始まりは少女の家出(2)
ㅤバッと体を起こす。
ㅤ窓から見える風景は、綺麗な秋空にアーメリアの街並み。
ㅤ道の脇に等間隔で植えられた木々は、鮮やかな赤や黄色で秋を感じさせてくれている。
「そうよ。何やってんのあたし。家出すれば良いのよ。自分の人生、勝手にさせて頂きますっ」
ㅤそそくさとベッドから降りて、クローゼットの中からバックを取り出す。やっぱり、ショルダーバックかな。
ㅤそもそも何で近所の年下の子供達が15歳になって旅に出たりしてるっていうのに、この17歳のあたしが我慢して武器屋の手伝いをしているのか。
ㅤ近所の友達は自分の夢である『冒険者』としてこの街を出たんだ。
ㅤ対してあたしは、お父さんは話したら何とかなったんだけど、お母さんがうるさい。それはもう単純に、街の外は魔物が出たりするから。
「女の子1人で危ないに決まってるでしょ!?」
ㅤなんて言っちゃって。心配症なお母さんに何度言っても止められていたんだ。
ㅤ大体小さい頃に意味もわからなく剣の振り方教わったっていうのに、旅に出してくれないとは……あの人の考えがわからない。
ㅤ話を聞いてもらえなくなる前に家出しちゃおうって、なんでもっと早く思いつかなかったのだろう。
ㅤとりあえずカバンの中には何年も書いてきたノート、図書館で 貰ったこの街の周辺の地図。あとは長い間貯金してきたお金……の半分を入れた財布。まぁ、必要な物だけを詰め込んだ。
ㅤもう長年使い続けてきた寝心地の良いベットや布団。少しペンのインクで汚くなってしまったテーブル。この子達ともお別れだ。
「さらばっ」
ㅤバタンっと勢いよくドアを閉めて階段をくだる。
ㅤあと必要なものは…そうだなぁ。食料かな?
ㅤじゃ、冷蔵庫の中を漁りに行こうじゃないの。
ㅤこうなったらお母さんが店番をしている間に、こっそり家を出て行ってやるんだから……!