088 虚無ニスト
「話す事が無ければ、失礼しますが?」
「待ちなよ。もう少し話そう」
そう言った威吹は指を鳴らした。すると、じいやの志門寺がリオンの緑茶を淹れて持ってきた。
「どうぞ、ごゆっくりと」
志門寺は一礼して、再び部屋の掃除に取り掛かった。本棚の埃を取ったり、不要になった本を一つにまとめて縛っていた。
「………………」
至って普通の何処にでもいる年配のお爺さんだ。あのお爺さんが此処にいる主と同格の力を持った実力者とは到底思えないリオン。何を隠そう、志門寺は140cmの身長しかない。それに、100歳を余裕で越えているであろう年寄りだ。あそこまで機敏に仕事をこなしている体力は何処から湧き出るか不思議で仕方ないといった様子のリオンだった。
「さあ、飲みなよ。毒なんて入ってないから」
笑顔でリオンに話し掛ける威吹。
「では、お言葉に甘えて」
リオンは緑茶に息を吹きかけて冷ました。そして緑茶をすすって喉に流す。
「どう?」
威吹は椅子から乗り出して聞いた。
「美味であります」
「良かった。西洋風の名前からして紅茶派だと思ってたから、安心したよ」
「そうですか」
リオンは緑茶を一気に飲み干して、テーブルの上に置いた。
「前から気になってたんだけどさ」
「なんでしょうか」
「君達って日本で生まれたのでしょ。なんで西洋風の名前なの?」
「確かに私達は日本で生まれました。しかし、融合前の恢飢達が魔法界で収穫されたからです」
自分は魔法界の恢飢であると主張したリオン。
「成程ね。それで、ランクは?」
「ルリ様はDランク同士の恢飢で私を創造したと言っておりました」
「他の二人は?」
「二人共Gランクです」
「Gランク……それで、あの強さか」
「例え弱小恢飢であっても、一度融合すれば魔法収容力が劇的に上昇すると、データに出ております故」
「へー。ルリちゃんってスゴい事してるんだね」
煎餅を食べながら喋る威吹は美味しそうな音を立てて、煎餅を噛んでいる。
「ルリ様は合成恢飢を開発した第一任者ですから……あの方は偉大です」
「流石は、あの魔法学校を史上最年少で卒業した天才少女だね」
威吹は、ラストラッシュが首席で卒業した魔法学校の事を言っていた。
「ルリ様には頭が上がりません」
「向こうはフレンドシップに接したがるけど、君にとっては到底無理だよね」
「私の生みの親ですから」
「僕には親がいないから、そういうのよく分からないけどさ……友達感覚で接したらダメな事ぐらいは理解出来るよ」
「確か、戦争で亡くなったとお訊きしましたが」
「邪悪な神様と刺し違えてね」
何処か、悲しげな表情を見せる威吹だった。




