33 反撃:弍
「人形………… 奴等も面白い手を使う」
純狐が呟いた。
霊夢自身、この女が人形だとは思ってもいなかったのだ。
れっきとした神、そう思っていたのだ。
しかし、今目の前に居るのは人形であった。
「神も、そこまで多くないのかしら」
霊夢が呟く。
目の前を見詰めたまま、動かずに様子を伺う。
「来ます!」
妖夢の声を聞いて、霊夢は右に跳んだ。
次の瞬間、斧が地面に盛大に音を立ててめり込む。
「動きが鈍くなっているようだぜ」
魔理沙が霊夢に言う。
「体力切れが近いだろう。このまま攻めるぞ」
摩多羅が続け、その言葉と同時にレーザーが発射される。
「ウ、ウオオオオオオ」
目の前の人形が悲鳴を上げる。
動きは目に見えて遅くなり、体に入っている力も抜けてきた。
「とどめよ」
霊夢がお祓い棒で一撃叩き込む。
それと同時に、人形のエネルギーは底を尽き、崩れ落ちた。
霊夢がスタスタと後ずさる。
「ふう………… みんな、大丈夫?」
霊夢が言い、それを聞いた皆が頷く。
それを見て、霊夢は改めて目の前の建物を凝視した。
漆黒の要塞……………
この中に先程の人形と同等以上の奴等が大勢いるのだ。
実際、ここに居るのは神ばかりで人形は少ないのだが、それを知るのは摩多羅だけだ。
「……………追っ手が居る」
純狐が呟いた。
それに続いて、摩多羅も言う。
「後退は不可能だろう。このまま要塞に突入する」
それを聞いた霊夢が驚いて言った。
「無茶よ………… 帰るべきだと思うわ」
霊夢達では力不足。勝ち目は無いに等しい。
しかし、摩多羅は首を振った。
「私達は取り囲まれている。当然、突入しか無いであろう?」
それを聞き、霊夢は黙ってしまった。
「……………そうね。行きましょう」
「ああ、霊夢!」
魔理沙が頷き、改めて全員で要塞を凝視した。
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「突入!」
摩多羅の号令で要塞の上部から突入する。
ここは前に摩多羅が潜入した場所。摩多羅はここの事をよく知っている。
「コアまで一直線だ」
摩多羅が駆け抜けるのを追って霊夢たちが突入していく。
迷いのない動きで通路を駆け巡り、少しの時間がたった。
「ついたぞ」
摩多羅が止まったのは、一つの巨大な扉の前だった。
もう帰ることは出来ない。
既に、後戻りは出来ないと全員分かっている。
「……………中には、多分最高神が居るわ」
霊夢が言う。
摩多羅から最高神の存在は聞いていた。
創造神の直轄の12柱。
システム内の権限はトップクラスの存在。
「いい? 私達は、絶対に戦えないわ」
「まともに戦えば死にますからね」
妖夢が続ける。
「だから、摩多羅が攻撃できるように隙を作りましょう。分かった?」
霊夢の言葉に反応して皆が頷く。
もう決意は出来ている。
霊夢が扉を開く。
「行くわよ」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
そこは、図書館であった。
尋常ではない広さの図書館だ。
紅魔館の大図書館と同等以上の広さ。
霊夢達は身構えながら進んでいく。
「あれが、コア…………」
大図書館の奥に見えた瑠璃色の結晶。
そう、あれがコアだ。
この世界を形作る、データの結晶。
そして、この世界の中心部。
「破壊しましょう!」
霊夢が言うのに合わせて皆が弾幕を放つ。
物体を破壊するための弾幕。
破壊できないものは殆ど存在しない。
しかし、弾幕は結晶に当たるどころか当たる前に弾かれたのだ。
「危ないですね、貴女方」
そう言って結晶の後ろの方から現れる少女。
見た目は霊夢達とさほど変わらない。
しかし、それが見た目とは全く違う時を刻んできた存在である事は誰にでも分かっていた。
「私は"記憶"を司る最高神の一柱、メモリア」
「以後お見知り置きを」
礼をして名乗る少女。
その礼儀正しさに驚いたのか、霊夢が言う。
「随分礼儀正しいわね………… からかっているの?」
霊夢の言葉に反応してメモリアが言葉を発する。
「いいえ………… 貴女方には先に名乗っておかなければ」
そこで一瞬間が空いた。
「もうすぐ忘れられてしまう貴女方には、知っても意味は無いでしょうが」
その言葉を聞いて、魔理沙が反応した。
「来るぜ!」
メモリアがスッと手を掲げた。
その瞬間、大図書館全体が変形していく。
本棚が壁にはまり、どんどん部屋が広がっていく。
やがて、結晶を残して広大な戦場が広がった。
同時に、コアも結界らしきものに包まれる。
破壊は不可能だろう。解除するには、メモリアを倒すしかない。
「さあ、足掻いて見せて下さい。貴女方が忘れられるまでの短い間に」




