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東方亜幻空 ~Fantasia of another sky  作者: とも
三章 「浄化異変」ACT1
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27 手紙

 ハザマは消えた。

 後には誰も居なかった。


 「摩多羅………… どうしたの」


 霊夢は聞いた。

 

 「これが送られてきたからな」


 そう言って摩多羅が懐から取り出してきたのは封筒だった。

 表面に「霊夢、純狐、摩多羅へ」と書き込まれている。

 霊夢にはその手紙の差出人が推測できた。

 勿論、辰である。

 霊夢からすれば、辰の字は見慣れない。

 それもそう、霊夢は筆で書いていたのに対して辰は鉛筆やペンである。

 生活する環境が違った故に字も完全に書き方が違ったのだ。

 それに、自分達に手紙を出してくる人物が辰ぐらいしか居ない、というのもある。

 

 「これって………」


 封筒の中に入っていたのは手紙と地図。

 地図の中心に丸が付けられた____

 

 シオンが辰に見せた物と同一の地図。

 異界の神々が「混沌(chaos)世界(field)」と呼ぶそれである。

 

 「破壊しろ、ね……」


 手紙には一文、「ここに有る物を破壊しろ」とだけ。

 無論、この場所に有るのは、「混沌世界」のコアである。

 

 「ここに有るものを壊せと……………」

 

 純狐が呟いた。

 次の瞬間、純狐は地を蹴り飛んでいった。

 勿論、摩多羅が純狐に回り込み止める。

 

 「何故止めるのです」

 「死ぬ気か、馬鹿め」


 摩多羅の言葉を聞いて純狐が黙り混む。


 「あの場所には上級神が大量に居る」

 「先程の神のような者共がな」

 

 摩多羅が呟いた。

 それを聞いた霊夢が少し震えた。

 霊夢は先程の戦いを見ている。そして、その戦いでハザマと摩多羅の力が拮抗していたのを見ていたのだ。

 無論、今の摩多羅は霊夢よりも数十倍強い。

 その事を理解していた霊夢は、その恐ろしさに震えたのだ。


 「私でもまるで歯がたたないよ」

 「あれは化け物だ」


 摩多羅が続けた。

 そこに霊夢が返す。


 「もしかして、もう行ったの?」

 

 摩多羅は霊夢の質問に頷き、返した。


 「これを見ろ」


 摩多羅が腕を服の裾から出す。

 その腕は、黒い物にまみれていた。

 

 「もしかして、血…………?」


 霊夢は言った。霊夢からすれば、それは血にしか見えなかったのである。

 しかし、そこに純狐が割り込んだ。


 「死の穢れに似ている…………?」

 「ああ、そうだ」

 

 摩多羅が純狐に言った。

 そして、腕をしまって続ける。


 「これは死呪…………… "死"の概念を直接ぶつける、恐ろしい物だ」

 「これは弾いた時に掛かった物だ」


 それを聞いて、霊夢が首を傾げた。

 

 「概念……………?」


 霊夢はシステムについて殆ど知らなかった。

 無論、システムの存在すら知らなかった。


 「システム上に存在する状態(state)情報の事____」

 「いや、お前は知らないか」

 

 だからこそ、摩多羅はここで言葉を切った。

 そして、システムについて説明を始めたのだ。


 「システムとは、世界を情報で表した物で_____」


 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 「……………まあ、分かったわ」

 「そうか」

 「それにしても、それをどこで知ったの?」


 誰もが気にする事だった。

 摩多羅は異界の神では無いし、知れる筈は無いのだ。


 「それは、この世界の中心____」


 「"ワールドデータ・ストレージコア"で知ったことだ」

 「一回だけ潜入に成功し、文書を読んだのだよ」


 そう言って摩多羅は更に紙を取り出した。

 そこには、摩多羅から聞かされたシステムの事がびっしりと書かれている。

 

 「勿論、私はここまでしか知らないがね」

 「十分よ。私たちは、知らなかったのだもの」


 そして、摩多羅はそれを聞くと言った。

 

 「概念とは、生物や物質の情報に付与される情報の一種だと説明したな?」

 「ええ、"生"や"死"よね」

 「実際はもっと有るがな」


 そして、そこまで言って、一瞬間を置いた。

 

 「死呪とは、"死"の概念の塊」

 「その"死"を飛ばされると…………」

 「どのような生物であれ死亡する」


 霊夢は驚きを隠せなかった。

 摩多羅はそんな技を受けて帰ってきていたのだ。

 

 「異界の神は生死の概念付与を無効にする」

 「だからこそ、奴等は通常の攻撃では倒せないのだ」


 霊夢は頷いた。

 あの時、霊夢が放った全力の一撃を耐えて見せた神が居たのは、それが原因だったのだ。

 生死の概念がない相手に、物理攻撃によるダメージが入る筈がなかった。


 「上位神が使うのは、直接概念を付与する攻撃」

 「つまり、全ての攻撃が死呪となる」

 「一撃でも当たれば即死」

 「しかし、私のようにシステムに認められた者であれば問題はない。自分でそれを上書き出来るのだから」


 霊夢はただの人間だ。

 つまり、摩多羅のように魂を吸収し、理の力を手にいれなければなかったのだ。

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