20 計画
「何だったんだ、あれ」
「多分、この辺の探索ね」
神社の屋根の上だと不安定なので下に降りる。
それにしても、霊夢が入ってきてくれなければ最悪殺し合いに発展していた可能性がある。
俺は幻想郷に来てから殺し合いは多く経験している。
実際に殺しはしていないが、実際に命を賭けた戦いをしてきた。
それにしても、ナイフか。
いきなり飛んできたときは何事かと思ったものだ。
それよりも、純狐が心配だ。
早く戻ろう。
「ああ、もう入っても良いわよ」
部屋に入ると、畳に横たわる純狐の姿がある。
軽く寝息が聞こえる。息はあるようだ。
「どうしたんだ、これは」
「どうしましょう………… 戦力が欠けたわ」
現時点で、かなり危険な状態に俺達が立たされていることは確かだ。
純狐が欠けてしまっている今、俺達の戦力は大幅に下がったと言える。
最悪俺が居れば神は消滅させれるが、問題はそれ以外だ。
戦いで決着を着けることが出来る異界の神々と違って、幻想郷の住民達とは対話で解決する必要がある。
無闇に殺してしまえば、異界の神々に対する戦力を減らしてしまう事になる。
現時点でまともに神と戦えるのは俺と摩多羅ぐらいのものだが、これから霊夢達も神に対抗できる力を手に入れるだろうし、今戦力を失うのは痛い。
最終的には異界の神々の頂点に居座る神を消滅させる、もしくは和解する必要があると考えると戦力はいくら有っても足りない。
しかも、現時点で生存者を咲夜以外見付けられていない事を考えると、残る生存者の数は百以下だろう。
幻想郷の住民に保護された別世界の人間も含めても、300人程にしかならないだろう。
幻想郷に戦える住民がどれだけ居るのかは不明だ。
摩多羅のようにこれまで全く姿を現さなかったのも居るし、そもそも幻想郷の全てがこの世界に統合されたのかも不明だ。
「…………どうやら、内包する力が低下しているようね」
「霊にとって自分の力は生命のような物よ。この特徴が純狐に当てはまるかどうか分からないけど、取り敢えず放っておけば力は回復する筈よ」
力が低下、か。
気分を悪くしたために力が低下しているのだろうか。
どうせにしろ、霊夢が言うように放っておくしかない。
「さて、これを見て」
霊夢が別室に行って一枚の紙を広げた。
「これは?」
「幻想郷の地図よ」
霊夢が地図の一転を指差しながら言う。
「ここがこの神社。こっちが人間の里。ここが妖怪の山____」
「で、これがどうかしたか?」
俺は聞いた。
「えっと………… 純狐の友人?に来てもらう予定なのよ」
「純狐の友人?」
「そうね、ヘカーティアと言うのだけど………… 地獄の女神よ」
地獄の女神?
純狐が神とも仲が良いのか?
いや、純狐は最早神に近い存在だ。神と仲が良くても仕方がないかもしれない。
「で、そのヘカーティアなのだけど…………」
「純狐じゃないと呼べないのよね」
ああ、そうか…………
俺達はヘカーティアの居場所を知らない。
ヘカーティアの友人である純狐しか呼び出せないのは納得だ。
最も、俺はまずヘカーティアに会ったこともないのだが。
「で、次に、紫と摩多羅とも合流するわ」
「摩多羅は戦力になるし、紫は情報収集得意そうだしね」
まあ実際、紫はスキマ?を使ってどこにでも行けると聞いた。
情報収集は得意そうだ。
それに、摩多羅は異界の神々に対抗する戦力となる。
現時点では俺しか戦える人間がいないため、摩多羅が加入するのはとても嬉しいことだ。
「で、永琳達とも合流したいのだけど…………」
「残念だけど、永琳達が居る"迷いの竹林"が何処にあるか不明なのよね」
全くだ。
ここでは幻想郷の大地がごちゃ混ぜになっている。
その迷いの竹林とやらを見てもいない。
「永琳達もとても仲間に引き込みたいわ」
「元は月の民だもの。科学力も高いわ」
「それに、永琳は不死の薬を飲んでいるしね」
不死の薬?
また物騒な物を。
まあ、月の科学なら作り出してもおかしくはない。
それにしても、永琳は不死だったのか。霊夢とも知り合いだったみたいだし、一回どこかで会っているのだろうか。
「まあ、そんなわけよ」
「明日から、探しに行くわよ」
「そうだな」
俺としても探したいものだ。
仲間は多ければ多いだけ良い。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「ヘカーティア!」
「見ているか!」
その日の夜だった。
力が回復した純狐は、ヘカーティアを呼んでいた。
「待ちくたびれたわよん」
「面白い事起こってるわね」
突然として神社の外に女が姿を表す。
そう、彼女こそがヘカーティアである。
一部からは「変なTシャツヤロー」とも呼ばれるが、実力は確かである。
地上、月、異界の地獄を司る神である。
「さあ、私の友人を痛め付けた礼を返してやるわ」




