終
「うぁぁぁあぁぁあぁぁあああっっ」
ㅤ1人の男の苦しそうな悲鳴とも呼べる叫び声が響く。
ㅤ彼の声と共に、周りの建物や地面、ありとあらゆる物が崩れ始めていた。
「いかないでっ!ㅤお願いだから……いかないでっ」
ㅤ空間を破壊する元凶に男は手を伸ばしていた。
ㅤ今にも泣きそうな顔をして、必死に手を伸ばしていたのだ。だが、届かない。
「俺を置いていかないで……っ!ㅤお願いだから、ねぇ……嫌だ……」
ㅤ届かないはずの手を必死に伸ばして懇願する。その声は周りの空間が破壊され、崩れていく音に飲み込まれてしまった。
ㅤ引きちぎれてしまいそうな程、手を伸ばす。周りの破壊音や強い風に声が攫われても、必死で訴えている。吹き荒れている風に逆らうものの、足が前に進まない。求めているモノに手が届かない。
ㅤ彼が必死で求めているモノは、
「ごめんね、大丈夫だから。また今度……」
ㅤそう言い残して綺麗に姿を消した。刹那、周りの崩れていく世界が、狂った時間が、全てが止まった。
「あ……ぁ、あぁぁあああぁああぁあっ」
ㅤ全てが停止しても尚、男は狂ったように叫んだ。声が枯れるだの、涙が枯れるだの、そんな事はどうでもいい。叫んで晴らすしか無かったのだ。
ㅤ何も出来ず、何も伝えられず、愛しいモノを失う事が、どれだけ苦しくて死んでしまいそうなのか。死んでしまいたいのか。殺してほしいのか。
ㅤ――崩れ、狂ったモノは変えられない。