16 緋色の世界
「そろそろ帰ろう」
「ええ、また明日」
純狐が去っていく。彼女が帰るのは一体何処であろうか。俺達は知ることは出来ない。
俺達は神社に戻った。
「さて、ご飯にしましょう」
「ああ」
霊夢が用意をしている間、俺は空を眺めていた。
夕焼けの空だ。昨日の戦いが嘘のようだ。しかし、まだ俺達にはやることが残っている。異界の神々と戦うのが俺達の使命だ。
「出来たわよ」
霊夢が呼んでいる。
神社に戻り座った。
そのまま箸を手に取った。
「何!?」
突如、辺りが暗闇に包まれた。
俺達は急いで外に出た。
空が黒い。まるで夜のようだ。いや、夜のそれよりも暗い。
何も明かりがない。灯りは、俺達の手に握られたカンテラだけ。
そして次の瞬間、暗闇に閃光が走った。
空に魔方陣が描かれている。発光しているようだ。ぼんやりと光る魔方陣を俺達は眺めていた。
「霊夢、辰!」
純狐の声だ。
俺達は振り返った。そこには純狐が居る。
「純狐!? どうしてここに……………」
「この状態だ。帰ってくるだろう、普通」
暗闇に包まれた空。
まさか、もう神々が攻めてきたのか?
俺は腰に下げたままの刀を手に取った。いつでも対抗出来るように。
そして次の瞬間。
魔方陣の下に人のような物が見えた。
遠かったので良くは見えなかったが、あれは明らかに人だ。
直後に姿が消え、声が響き出す。
[穢れし世界の民よ]
[浄化を受け入れよ]
声が止み、次の瞬間。
再度人のような物が現れた。
今度ははっきりと分かった。
女だ。
宙に浮いている。そして、女が手を掲げた。
その瞬間、眩いばかりの光が溢れ出す___
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
俺は光で気を失ってしまった。
目を覚ますと、霊夢と純狐が倒れている。
俺は二人を揺すって目を覚まさせた。
「まさか、もう来るとは…………」
「というか、ここは一体…………」
俺が目覚めたのは確かに神社だった。しかし、何もかもが違った。
空は赤く染まり、赤い光が照らしている。
音は全く聞こえない。虫の鳴く音すら。風も感じない。
まるで、時が止まったようだ。
そして、神社の鳥居の向こうにはあり得ない風景が浮かんでいる。
宙に浮いた岩石、そこらに散らばる水晶。
長い階段はそこにはなく、代わりに混沌の世界が広がっていた。
「何だここは…………」
俺は呟いた。
そして、その答えを言うように声が聞こえてくる。
[ここは断罪の世界]
[あなた方の世界は破壊された]
[浄化を受け入れよ]
「どうなってるんだ…………」
俺は口にした。
もう声は聞こえない。
何も聞こえない。霊夢と純狐も黙っている。
「辰、行きましょう」
「そうね、霊夢」
「行くって、何処に?」
「少し探索するわ」
なるほど。
ここを探索するのか。
ここは謎の空間だ。
神社は残っているが、神社の周りは見たこともないような世界だ。
「さあ、行きましょう」
霊夢が水晶の大地へと向かう。
それを追い掛ける純狐。
俺もそれに続いた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「すげえな」
「ええ………… 何これ」
俺達は真っ直ぐに飛んでいた。
複数の世界がごちゃ混ぜになったような世界だ。
まさか、ここにはこれまで神々が破壊してきた世界が集合しているのか?
そして、俺達の目前には謎の巨大な物質。
「これは"緋緋色金"と呼ばれる伝説の金属だ」
純狐が答える。
それにしても、まさか伝説の金属までがここにあるとは。
おかしなものだ。
「さて、次に行きましょう」
俺達は迂回して進んだ。
海や砂漠までもがこの世界には入っているようだ。
「止まれ!」
前の方から声が聞こえてきた。
見ると、少女が一人浮遊している。
俺は問い掛けた。
「私か? 私は∀∃∌∇∈!」
理解できない単語が聞こえた。
どうやら、俺達には意味不明の単語らしい。
「私は神の一人! ここでお前らを殺す!」
やっぱり敵だったか。
俺は刀を抜いた。
霊夢も棒を構え、純狐は手にオーラを纏う。
それを見た少女は手を合わせ、広げた。
そこから電撃が走り、槍が生まれる。
「成る程、神の力か」
俺が感心していると、少女が高速で向かってくる。
槍を刀で弾き返し、間合いを詰めて一撃。
「まさか、ただの人間が____」
「悪いな。眠ってもらうぜ」
一瞬の隙に俺達は少女を取り囲んで一撃を加えた。
その瞬間、少女は墜落する。
「終わったか」
「それにしても、弱すぎるわね」
「下級の神なのだろう。しかし、それでも普通の人間には反応出来ない速度だ」
こうして呆気なく神との戦闘は終わった。




