22 霊斬の神
「行くぞ!」
俺は走り出した。
水晶の森の更に奥深くに走った。
「セイッ!!」
俺は妖精と神の前に割り込んで刀で神を斬り付けた。
「早く逃げろ!」
「え、えっと」
「早く!」
俺の言葉を聞いた妖精が一目散に逃げていく。
俺は目の前の神を凝視し、合間見えた。
俺と同じく刀を構えた壮年の男だった。
その神が持つ刀は真っ赤に染まっている。
血ではない。まるで、その刀が高温に熱せられているような。
「ほう、刀使いか」
神が口を開いた。
「珍しい。お前とは中々楽しめそうだ」
刀を構え直す神を見て、俺は言葉を返した。
「あんたとは初めて会ったが、悪いけど倒させてもらうぜ」
その言葉を聞いた神が笑う。
「面白い。やってみろ」
「俺はハザマ…………… 霊斬のハザマ」
「辰だ」
俺の言葉を聞いたハザマが刀を持ち直した。
「では行こう、辰………… 参る!」
その言葉が終わるや否や、ハザマが動いた。
早い!
俺が戦ってきた誰よりも!
「シッ!!」
ハザマの攻撃を刀で受ける。
流石に俺の刀は破れないようだ。
しかし、その早さは流石の物。
ハザマが動く度に、空気が動く轟音が響く。
「セイッ!!」
俺も負けじと打ち込む。
ハザマは両手持ちではあるが俺は片手持ち。切り替えの速さには自信がある。
「中々の速さだ!」
「いや、そっちこそ!」
俺達は熱中していた。
殺し合う敵同士だが、俺達は戦いを楽しんでいた。
俺は時には能力を使って刀を受け流した。
「戦いにくいな…………」
自然と俺の口から漏れた言葉をハザマが聞いた。
この森は障害物が多すぎる。
「分かった。離れていろ」
ハザマがいきなり刀を地面に突き刺した。
すると、これまでデコボコで斜めにもなっていた地面が平たくなっていく。
勿論、木も消え始めた。
数秒後、そこには平たい地面が広がっていた。
「流石神だ、これくらいお手のものか」
「どうだ? これで戦いやすくなっただろう」
俺は頷いた。
そしてその直後、俺達は刀を交差させて鍔迫り合いに持ち込んだ。
「やはり、敵なのが惜しいほどの強さだ」
「そうだな、俺もそう思うよ」
戦いながら会話さえ交わせるほど仲は良くなったが、それでも敵同士なのは変わらない。
いつかどちらかが死ぬ。
それ以外の結末は許されない。
「ハッ!!」
強い気迫と共にハザマの一閃が入る。
俺はサイドステップで避け、振り終わったハザマに一撃。
周りの木が倒れているのが分かる。
まるで、刀の刀身が伸びたように。届かないはずの場所の木が倒れている。
何らかの力が影響しているのだろう。
もしかしたら、刀の刀身が10キロとかになるかもしれない。
案外その可能性が捨てれないのが異界の神々の恐ろしい所だ。
「クソ…………」
俺はバランスを崩した。
後ろから押されたような感触がした。
そのまま地面に転ぶ。
「楽しかったぞ。さらばだ」
ハザマの声が聞こえる。
そのまま最後の一撃。
俺に振りかぶられた刀が俺を真っ二つにするところまで想像できた。
しかし、いつまで経っても俺に痛みは無かった。
起き上がって見ると、ハザマの刀が手で押されていた。
刀を抑えたのは一人の女性だった。
女性からも異様な力を感じる。
異界の神々のように感じるが、まさか俺を助けるはずがない。
女性を見たハザマが叫ぶ。
「シオン…………… 何故だ」
「すみませんね、ハザマ。この人は私が預からせて貰います」
言葉を普通に交わしているところを見るとやはり彼女は異界の神のようだ。
まさか、そんな筈はない。
異界の神は敵であり、仲間ではない。
助けてもらえる筈もない。
「少し待っててくださいね」
彼女は俺の手を持つと呪文のような物を唱え始めた。
「teleport command:my world」
「teleport object:command call unit」
「class4 priority unit call:execution」
彼女が長い呪文を早口で捲し立てる。
それが終わった瞬間、俺は別の場所に居た。
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「ここなら安全ですよ」
どこか庭のような場所だった。
近くには和風の木像建築が立っている。
「なんで俺を助けたんだ?」
「貴方は殺されてはいけないから」
俺には理解できなかった。
まるで、俺の未来を見ているような発言だった。
「詳しい事は後でも良いでしょう。さあ、上がってください」
彼女が歩き、その後ろを俺も歩いた。




