14 異界の神々
「さて、事の発端から説明しよう」
話し出す摩多羅。
「辰は知っていると思うが、我々がその勢力の存在に気が付いたのは1ヶ月前だ」
「幻想郷に流れてきた人間からその存在を知った」
「彼が言うには、"奴等は俺達を襲ったんだ"、"崩壊した国もある"らしい」
「彼は直ぐに死んでしまったが、我々は彼が話した事を調べることにした___」
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摩多羅が話したことは驚きのものだった。
第一に、その存在が他の世界の神々であること。
その神達が恐ろしく強いこと。そして、その神々は世界を順番に破壊して回っているとのこと。
そして、次に襲われるのがここである事だ。
「奴等に対抗するため、我ら賢者はある方法を思い付いた」
「それが今回の異変。魂が放つ過剰エネルギーを収集し、その力で神々と戦うのだ」
確かに、摩多羅のあの力は強大だった。
俺の能力が発現していなければ、絶対に死んでいた筈だ。
「そこで、私が選ばれた」
「力を集める事に適した能力を持つ私が、力を行使する事になったのだ」
「そこには元々の実力も入っているがな」
まあ、俺の記憶を戻したあげく、加護まで与えたその力は称賛せざるを得ない。
「恐らくだが、神々がここに侵略しに来るのは一ヶ月後。例え神と言えど、世界を越えるのは難しい」
「それまでに準備を整える必要がある。死んだ者は私の力で蘇らせた。戦力は十分な筈だ」
恐らくではあるが、幻想郷の住民に外の世界の住民を保護するように伝えたのは紫だろう。
霊夢の話からすれば、紫はそこそこ名の通った賢者らしい。そんな紫の話なら誰でも信じるだろう。現に、霊夢も俺を保護しようとしていた。
外の世界の住民を使って対抗するつもりだったのだろう。外の住民は能力が発現すると言うし、神々にも通じると思ったのだろう。
「正直な所、その神々については全く分かっていない」
「解明されているのが、我々とはまた違った存在である事だ」
「神には起源が存在する。生まれた理由がな」
「しかし、その神々は全く別の方法で誕生しているらしい」
「依然にせよ、我々の敵だ」
「幻想郷を崩壊させる事は出来ない」
力の入った声で言う摩多羅。
どうやら、戦う事になるようだ。幻想郷の賢者でさえ分からないような奴等と、戦う……………
心配だ。いくら俺が強大な能力を手にしたとはいえ、その力が通用するかどうか。
「唯一今すぐに分かる情報がある」
何だって?
まさか、突撃するとか言わないよな。
「私の力だ」
「はあ? ふざけてるの?」
霊夢が言う。実際、俺も言いたい。摩多羅はその神々とは無関係の筈だ。
しかし、摩多羅は気にせず続けた。
「魂を奪う禁呪、名を"魂奪の儀式"と言うが、この儀式は彼らの物らしい。もっとも、この儀式を教えてくれた人間は既に死んだのだが」
「つまり、私の力は彼らの由来となる」
「へえ………… じゃあ、調べれば良いわけね」
「私が解析しましょうか?」
霊夢と永琳が同じような事を言っている。
純狐はさっきから黙ったまま。何か考えているのだろうか。
「いや、それには及ばない。解析なぞ出来るはずがないからだ」
「我々とは別の理念で稼働する力だ。我々では解析は出来ない。この力に精通した者が居れば、我々でも十分に使えるだろう」
では、摩多羅は使えないのか?
さっきから力を発揮していたが。
「否、私は行使できる。自らの力となったのだから自然に行使できるのだ。残念ながら、解析は出来ないが」
「分かるのは、この力が世界の根源、理に作用する力であることだ」
「辰、お前の刀はあの時初めて傷が付いたが、それもこの力のせいだ」
そうか。俺の刀がいくら丈夫であっても、理に作用するような力は相手できないのか。
「同じ根源の力を行使する彼らには、この力で対抗するしか手段は存在しない」
根源、か。
また理解不能な言葉が出てきた。
俺が思うに、その神々は根源由来のものだろう。そうとしか思えない。
「彼らは、根源の力によって異常な力を手にして居るらしい」
根源の力。
根源がどのような物であるかは理解できない。
しかし、その力を行使する神々がどれ程強いのかは想像できる。
俺の能力を使えば、渡り合う事も出来るだろう。しかし、それ以外、霊夢や永琳、純狐達は死んでしまう可能性がある。摩多羅は同じ力を持つのだからいいとして、持たない者達はどうすれば良いのだろうか。
「残りの時間は少ない。私は彼らについて探ってみるが、お前達は準備をしておいてくれ」
「他の勢力にもこれは伝えてある。今が団結するときだ」
俺は戦う。
勝てなくても、あがき続けてやる。
摩多羅と戦った時も、そうしたのだから。




