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13代目の破壊神  作者: 千路文也
1st #1 生徒会長誘拐事件
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052  予定調和


屋上に散らばった30枚のカードを拾い上げたヴォルフガング。


(ここにも居なかったか)


ヴォルフガングは霧登風華の行方を追っていたのだ。


「勘違いだったか」


とてつもなく強大な魔法収容力(セルペンス)を感じたヴォルフガングは、遠路遥々新井マンションまで空間転移(サルターレ)してきたのだ。


「お見事です」


突如、ソーラーパネルの陰から金髪でモヒカンの男が現れた。男はシワ一つ無い白い背広を着ており、不真面目か真面目なのか読めない。


「誰だ?」


真夜中だったので、顔を認識出来なかったヴォルフガング。


「私ですよ。忘れましたか?」


光に照らされて暗闇から顔が写し出された。焦げ茶色の焼けた肌が見え始める。


「てめえは」


あの強大な魔法収容力(セルペンス)の正体に気がついたヴォルフガング。


「死隼(ヴォルフガング)。お久しぶりです」


「優長な暴力……ラストラッシュか!」


すると、ヴォルフガングはハンドガンを構えて、ラストラッシュの額に弾丸を撃ち込んだ。


「おやおや」


ラストラッシュは驚いた様子であったが、華麗に弾丸を躱した。スピードは一般人間の比では無い。


「ここで会ったが百年目だ」


ヴォルフガングは無数の弾丸を撃ち続けるが、それも叶わず容易に躱される。


「ハハハ。遅いですよ」


腰に手を当てて、躱している姿はまるで、舞台のバレリーナが踊っている様だった。


「っち」


これ以上は無駄だと思ったヴォルフガングは、ハンドガンをホルスターに仕舞った。


「もう終わりですか? とても残念です」


乱れた背広を整えるラストラッシュ。


「敵意は無さそうだからな」


「そういう貴方は敵意満々でしたね」


「てめえの実力を知っていたら、誰だって殺そうと躍起になるさ」


「フフフ」


「褒めているのか、皮肉を言っているのか、あるいはどちらともか」と、ラストラッシュは思わず笑って、眼鏡ケースから眼鏡を取り出した。


「何だそれは」


「最近眼鏡にハマってましてね」


「近眼か?」


「私の視力は8.0ですから、レンズは入っていませんよ。ただのファッションです」


対するヴォルフガングの視力は5.0である。


「つうかよ」


「はい?」


そう言いながら眼鏡をかけたラストラッシュ。


「何故日本に?」


「貴方には関係無い事ですよ」


あくまでそうだというのだ。


「惚けるな。嘘は優長な暴力の専売特許だろう」


「………………」


「お嬢を連れ去ったのも、てめぇだな?」


「かもしれませんね」


ヴォルフガングは、ラストラッシュの心の裏を読めないでいた。心を閉じる魔法もまた、ラストラッシュの専売特許であった。


「回りくどい言い方はやめて、さっさと教えろ」


「貴方に教える事は何もありません」


ラストラッシュは宙に浮いた。なぜなら、空を足場に出来るのだ。


「待て!」


不意を突かれたヴォルフガングは、咄嗟にホルスターからハンドガンを抜いて、弾丸を発射した。


「貴方の顔を見れて良かったですよ」


「撃ち落としてやる」


しかし、ラストラッシュはスケートの様に身軽な身体で避けたのだ。


「今回は見逃して差し上げますが、次は血が流れるでしょう」


ラストラッシュの不気味な笑い声が深夜の碩大区に木霊した。

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