始まりは少女の家出(1)
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ㅤメルフィア王国、人口約56万人。
ㅤ『冒険者』という者達が多く集まるのと同じく、多くの武器や防具などの元となる鉄の産出国。それはもう、世界で1位2位を争う程。
ㅤそのメルフィア王国で最も大きな街、アーメリア。
ㅤそしてアーメリアのとある武器屋の少女。
ㅤ特別に頭が良いだの、力があるだの、そんな事は全くもって無い。
ㅤただ運が悪かったのかもしれない。
ㅤ逆に良かったのかもしれない。
ㅤそう、彼女によって世界が……
―――
「はぁ……もう、疲れたぁ」
ㅤそんな事言っても別に楽になるわけでもなく、ストンと椅子に腰をおろす。
ㅤいい?ㅤこの世界は15歳になったら家を出て冒険して、自立するのが当たり前。
ㅤ最近はそんな世の中になりつつある。で、あたしは17歳。
ㅤこの歳だというのに、毎日早朝から店の手伝い。それが終わったら、家の手伝い。心底、この生活に飽きました。
ㅤなんて毎日思っているんだけど何が変わるわけでもないし、毎日同じような日々の繰り返し。
「エルシィー!ㅤ休憩とっていいわよ~」
ㅤはぁ……と溜め息をついていたら、店の入り口から顔を覗かせるお母さん。
ㅤこの家、いつからか武器屋になっててね。でもそうしないと、お金が無いみたい。
ㅤお父さんは毎週1日だけ武器屋をお母さんとあたしに任せて王都へ出張。
「あぁ~……あたしも街の外に出てみたいなぁ」
ㅤそんな叶わぬ夢をつい口にしてしまいながら、カウンターの裏から廊下へ。
ㅤこの店は家の隣にあって繋がっている。カウンター裏の廊下は一方通行で、右にしか行けない。真っ直ぐ進めば、リビングへ繋がるドアがある。
ㅤけど 、あたしはその手前の階段をのぼって2階へ。2階はあたしの部屋と、もう2つ空き部屋がたるんだけど……誰も使わないのよね。
ㅤそんな空き部屋に挟まれて真ん中にあるのが、あたしの部屋。階段に1番近い部屋。
ㅤガチャと心地よい音をさせてドアを開けるとテーブルの上に『冒険企画ノート』 みたいな恥ずかしい物が置いてあった。
ㅤあたしが夢見る『冒険者』になったら何処へ行くか、何をするか…など全て書きまとめたノート。
ㅤそれを手に取って、ベッドにダイブする。
「こんなの書いても別に必要無いしなぁ」
ㅤノートを広げたものの、枕に顔を埋める。眠たくなってきちゃった……。お昼だけども。
ㅤどうにかして、このつまらない日々を抜け出したいんだ。切実にね。自分の夢くらい叶えたい。
「ん?あっ、そうか……!」