42 原子の神
______あれで良かったのかい?
「良いんですよ、私は。これが最善ですから」
______そう。君の好きにすると良いよ。
______これを見ているのも楽しいからね。
「では、失礼します。それでは、"創造神様"」
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「………………飽きたな」
俺は目の前の男が言った言葉が理解できなかった。
飽きた、だと?
「そうだ。飽きた」
「長く続ける戦いは好きじゃない。もう通って良いぞ」
俺は、それが罠ではないかと疑った。
これまで妨害してきたのに、何故ここで遠そうとするのか。
「攻撃なんかしねえよ。疲れたからな」
「俺はテーフォと出掛けてくるからよ。じゃあな」
一瞬聞こえたテーフォという人物が誰か分からなかったが、彼はその言葉を言い残して消えた。
同時に、摩多羅の声が聞こえてくる。
「存在の移動を確認……………… 奴は去った」
「何だったのかしら………………」
霊夢が呟く。
俺も分からない。
何故あそこで、彼は自らの仕事を放り出したのか。
「彼らは上位者の命令には逆らえない」
「逆に言えば、命令されていなければ無視しても良いということに繋がる」
奴等は、命令されていない…………?
では、奴等の指導者は誰なんだ?
少し前に現れた"創造神"は最高指導者が自らの片割れだと語った。
そう、システムの最高権限者が指導者なのだ。
しかし、命令はしていない。命令さえしていれば、放り出される事も無かっただろう。
「進もう」
「この先だ。大きな力の流れを感じる」
俺達は同じように進み始めた。
光線が飛び交っている。
そして、その光が目指すのは一つの点。
俺達はそこへと向かっていく。
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「門、か。奴等、門好きだな」
「境が欲しいのだろう。この先は、別の世界だ」
俺は息を飲んで扉に触れた。
しかし、その扉は開くことはない。
「何故だ!?」
俺は扉を叩く。
しかし、一向に開く気配がない。
「何故だと思いますか?」
俺は頭上から声を聞いた。
悪寒を感じ、俺は門から瞬時に跳び退さる。
「あんたは………………!」
そこに居たのは、居てはいけない人物だった。
「シオンさん、何故ここに居る!」
「シオン…………… 彼女が、辰を助けてくれたのね」
霊夢が呟く。
シオンさんはここに居てはいけない人物の筈だ。
力を失い、ここには来れない。
そうであったのだ。
「さて、何故開かないと思います?」
俺はその言葉の直後に力の気配を感じた。
彼女から力が門の中心に流れ込んでいる。
「まさか、シオンさん……………!」
「そうです。この扉は、もう開くことはありません。私が閉じさせて貰いました」
「何故だ!」
「何故…………… 騙した!」
「騙した? 私は最初から嘘も吐いていませんし騙すつもりもありませんよ」
「"名乗らなかっただけ"ですよ」
俺はシオンを睨み付けた。
まさか、このような展開になってしまうとは。
「では、改めて名乗りましょう」
「私はシオン。"原子"の最高神です」
原子……………!
「本当に愚かな人ですね。ここに来れば、あなたは死んでしまうと言うのに」
「ですから、あなたにはこの先には行かなくても良いのですよ」
「これが最善、これが"歴史"なのです」
俺はその言葉を即座に否定した。
「俺は諦めない。あなたを消滅させるようなことがあっても、俺は諦めない」
「………………愚かですね。私を消滅させる事は今のあなたには不可能なのですよ。ましてや、創造神様の半身を消滅させようなどとは」




