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東方亜幻空 ~Fantasia of another sky  作者: とも
三章 「浄化異変」ACT1
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31 反撃開始

 「まるで心を失っているようね」


 霊夢は呟いた。

 淡々と攻撃してくるだけの女への感想であった。

 霊夢達は現時点では不利である。

 相手への攻撃は全く効かない。摩多羅が救援に来るまで待っているしかない。

 

 「あの斧…………」


 純狐が焦りを感じさせる動きで言った。

 霊夢達と対峙する女の得物、巨大な斧。その斧からは猛烈なオーラが感じられる。

 神話で言えば「神器」と呼ばれる物に値するであろう武器だった。

 北欧神話で言えば「ミョルニル」だとか「エクスカリバー」と同等の斧。

 それほどの強大な武器であることを霊夢と純狐は実感していた。

 振られるごとに衝撃が発せられ、周りの木が薙ぎ倒されていく。

 そこそこ太い木ではあったが、容易く倒されていた。


 「へカーティア!」


 純狐が助けを呼ぶように言った。

 勿論、へカーティアに。

 しかし、いつまで経ってもへカーティアはやってこなかった。


 「何故…………」


 霊夢は息を詰まらせて言った。

 霊夢は一度だけへカーティアと対峙したことがあった。

 その時の攻撃の激しさは、霊夢が経験したこともなかった。

 途中で純狐が割り込んではいたが、それでもへカーティアは一人で強大な力を持っていた。

 そんな彼女がそう易々と倒れる筈がない。

 元々、彼女のコアとも言える物は地獄にある。

 もし彼女が消滅したと言うのなら、地獄も一緒に侵略されたことになる。

 へカーティアは「地球」「月」「異界」の三つの地獄を司る女神。

 コアについては不明な事も多いが、確かなのは「へカーティアは三人いる」ということ。

 「地球」「月」「異界」の三つの姿を持っている。それが彼女の能力でもある。

 純狐は知っていた。彼女が消滅するならば、三つの世界全てを侵略できていなければならない。

 異界の神々は一つずつ世界を侵略して別の世界へと移る。

 そのため、幻想郷を侵略された時、地球と月は侵略されていない筈なのだ。

 もし侵略されたのなら、へカーティアが何らかの反応を示していた筈だ。

 それか、地球と月の侵略が幻想郷の後に行われたのか。

 しかし、地球と月の世界が「混沌」にはまだ混ざっていない。

 もしくは、霊夢達の知らない地域に混ざったのか。

 何せにしろ、霊夢達はへカーティアがまだ存在している事を信じていたい。

 否、信じなければならない。

 

 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 「嘘、そんな…………!」


 パキン、と音を立てて儚く散った。

 霊夢のお祓い棒が耐えきれずついに折れてしまったのだ。


 「退きましょう、純狐!」

 

 霊夢が純狐の叫ぶと、純狐は無言で頷く。

 

 「行くわよ!」


 霊夢が駆け出した。

 既に斧のリーチの範囲外。

 霊夢に斧は届かない。

 勿論、衝撃波さえも大丈夫だ。霊夢であれば、衝撃波は一発であれば耐えられる。

 しかし、それを現実は裏切った。

 斧が電撃を放ったのだ。

 斧が地面に打ち付けられ、電流が流れる。

 そして、目に見えるほどの電撃が霊夢を襲う。


 「…………!」


 霊夢は振り返り、凝視した。

 電撃を掻き消すかのように放たれた極大レーザーが、女を包み紺んでいたのだ。


 「霊夢、助けに来たぜ!」

 「魔理沙!」


 霊夢は叫んだ。

 右を見れば、箒に乗った少女が小さな八卦炉を構えて浮遊している。

 人々はそれを「ミニ八卦炉」と呼び、その持ち主を「泥棒」または「霧雨魔理沙」と呼んだ。


 「ありがとう、魔理沙!」

 「礼は良いんだぜ、それよりも………」


 魔理沙が指差した先には、早くも立ち直った女が立っている。

 斧を構え直し、こちらを凝視している。


 「魔理沙さん、早いですよ!」

 「悪い妖夢、飛び出しちゃったぜ」


 魔理沙の元に走ってきた少女を、霊夢は良く知っていた。

 勿論、妖夢である。

 半人半霊の庭師と呼ばれるその少女は、刀を目前の女に向けていた。

 本来刀は斧に相性がいい筈だが、女の取り回しは素晴らしく速い。こんな状態では相性は関係ない。


 「霊夢さん、居たんですね」


 妖夢が驚く。彼女は元々魔理沙に付いてきていた。霊夢が居ることは全く知らなかったのである。

 魔理沙が箒で上空から霊夢を見付けて急行したため、妖夢は霊夢の存在を知れなかったのだ。


 「霊夢、お祓い棒はどうしたんだぜ」

 「折れたわよ、ついさっき」


 それを聞いた魔理沙が驚きの行動に出た。

 いきなりどこからか棒を取り出したのだ。

 それは霊夢のお祓い棒と全く同じ物だった。勿論、かつて魔理沙が霊夢から盗んだ一品であった。

 魔法媒体に使おうと目論んでいたが、使えなかったので放置していたのだ。

 ………………服の中に。


 「…………良いわよ、返してくれるのね」

 「さあ、反撃開始だぜ!」

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