060 真相に到達する可能性
「朝ですよー!」
神代はフライパンをお玉でカンカンと鳴らした。ぐうたら二人組を起こすためである。
「起こし方が古典的過ぎるっつうの!」
煎餅布団から起き上がった聖人は両耳を防いで鼓膜を防御した。
「一体何事であるか」
同じく煎餅布団の中で寝ていたアッシュが大あくびをしながら布団から出てきた。
「朝御飯出来たわよ」
あの味噌汁事件以来、調理係の担当は神代に決定したのだ。それ故、聖人はもっぱら買い物に行かされている。行きつけのスーパーでは店員さんに主夫と間違われている程に。
「ふぅああああー」
椅子に座って背伸びをする聖人。
「ニュースでさ」
神代はいきなり会話を始めた。
「生徒会長を拉致した犯人が身代金を要求したって報道してたわ」
「そうなのか」
聖人は、あまり関心が無さそうな言い方をした。
「それでね。身代金額は一兆三百億だって」
「そんな金払えるのか?」
「霧登家は世界でも有数な貴族だから……払えると思うわよ」
「へー」
あくまで興味関心は無いといった様子の聖人である。
「それから今日の修行だけど」
神代は少し間を開けて言ったのだ。
「知ってるさ。卍堕羅質屋の賞金額ランキング上位を片っ端から退治していくんだろ」
聖人はぶっきらぼうにお茶漬けを喉に流し込んだ。
「いいえ、予定変更よ。これからの修行は生徒会長の行方を探す事に専念するわ」
神代はそう述べた。
「はぁ……? そんなの警察に任せればいいじゃねぇか」
「この事件は裏でエクソシストが糸を引いてると思うの」
「んな訳無いだろ。大体証拠はあるのかよ」
「これを見て」
テレビをインターネットに繋げた神代。聖人には見覚えのない検索サイトを使っていた。
「エストラーダ?」
「魔法界の一般的なインターネット検索サイトよ。ちなみに、エストラーダは霧登家が立ち上げた会社なの」
「それがどうしたってんだ?」
聖人は疑問を感じていた。
「気になって、一兆三百億って調べてみたら……」
神代がリモコンボタンを押すと、サイトが移り変わった。そこは、数字がところ狭しと並んでいるサイトだった。
「数字だらけで頭痛いな」
聖人は生まれ時から算数や数学の類いが苦手なのだ。
「一兆三百億って数字ね。十二代目破壊神の年収だったみたい」
「十二代目破壊神?」
「日本で例えるなら大和王よ。破壊神は魔法界を象徴する人物ね。良い意味でも悪い意味でも」
「で、その十二代目破壊神さんが今回の事件と、どう関係があるんだ?」
「十二代目破壊神って戦争で亡くなられたんだけど……零界堂威吹のお父さんなのよ」
聖人は一瞬思考が停止した。
「どういう事だよ、さっぱり意味が分からない」
「零界堂家は四大祓魔師から除名されるって噂があるの。十二代目破壊神が戦死して、お金の収入源を失った零界堂家は落ち目だって。だから、零界堂家の誰かが十二代目破壊神の年収分を身代金として要求したと考えるのが妥当じゃない?」
「ちょっと考え過ぎだと思うが」
「どんな小さな可能性でも、真相に達する道だと思って疑わなきゃ」
朝から事件解決に燃えている神代であった。




