23 システム
「なあ、あんたは一体」
俺が聞くと、彼女は答えた。
「………後で話しましょう」
彼女は一言残して家に上がっていく。
どこか博霊神社を思い出させる。
「さあ、座ってください」
俺と彼女は畳に座った。
「さて、どこから話しましょうか」
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「では、私の事から説明致しましょう」
彼女は少し間を置いて言った。
「私はシオンと申します」
彼女____シオンが言う。
「少し質問させてくれ。何で俺を助けた?」
「あなたに死なれては困るからです」
シオンは俺が最初に言ったときと変わらないように答えた。
「俺と異界の神々は敵同士だ。助けられる筈がない」
それを聞いたシオンの瞬きが早くなった気がした。
少し目も細くなった気がする。
「長くなりますが、お話ししましょう」
「遥か昔より続く闘争を」
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「元々、私達は一人の神の元に付いていました」
「創造神様、そう呼んでいました」
そこで彼女は少し目を閉じた。
「しかし、ある日私達を二分する大きな事件が起こりました」
「一部の神が創造神様に離反を起こし、世界を侵略し始めたのです」
「侵略され"混沌"に混ぜられた世界はこれで716万………」
混沌とはあの赤い空の世界の事だろう。
それにしても、716万か…………
途方もない数の世界が侵略されていたんだな。
「侵略された世界は例外なく破滅の道を歩みました」
「恐らく、あなたが居た世界も、同じ道を辿るでしょうね」
悲しそうにシオンは言った。
「今、我々は二つの勢力に分かれています」
「一つが、世界を保存し継続させようとする神々」
「一つが、世界を無に還し一から作り直そうとする神々」
俺は驚きを隠せなかった。
これまでこのようなことは知らなかった。知った瞬間、全てが吹き飛んだような気がした。
「私は継続派。彼____ハザマは回帰派」
「ハザマも最初は継続派でした。しかし、我々の規則がそうさせなかった」
俺は考えた。
ハザマが俺を「敵でなければ」と言っていたのは、そういうことか。
「世界は一つの"システム"で動いています」
「あなた方の世界も、勿論他の世界も」
「システムとは言わば世界の情報の図書館。世界の情報全てがデータで表された巨大なコンピュータ」
「あなたが見ている物も、言ってしまえばシステムで構築された数字の羅列。そして、私も、あなたの存在もシステム上ではただの数字の集合体」
俺は話に着いていけなかった。
少し分かった事と言えば、世界は情報の固まりだって事ぐらいだ。
「システムの中で、我々、神はランクが決まっています」
「神は永久の時を生きるもの。生きた時が長ければ長いほど力は強くなる」
「神の位階はピラミッド状になっています」
「上級であればあるほど少なく、下級であればあるほど多く神は存在します」
ここは中々分かった。
俺の頭に浮かんだのはインダス文明のカースト制度だった。
「基本的には神はどこかの神に仕えます」
「この私も仕える身なのですから」
「そして、上位の神には基本的に逆らえない。だからこそ、ハザマは自分の意思と関係なしに回帰派になってしまった」
厳しい制度だ。
俺が過ごしてきた環境とは違いすぎる。
「話を戻しましょう」
「創造神様は我々の二分された勢力に手を加えなかった」
「創造神様がその気になれば、これまでの事を全て無かった事に出来る。それこそ、全ての世界を一瞬で無に還す事も可能なのです」
「だからこそ、創造神様は手を加えなかった。そのまま傍観していた」
「そして、実質的に我々のトップが創造神様の側近12柱、最高神達になりました」
「最高神達はやはり分断されたまま。そのまま部下達も巻き込んで対立を始めた」
「私の仕える神の元を辿れば最高神の一人に辿り着きます。全ての神___創造神様を除き__に共通する事です」
「だから、私とハザマは対立した」
「システムの規則に縛られた故の運命です」
シオンは拳を握りながら言った。
「一つ、この状態に決着を付ける方法があります」
俺はそれを聞いて意気込んだ。
方法さえ分かればこっちのものだ。
「継続派か回帰派、どちらかのリーダー…………… 最高神が消滅すること」
「創造神様は消滅しても作り直せます。我々は困りません」
俺は唸った。
今分かった事で、神に勝つことが難しくなった。
俺のシステムに支配されているらしい。つまり、システムとより深く関わる最高神は滅ぼせる確率は殆どない。
「あなたはいつかこの状況を打開する切り札的存在になる。それまで死なれては困るのです」




