18 不死の理
「殺しても復活するとは」
俺でも驚いた。
確かにレーザーが心臓を貫いていた筈だ。
もしかしたら、心臓すら無いのかも知れないが。
「お前たちは勝てない!」
威張る少年。
しかし、俺には一つ引っ掛かるところがあった。
それは、少し前の戦い。
あのときは、気絶させれたのだ。
「ハッ!」
俺は少年を切り刻んだ。
しかし、何度やっても生き返る。
まるで、不老不死。
俺は焦った。
このままでは勝てない。何か、いい手段はないか。
「喰らえ!」
少年が砲台から再びカッターを放出する。
先程より数が多い。
まさか、あれは本気ではなかったのか?
俺は刀でカッターを弾き飛ばし少年に肉薄する。
そのまま刀で首を落とす。
しかし、首は落ちた瞬間から再生を始め、あっという間に元に戻ってしまう。
「くそっ」
俺は急いで後方に飛んだ。
俺が先程まで居たところにカッターが刺さっている。
飛んで正解だった。
「行くわよ!」
霊夢が俺に割り込んで少年を殴る。
骨が折れたような音が聞こえたが、やはり再生したようで、そんな素振りは見せていない。
「純狐!」
霊夢が呼び、純狐が少年の近くへ接近する。
そして一発。
あれは確か、純狐の能力が入った攻撃だ。単純な拳だが、威力は俺達の中でもトップクラス。
「効かない!?」
やはり、純狐の放った一撃も回復された。
あの一撃で殆どの身体を持っていかれていた筈なのに。
このままでは歯が立たない。俺達に次々に攻撃され、相手は全く動けないが、いつかは絶対に俺達が負ける。
俺達の体力が尽きれば最後、相手のターンが永久に続くだけだ。
どうやったら良い!?
「辰! 能力を!」
そうか、能力!
俺は霊夢の叫びで思い付いた。
俺の能力を使えば、あいつらにダメージを与えれる筈だ!
「オラァ!」
能力を発動して斬りかかる。
当然、少年は動こうとしない。回復できることを当然のように思っているからだろう。
しかし、俺の能力が発動した今、その回復も無効だ。
奴らは根源と理の力で活動している。
なら、その力を直接封じてしまえば良い。
「回復出来ない!?」
驚く少年。
当たり前だ。回復できる理を無効にした。これで、あいつは回復は出来ない。
少年の姿が薄れている。存在が薄れてきた証拠だ。
こいつはもうすぐ消滅する。
「死」ではない。「消滅」。
神に死はない。つまり、消滅しか道がないのだ。
「……………」
やがて、少年は塵となって消えた。
後には、小さな銀の宝玉が残されていた。
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「この宝玉、どうする?」
俺は宝玉を拾い上げて聞いた。
銀色に光輝く宝玉だ。
特に価値は無さそうに見える。
「…………魂の過剰エネルギーの固形物だな」
純狐が答えた。
過剰エネルギー。確か、摩多羅が集めていたのもそれであった。
摩多羅に渡せば喜んでくれるかもしれない。
「辰、砕いてみろ」
いきなり砕け、と言われてしまった。
言われるままに宝玉を掴んで砕く。
すると、宝玉から白い光が出てきて、俺の手に吸い込まれる。
これは、摩多羅と戦ったときに見たものに似ている。
俺の体の底から力が湧き出る事が分かった。
これが、魂の力。
過剰エネルギーであるため不快感も感じない。
「力が伝わってくる」
摩多羅が使っていたものと同じ感覚がする。
世界の底に直接触れた感覚。今も、ひしひしと伝わってくる。
「ほう」
純狐が驚いたように見てくる。
「これ、私にもできるかしら」
霊夢が首を傾げた。
「出来るだろう。力を取り込むなら人間でも簡単だ」
純狐が言う。
これで、俺達は一つの可能性を手に入れた。
この力を全員が使えるようになれば、神に対抗するのも簡単になる筈だ。
「さあ、戻ろう」
俺は皆に伝えた。
神社に戻り、今日が終わるまでそこにいる。
そして、明日から他の住人とも落ち合い、本格的に神へと立ち向かう。
それが俺達の予定だった。
最初に摩多羅、紫。
その二人と落ち合い、戦力を増強する。
それが、俺達の考えた予定だ。




