39 暗き空に佇まん
ついに一週間が終わった。
もう、俺達の安寧は守られない。
「行くぞ。最後の、戦いに」
俺は霊夢達に言った。
俺の前には神社の裏にある扉がある。
俺達があてに出来る転移可能な場所はここだけだ。
摩多羅の転移能力を応用して神々の世界に転移する。
そこから、俺達は戦い始めるのだ。
「開くぞ」
俺はカードを持ちながら扉を開いた。
扉が開いた先に広がる光景は、俺達の知るそれとは全く違った。
ノイズのような物が走っている。
理解不能な記号のような物まで現れ、俺達は一瞬飛び込むのを躊躇った。
「無視して突っ切るぞ!」
俺達は扉の中に飛び込んだ。
今使ったのは創造神の元へと通じるコード。
シオンは、創造神へ話を通しておくと言っていた。
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「………………変な感覚だ」
まるで、俺がここに居るべきではないかのような感覚だ。
圧倒的な圧力に押されている。
「ここ………… 見覚えがあるわね」
霊夢が呟いた。
「ここに見覚えが?」
「ええ、私が声を聞いた場所よ。感覚は違うけど、この真っ暗な場所……………」
霊夢が、力を貰ったと語る空間。
それが、ここらしい。
「力の流れを感じる。あっちだ」
俺は右を指差した。
俺達は全員で歩き始める。
「………………………」
今何か、自分の意識に空白が出来たような気がした。
不思議な感覚だ。
「また来たのかい?」
「全く、寝てるときぐらい来ないでよ」
突如空間に声が響きだした。
「今の声……………… 来て! 会ってみたかったのよ」
霊夢が叫ぶ。
今の声にも聞き覚えがあったようだ。
霊夢が虚空に向かって叫ぶ。
「ああもう………… これで良いかい?」
強大な気配を感じて俺が振り返るとそこには「人」がいた。
人の形をした何かだった。
姿だけでいえば、12才位の少女であった。
しかし、その少女が纏うオーラはその姿にそぐわない。
「あなたが、私に…………?」
「まあ、それが正しいのかもね。君は面白い運命にある」
いきなり運命などと語るその少女に向かって俺は視線を送る。
「へえ、君は面白いね。これからの運命の中心に位置している。今の運命は、君が主役だ」
俺はその意味が分からなかった。
いきなり主役だ何だと言われて、理解は出来なかった。
「けれど、今の君はここよりも行くべき所がある。そうでしょ?」
「ああ、そうだ」
俺は少女へと言った。
「一つ聞いておくが、お前が創造神で間違いないな?」
「そうだね…………… 正確に言えば、三人に分かれた内の一人」
「は? 何だって?」
三人に分かれた、だと?
一体、どういうことだ?
「下が勝手にやった事だけどね。半ば事故みたいなものさ」
「その事故で僕は三人に分かれた。そして、僕がその内の一人」
「中間と呼ばれるべき創造神」
「君達が倒すべきは、堕天と呼ばれる僕。僕の負の感情を主体として分離した存在だね」
「幸運な事に、堕天はこっちほどに強くはない。権限レベルは下がってるし、能力も特に厄介な物は無いね」
なるほど、俺達でも倒せると言う意味か。
倒しやすい敵であるとこいつは語っている。
俺達にとっても幸運ではあるが、なぜ自分を殺させようとしているのか。
俺にとってはこいつらの思考は全くもって理解は出来ないのだ。
言葉の裏に何が隠されているのかは、知れるはずもない。




