091 斯くも美しき散り花
「口だけは一人前だな」
そうやって挑発するリオン。
「腕っぷしも評価してもらいたいぜ」
「ふん。評価されるほど、貴様の攻撃が強力だとは思えないな」
「だったら喰らって判断しやがれ!」
常夜叉鎚矛を前に突き出した聖人。とても単純な攻撃であり、躱すのは容易であろう。
しかし、リオンは敢えて聖人の攻撃を胸に受けた。リオンの意外な行動に、驚愕の表情を見せる聖人。
「どうした? 浮かない表情だな」
聖人とは打って変わって、攻撃を当てられても表情を崩さないリオンだった。
「避けないとは意外だったぜ」
「私は理由があって躱さなかったのだ。そこを勘違いするなよ」
「で、その理由は?」
「格の違いを見せるためだ」
そう言ったリオンは、常夜叉鎚矛の柄を掴んで、聖人ごと投げ飛ばした。
そして、投げ飛ばされた聖人は空中で体勢を整え直し、受け身の形で着地した。
「恢飢って奴はどいつもこいつも怪力だな」
「貴様ら人間が脆弱なだけだ」
「だが、これからてめえはその見下した者にやられるんだぜ」
「その羨ましい限りの自信は何処から湧くのか訊きたいな」
「俺は何があろうとあきらめを知らないポジティブ野郎だからさ」
ふと、リオンにガクンとした重い衝撃が襲った。不思議に思ったリオンはこの感覚が何かを聖人に問うた。
「なんだ、これは……」
重力に逆らう様な独特な感覚。リオンは融合される前の記憶を辿っても、この感覚に似た物を感じたことも無い。
「どうした? 浮かない表情だな」
聖人はリオンの発言をそっくりそのまま言い返して、思惑通りといった表情でニヤリと笑った。
「っく」
「俺の常夜叉鎚矛の能力は、相手に攻撃を与えるたびに一定の魔力を吸収するのさ」
「くくく……」
突然笑い始めたリオンに不気味さを覚えた聖人。
「な、なにがおかしい」
「私の魔力を吸収するか。なら存分にやるがいい」
罠かもしれないと、聖人は内心思ったが、攻撃を与える絶好のチャンスを逃がす必要はないとリオンの頭を殴った。
鈍い衝撃が聖人に手ごたえを感じさせたが、リオンは何ともないという表情を浮かべていた。
「ウソだろ」
「もっと打ち込んで来い」
聖人は言われるがままに、リオンの頭を殴り続けた。まるで、ゲームセンターのもぐらたたきの様に。
「オラオラオラオラオラオラオラオらあああ!」
常夜叉鎚矛を振りかぶって最後に渾身の一撃を決めた聖人。常人ならば、とうに頭蓋が砕けて、中身が飛び出してしまうだろう。
しかし、リオンは無傷で余裕の表情だ。リオンの魔力を吸収して攻撃力を上げたにもかかわらずだ。
「もう終わりか?」
「クソ!」
「そろそろ、お前にも感じているはずだ」
「何?」
すると、徐々に全身の力が抜けていった聖人は姿勢を崩してその場に座り込んだ。傍から見れば、リオンに跪いている様にも見える。
「形勢逆転……嫌、そもそも形勢は私が支配していたな」
「てめえ、何をした?」
「私は何もしていない。貴様が勝手に果てただけだ」
リオンが聖人の顎を掴んで、無理矢理顎を上げた。
「力が、入らねえ」
「フッ教えてやろう。倦怠感の正体を」
リオンは聖人の腹を蹴り飛ばして、地面に叩きつけた。
「ゲハッ」
痛みを感じて声を漏らす聖人。
「崩壊だ。魔法収容力の崩壊」
リオンは息を大きく吸って、こう続けた。
「貴様程度の未熟な魔法収容力では、私の膨大な魔力を吸収しきれまい」
「パ、パンクか?」
「そうだ。器の受け皿を超えてしまったのだよ」




