをした時驚くと同時に喜んだ。これなら大丈夫だと、
そしていよいよ王宮につくのだ。
あの人いわく女の戦場に、
「王子様に見初められなくてもいいんだ。ただふつうに何も問題を起こさず帰ってきてくれればいい。そしたら君を解放しよう。」
あの主人はそんなことを言っていたが、本当だろうか?もちろん王子に見初められる事などこの顔では無理だ。ただ、帰ってきても私は解放されない気がする。だって、わたしを解放したら、身代わりをしていたと言われてしまうかもしれない。もちろんそんなことはしないが。その心配を無くすには、わたしを殺せばいい。まさか、そんなことにはならないと思うが。
どうせ解放されても行くところなどない。でもわたしは自由が欲しい。閉じ込められた少し前の生活ではなく、だれにも邪魔されないわたしだけの時間を、
急に心配になってあの後ちゃんと返してもらった短剣を握りしめた。
持っていくと暗殺者として疑われてしまうかもしれないからだめだ。と言われたがこれが無ければ問題を起こすと脅したら、渋々了承した。
この短剣は、あの人からもらった宝物なのだ。絶対そばを離れたくない。もう離れてしまう悲しみを味わいたくない。
生まれて初めて乗った馬車は思ったよりも心地が良くて、思わず眠たくなってきてしまった。
わたしは、いまキラキラの中にいる。とんでもなく豪華なキラキラだ。
王宮についたわたしたち嫁候補は全員が一度集まってお茶会をすることになった。
王宮に集められた嫁候補はわたしを合わせて4人だった。
ほかの人たちはもう来ていてわたしが一番最後だったのだが、部屋に入った瞬間あ、無理だ。と思った。
ほかの3人はとんでもなく派手なそして高そうなドレスを着ていたのだから。
3人は入ってきたわたしを見て眉をひそめた。
「あら、あなたが最後の1人ですの。」
「そのドレス、まぁ何て言っていいのか、でもあなたには似合ってるんじゃありませんか。」
「ハッキリ言って拍子抜けですわ。」
えっとこの言葉は悪意として受け取ってもいいのかな?
確かにわたしが着ているドレスはほかの人よりも地味かもしれない。それを似合ってると言われたということは、わたしが地味だと言いたいのだ。
拍子抜けだということは、わたしでは相手にならないということだ。
分かってたけど、知っていたけど、なんだかあんまりじゃないか。何で貴族の人はみんな美しいんだ?ここにいる3人は全員とんでもなくお美しい。
人間顔が全てでは無いでしょ?
そう思いたいのに早くも心が折れそうだ。帰りたい。
「お嬢様、大丈夫ですか?」
お茶会が終わりあてがわれたら部屋でぐでーんとベッドに倒れ込んだわたしに、心配した顔でティーナが言った。
「ああ、ティーナ。帰りたいなんて思ってないよ。全然思ってないから。」
「お嬢様...。」
あんな悪意まみれの所わたしにはやって行ける気がしない。
せめて、せめて剣を振りたい。
貴族のお嬢様は一体何をして過ごしているのだろう。毎日暇ではないか。
「ねえ、ティーナ。こんな暇な時間をみんな一体なにしているの?」
「ええと、刺繍、ダンスの練習、自分磨き、などですかね。」
ああ、それ全部わたしが苦手なものじゃないか。
「剣の練習とかは、だめ?」
「だめです。それに剣なんてどこにあるんですか?」
「それは...無いけど。」
家にいた時は与えられた木刀で練習していたが、ここにはそんな物ない。だったら、細長い棒でもいいんだけど、それすらない。
剣はわたしの唯一の生きがいなのだ。それが出来ないなんて、もういやだ。
「もうわたし生きてい行けない。こんなキラキラしたところ耐えられない。頑張れる気がしない。......だからさお願い。木刀用意してくれない?そしたら頑張れるから。」
必殺生きていけない作戦通じるのか?
「はぁー、 もう分かりました。用意します。その代わり王子様と過ごす日はちゃんとやって下さいませ。」
諦めた顔でティーナはうなずいた。
そして、思い出してしまった。王子と過ごす時間かぁー。いやだな。
実はあの後王子の使いのものだという男が入ってきた。
その男が言うには、王子は一日おきに嫁候補ひとりひとりと過ごしていくらしい。そういう時間を過ごしていきながら王子は結婚相手を決めんるだとか。
それでわたしの順番は一番最後になった。だから8日後わたしは、王子と過ごさなければならない。
正直に言うとその日が来なければいいと思っている。だってその王子もこんなふつうの顔なんて、興味が無いだろうから。
ああ、早く剣を振りたい。私のたった一つの楽しみをどうか誰も奪わないでください。