36 拮抗
「………………権限4?」
「何故、貴女がそれを……………」
戸惑うメモリア。
最高神である彼女も、霊夢の身に何が起こったのかを理解できなかった。
霊夢の権限は元は1であった。しかし、それが4まで上昇している。
メモリアはシステム内の記憶領域を司る神である。
よって、霊夢の身に何が起こったのかをシステムで覗くことが出来た。
しかし、それでも彼女は理解できなかった。
自らの力を越える者からの妨害があったのだ。それにより、断片的な情報しか得られなかった。
「まさか、権限6から妨害を受けるなんて……………」
彼女は権限5。システムの中では最高神、原初の神であった。
その力はシステム内のあらゆる生物を越える。能力なしでも、根源の部分から通常の生物を超越した力を持っている。
システムの権限レベルは1から7。その内、5が最高神である。
「最高神」と言っているが、システム内では最高の力を持つわけではない。
システム内での「神」と呼ばれる者の内、最高クラスの権限を持つものをそう言うだけである。
では6は何なのか?
それは、システムを統制する神。システムの制御を任された、最高神をも越える神。それが権限6である。
メモリアは権限5。彼女を邪魔できるのは、権限6以上のみ。
それが意味するのは、彼女が「上司」から邪魔されているのだ。
システムの神々は基本的に上位存在には逆らわない。
もし逆らえば、自分は消されてしまうからだ。跡形もなく、文字通り消滅する。
彼女はそれを知っている。だからこそ、霊夢の記憶領域を覗くのは諦めて戦いに専念しようとしたのだ。
「たかが権限4で調子に乗らない方が良いですよ?」
メモリアは静かに告げた。
しかし、霊夢は止まらない。
「権限が全てだと思っているの?」
霊夢は挑発した。
しかし、メモリアには通じない。
霊夢はかけ出した。
そのまま、メモリアに向かってお祓い棒を向けた。
「夢想封印・極破!」
霊夢の放つ弾幕が猛スピードでメモリアに放たれる。
それは霊夢の「夢想封印」を強化したような物だった。
権限4の力で弾幕を強化して放たれたそれは、メモリアの体に吸い込まれるようにして向かっていく。
「小癪な………」
メモリアは自らの腕を振り上げて弾幕を吸い込む。そして、それをコピーした弾幕を放った。
霊夢は見抜いていた。
メモリアのコピーには、僅かな時間発動しない隙が有ることを。
システムが情報の集合である故の「仕様」。
能力発動までは、宣言から僅かな時間を要する。
メモリアのそれは他と比べれば大きな時間であった。
約3秒。
それが、メモリアのコピーに要する時間。
「そこ!」
霊夢は一瞬の隙を突いて一枚の札を投げた。
それは、相手の体を束縛する呪札。
「最後よ!」
霊夢はメモリアに向かってお祓い棒を振りかざした。
「終わるわけ無いでしょう?」
霊夢のお祓い棒には神殺しの特性が付与されていた。
霊夢が自らの能力でお祓い棒に付与した能力。
システムの神を殺せる筈のお祓い棒は、いとも簡単に防がれた。
「まだなの!?」
霊夢は1回跳ぶと摩多羅の元へ駆け寄った。
「逃げて!」
「あなたは辰の所へ行きなさい!」
霊夢は摩多羅にそう伝えると、宙に浮いた。
それに合わせてメモリアも飛び上がる。
霊夢は横目で摩多羅が去るのを確認すると、お祓い棒を掲げた。
「幻想之賢者 私的力宛与溜」
霊夢が唱えたのは幻想郷の賢者への祈りだった。
博霊大結界の力を宿すと共に、自らの能力を極限まで上げる。
博霊霊夢が編み出した秘術である。
その祈りは霊夢の力と共鳴し、さらなる力を生んだ。
「さあ、本番よ!」
霊夢がすさまじい速度でメモリアに肉薄する。
そのまま勢いよくお祓い棒を振るう。
勿論回避されるが、気にせずに振り続ける。
「邪魔です!」
メモリアの強烈な一撃が放たれる。
最高神は肉体的能力も高い。
そのため、今の霊夢に対しても安定した一撃を繰り出せる。
「遅いわ!」
霊夢の動きが更に速くなる。
オーラのような気質がぶれ始め、その素早さを物語る。
「なら、こちらも!」
メモリアも加速し始めた。
能力をフルに使用した動きで霊夢に迫る。
こうして、戦いは拮抗状態に入り込んだ。




