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東方亜幻空 ~Fantasia of another sky  作者: とも
序章 「天空に座す秘神」
9/56

8 突入

 「明日、賢者達の元へ向かう」

 「私はそれまでに辰の力を見ておきたい」


 一瞬言葉を詰まらせた後に喋り出す純狐。

 力を見ておきたい、か。

 どういう意味だ?


 「こういう意味だ」


 純狐の姿が不意に動いた。

 俺の背後に回り込んで、殴りかかってくる。

 咄嗟に俺はしゃがんでいた。純狐の手が空を斬る。


 「危ないな……… どうしたんだ?」

 「刀を抜け。私の憎しみと辰の力、どちらが強いか勝負しましょう」

 

 言われたままに刀を抜く。

 純狐は俺が刀を構えるのを見据えると、再び殴りかかってくる。

 恐ろしいほど速い動きだ。長い時を生きた霊とはここまで強いのか。

 寿命が残り僅かとは思えない動きで俺を圧倒してくる。

 純狐の拳を刀で受け止め弾き返す。今度は流石に驚きを隠せないようだ。

 この刀は絶対に折れないようになっている。どんな攻撃を受けても傷一つ付かない。それは霊夢との戦いでもう証明されている。


 「その刀は一体…………」

 「凄いだろ? 木を殴っても傷一つも付かないんだぜ」


 今度はこちらの番だ。

 どうやら純狐は刀に気を取られているようだ。

 俺は刀を投げた。純狐もまさか刀を投げるとは思っていなかったのだろう、刀に注目する。

 俺がこの隙を見逃すはずがない。

 俺は純狐の背後に回り込み、最初にされたように一撃入れてやった。


 「…………なるほど」

 「お前の力が少し分かった」

 「お前の力は、本当に力そのまま、私より純粋な物のようだ」

 「辰、もう休みなさい」


 俺は刀を拾い鞘にしまった。


 「じゃあ、もう休ませて貰うぜ」

 「明日は決戦だからな」


 ホールから出ていく。元々あまり物が無かった場所なので、殆ど汚れていない。

 そのまま通路を通り俺に割り当てられた部屋に向かう。

 俺は横になった。

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 「さあ、準備は良い?」

 

 霊夢が皆に呼び掛ける。

 全員が頷くのを見ると、霊夢は純狐に呼び掛けた。


 「さあ、紫達の元へ向かいましょう」

 

 霊夢の言葉を聞いて、純狐は振り返った。

 

 「………さあ、行こう」

 

 純狐は目の前の物体を見上げた。

 機械のような無機質な物体だ。俺が見たことのあるような機械とはかけ離れた形をしているが、一体これは何なのだろうか。


 「純狐、これは?」


 俺が質問するよりも早く霊夢が質問する。


 「月の民の叡知の粋を集めて創ったもの…………」

 「空間に歪みを作り出し、他の空間へと繋げる装置だ」

 

 まるで理解できん。

 唯一分かるのは、これが紫や摩多羅の世界に突入する手段であることだ。


 「さあ、準備しなさい」

 「武器装備が全て持ってけるように、しっかり持つのよ」


 純狐の言葉を聞いて俺は刀を握りしめた。

 俺はこの刀一本で戦う。もっとも、それは俺が武器と言える武器を他に持っていないからだ。

 俺のペアである永琳は回復も攻撃も出来るらしい。俺が傷付いた時は頼っても良さそうだ。


 「さあ、賢者達の元へ!」


 純狐のその言葉と同時に目の前の機械が音を立てる。

 それと同時に俺の視界が曇りだした。

 久々の感触だ。後戸の国へと出入りする時の何とも言えない感じだ。


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 俺が目を開けるとそこは後戸の国だった。

 しかし、前に来たときとは違い、辺りに浮かぶドアは全て閉じてしまっている。


 「辰、大丈夫かしら?」

 「永琳か。俺は大丈夫だ」

 「ここ、どっちに行けば良いか分かる?」

 「あっちだ。俺は何度もここに来てるからな」


 今回も動きの流れを感じてその方向へ向かう。


 「そう言えば、辰は賢者に会ったのかしら?」

 「会ったとも。加護もくれたしな」

 「加護………… もしかしたら、ここの賢者(摩多羅)が共犯なら、あなたは利用されてるかも知れないわね」


 そうだろうか。

 利用されていたとしても、俺の動きには障害はないし、倒せばそれで終わる。


 「さて、結構進んだわね」


 暫く進んだ。

 今回もかなり長い。もしかしたら、運悪くこの世界の端っこに出てしまったのかもしれない。


 「止まった方が良いよ」


 突然声が聞こえた。

 俺の正面に影が見える。

 そのまま、姿を現した。


 「確か、舞だったか」

 「そうだよ」

 「邪魔が入ったか………」


 どうやら、二童子の片方に待ち伏せされていたようだ。


 「舞、早すぎるでしょ」


 …………どうやらもう片方も現れてしまったようだ。


 俺は刀を抜いて呼び掛けた。


 「摩多羅に用がある! 通してくれ!」

 「無理よ。お師匠様に叱られるもの」


 駄目か……………


 「辰、これではっきりしたわ。悲しいけど、こっちの賢者も共犯ね」

 「そうだな………… 恩人の部下を斬るのは心が痛いが、倒さないと通してくれなさそうだ」


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 「ここ、変ね」

 

 霊夢は呟いていた。

 霊夢が変だと思った理由。それは、いきなり「ここ」に出てしまったからだ。

 目が多数浮かぶ空間。確か、「スキマ」と言ったか。


 「霊夢。賢者はどこに?」

 「分からないわよ。取り敢えず、進みましょう」


 そういって二人は進み始める。


 「待ちなさい!」

 「ここより先は通せないわ」


 やはり現れる人物。

 八雲紫の式である藍である。


 「藍………… どきなさい!」

 「無理な相談でしょう。私はここの守護を任されましたから」


 

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