28 [回想] 要塞潜入
「回想」
視点:摩多羅
「これは一体…………」
摩多羅は巨大な構造物を前にして立ち止まっていた。
漆黒の物質に白いラインが走っている。
幾何学的模様を描くその構造物。
直径一キロはある直方体。
一平方キロに高さ200メートル。
巨大かつ禍々しい構造物だった。
「混沌」のコアである。
これはコアを守る要塞であり、中には上位神が徘徊している。
しかし、要塞の外側には神は居ない。だからこそ摩多羅はここまで辿り着けた。
「……………」
摩多羅は椅子に座ったまま無音で動き出した。
要塞の壁面は入り口も何もない。
なら、上面部に有るはずだ。もっとも、上面部にも無い可能性は有るが。
「ほう…………」
上面部には円形のラインが囲んでいた。
中央の円形は要塞の中まで窪んでおり、時折中から光を見せる。
摩多羅は円に近寄り、中を覗いた。
「まさか、地図…………」
円の壁面に地図が書いてあった。
どうやら、この要塞の地図らしい。
防備がまだまだ、と思いながら摩多羅は地図を見た。
「エネルギー室、データ室_____」
順番に読んでいく。摩多羅は記憶力も高い。読んだだけですぐ覚えてしまった。
大半を読んだ所で、摩多羅の目は真ん中に吸い寄せられた。
「ワールドコア…………?」
丁度この円形の下の部屋に、ワールドコアと名の付く部屋があった。
流石に摩多羅でもこれは意味が分からない。
摩多羅は既に100以上の神を消滅させている。そして、その魂の余剰分を回収して力としているのだ。
その過程で知識も手に入り、システムの存在を知ったが、未だにシステムの全容を理解は出来ていない。
神々が使うコマンドの解析も終わっていない。と言うより、コマンドを使われる機会が少なかったのが原因だった。
摩多羅のシステムクラスは3。既にコマンドを使えるのではあるが、摩多羅本人が使い方を知らないのでは仕方がない。
「データ室に行けば…………」
摩多羅は呟いて移動し始めた。
漆黒の壁面と比べて、中は純白であった。
光源は無いが、どうやら壁が光っているようだ。明るい廊下を進む。
「一人めだ」
中を巡回していた神を見つけた。
廊下の突き当たりで待ち伏せる。
感じる力からして、格下であることは間違いない。摩多羅なら一撃で仕留められる。
突き当たりから出てくる所を狙って魔方陣を展開、レーザーで頭を消し飛ばす。
頭を飛ばされ、消滅する神。
その後に、宝玉が落ちている。それを持ち、砕く。
魂奪の儀式の時には及ばないが、力が流れてくるのを感じた。
魂の余剰分を回収しているのにも関わらずこのエネルギー量。魂そのものを回収出来れば、大幅に強くなる筈ではあるが、未だにそれは成功していない。
もしかしたら、魂は別の所に有るのかもしれない。
「ここか」
摩多羅は呟いてデータ室に入った。
机の上に置いてあった書類に目を通し、速読する。
摩多羅にとっては驚く事ばかりではあったが、それでも懸命に覚え続けた。
覚えておけば後で読み直せるのだから。
コマンドについては何も載っていなかった。
コマンドは神々にとって当たり前の事か珍しい物なのだろう、と考えて書類を置く。
勿論、ワールドコアに向かおうとするが、摩多羅の耳がそれを邪魔した。
足音が聞こえているのだ。ここには巡回は居なかった筈。
そう考えた時、摩多羅を驚かす事が起きた。
サイレンが鳴り始めたのだ。
「警戒、警戒! 侵入者あり!」
スピーカーから聞こえる声に摩多羅は耳を傾けた。
そう、摩多羅が消滅させた神が居ることに気付かれたのだ。
もうワールドコアには向かえない。
警戒状態となってしまったため、摩多羅は仕方なく帰ることにした。
早く辰に伝えなくては、と急いで移動する。
「居たぞ!」
気付かれてしまった。
勿論、攻撃が飛んでくる。
漆黒の物質。死呪である。
勿論、摩多羅は防いで跳ね返す。だが、それでも少し腕に付いてしまった。
命に別状はない量である。
摩多羅はより一層急いで逃げ始めた。
来た通路を戻り、円形の上部まで逃げる。
そしてそのまま空中に飛び出し、要塞から脱出した。
結果から見れば摩多羅は死呪が少し腕に付いただけで済んだが、実は少しではなかったのだ。腕にベッタリとついているため、少しではない。
命に別状が無いとはいえ、とても見せれない状態である。
摩多羅は服の裾で腕を隠し、近くの木に隠れた。
そのまま警戒が解けるのを待つ。追っては居なかったようだ。
追っては来てもおかしくないが、なぜか来なかった。
恐らく、自分達の要塞が落ちる筈がないと自負しているのだろう。




