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東方亜幻空 ~Fantasia of another sky  作者: とも
二章 「虐殺異変」ACT2
18/56

17 機砲の神

 「呆気なかった」


 本当に、呆気なかった。

 いくらなんでも弱すぎる。

 たった一発で倒せるなんて、思ってもいなかった。


 「どうやら、勘違いをしていたようね」

 「私たちは、神を過大に強く思っていたのよ」


 そうか…………

 摩多羅から聞いた話から、異界の神々は強いものだと思っていたが、少し思い込みが有ったようだ。

 

 「それか、本当に雑魚の神だったのか」

 

 それでも、普通の人間とは比べ物にならない力を持っていた。

 あの上にもっと強い神々が居るのだろうか。

 

 「………………」

 「純狐? どうした?」


 純狐の様子が変だ。

 まるで、何か恐ろしい物を垣間見たような。


 「………離れよう」

 「胸騒ぎがする」


 純狐が来た道を戻り始めるので俺達もそれに付いていく。


 「それで、どうしたんだ?」


 十分に戻ったあと、俺は純狐に聞いた。

 

 「奴ら、穢れが全くない」

 「生も死も、存在しない」


 いや、当たり前じゃないか?

 神なんだし、生死の概念が無くても良いだろう。


 「いや。少量の死の穢れが貯まるはず。生物を殺せば穢れは放出される」


 しかし、俺には引っ掛かる部分があった。

 俺たちと根本的な部分が違うのであれば、そうであっても可笑しくはない。


 「…………そう思いたい」


 それにしても、何で純狐はこんなにも恐れているんだ?

 穢れが無くてもここまで恐れる必要はない。

 俺が首を傾げていると、霊夢が耳打ちしてきた。


 「純狐はね、穢れの事を良く知ってるのよ。だからこそ、恐れる訳」


 そうか。

 知ってるからこその反応だった、と言うわけか。


 「…………やっぱり、生存者はいないか」


 神社へ戻る途中で生存者を探していたが、生存者どころか死体すら見つからない。

 恐ろしいほど静かだ。

 たまに、戦闘音のような物が聞こえるが、すぐに止んでしまう。

 悲鳴すら聞こえずに再び静寂がやってくるのは恐怖以外の何でもない。

 まさか、神々に片っ端から殺されているのだろうか。

 そして、俺達が神に勝てたのは偶然だったのか…………?


 「いや、そうじゃないな」


 無理やり自分に言い聞かせた。

 認めたくはなかった。

 自分が勝てたことが全て偶然であるとは認めたくはない。


 「…………本当に静かだ」

 「そうね………… 不気味よ」


 これが本当に現実かと疑いたくなる。

 空は紅に染まり、大地は入れ乱れ、静寂が世界を包む。

 ここに長くいれば気が狂いそうだ。早くここから脱出しなくては。

 

 「くらえ!」


 次の瞬間、俺の横を円状の物体が通り過ぎた。

 俺は瞬時に振り返り、それを視認した。

 同時に霊夢と純狐も振り返る。


 「くそっ、またかよ」

 

 今度は地面に少年が立っていた。

 鋼鉄の地面には砲台のような物が設置されている。

 どうやら、さっきのはあの砲台が打ち出したようだ。

 良く見ると、砲身は細く円を描いている。やはり、カッター状の物を打ち出すようだ。


 「良くもやってくれたな!」


 恐らく、さっきの神の事を言っているのだろう。

 そう思った瞬間、砲台が火を吹いた。

 円のカッターが凄まじい速さで襲い掛かってくる。

 しかし、俺にはこの刀がある。

 

 「甘い」


 俺はカッターを刀で弾き返してやった。

 少年の方に跳ね返されたカッターは砲台を切り刻み消滅した。


 「自分の放った弾で自滅するとは」


 純狐が呆れたように言う。

 まさしくそうだ。

 異界の神々は少々気が抜けているようだ。


 「さて、相手が弾幕を使うなら私も使うわよ!」


 霊夢が意気込んで叫ぶ。

 

 「おう、やってやれ」


 俺の言葉を聞いた霊夢が弾幕を放ち始める。

 あれは………… お札?

 青色のお札が少年目掛けて飛んでいく。

 しかし、流石は神。例え少年であっても軽い動きで避けて見せた。

 だが、弾幕はそんな物じゃない。

 青色の札は避ける少年を追い掛ける。

 

 「卑怯だぞ!」


 何か叫んでいるが気にしない。

 霊夢はそのまま弾幕を放ち続ける。


 「卑怯なのはどっちだか」


 純狐がさらに呆れたように溜め息をつく。

 俺も内心呆れていた。戦略性も何もない行動ばかりしかしない神々に呆れていた。

 そして、避け続ける少年に構わず霊夢は札を放ち続ける。

 やがて少年を取り囲むように札が集まり、細く棒状になったかと思うと一斉に少年を貫いた。

 血が飛び散っている。正直、見ていられる光景じゃない。


 「殺ったわ」


 漢字が違うと思う。実際に殺っているのだが。


 「やっぱり、弱いわ」


 俺も改めて実感した。もしかして、ここら辺には下級の神しか居ないのか?


 「帰るわ」


 純狐が手招いてくる。

 また一人倒したし、そろそろ帰り時だ。


 「待った!」


 背後から声がする。

 振り返ると、少年の神がそこに立っている。


 「まさか、殺した筈では」

 「残念だったな! 神は死なないんだよ!」

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