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13代目の破壊神  作者: 千路文也
1st #1 生徒会長誘拐事件
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003  振り子時計


俺は急いで高校の制服に着替えた。時間を見ると8時15分を回っていて朝食を味わう暇もないので、食パンをくわえてアパートを飛び出した。



交差点を進んで行くと、信号が赤に変わっていると気がつかず、トラックに跳ねられそうになる。慌てて交差点を渡ろとしたらトラックの窓から運転手が身を出して「どこ見てやがる!」と叫んでいた。


「あー危なかった……」


俺は呼吸を整えて目をつむり深呼吸した。スーハースーハー、よし、これで安心だ。目を開けると、小学生ぐらいの背丈の女の子とバッチリ目が合った。少女は銀髪の髪の毛と碧眼で、とても日本人とは思えない、かけ離れて端麗な顔立ちをしていた。


よく見ると、俺が今から入学する足若丸高校の女子用制服に身を包んでいた。


「あんたも足若丸高校に行くのか? 早くしないと遅刻するぞ」


俺は元来女の子と喋るのが苦手なのだが、目と目が合った状態で何も言わない程の愚かな人間ではない。


「……………………」


だが、少女は何も言わずに商店街の方へ走り去っていった。


「畜生、せっかく声かけたのに無視しやがって」


俺はイライラして道端に落ちていた空き缶を蹴りあげた。空き缶が上空に浮くと、駐車場に止まっていた車に垂直落下していく。


「あ」


気づいた時にはもう遅い。空き缶はカランと鈍い音を立てて、黒光りの高級そうな車に当たった。


高級車からはスーツとサングラスをかけた二人組が助手席と運転席から出てきた。二人共、俺を睨みつけたまま、胸ポケットに手を入れて、何かを取りだそうとしていた。


「あ、ヤバい」


俺は身の危険を感じ、クルリと方向転換して全速力で逃げ出した。 気のせいかもしれないが、後ろから発砲音が聞こえたような感じがした……。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「はぁはぁ……やっと着いた」


足若丸高等学校の北門にようやくたどり着いた。時計を見ると時間はもう8時20分を回っており、ほとんどの学生は教室に入ってしまったようだ。俺は例のマフィアっぽい奴らが追って来てはいないかどうかを確認して門を通る。


この足若丸高校は俺が住んでる碩大区(せきひろく)にある全日制の高校だ。設立年月日は200年以上前で碩大区内では最古に設立された教育校として都内でも有名。


設置されている巨大スクリーンに走り寄った。

クラスの確認はこの大木のデカさはあろう巨大スクリーンに映されたクラス表と入学試験の合格番号を照らし合わせる。


(32番は……521組!?)


とてつもない桁のクラスに若干驚きつつ、自分のクラスに向かった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





目的の場所までの道程を見回りの先生に聞いて、何とか521組にたどり着いた。


「遅いぞ」


「すみま……って!」


担任とおぼしき先生の迫力に初っぱなから圧倒された。目鼻立ち整っている顔だが、たとえば「この老人が校長先生です」と紹介されても違和感が無い老け込み方。まるでサムライのように生やされた白い無精髭と、白髪に侵食されきった髪の毛。


そして特筆すべき箇所は身長だ。俺は幼少時に196cmのプロ野球選手に会ったことがあるのだが、この人の身長は2mを有に越えているであろう。


そんな先生と入学日特有の静まり返ったクラスの雰囲気に萎縮されながら、空いている席に座った。隣の席には交差点で目が会った銀髪の少女が座っている。


「ようやく全員がこの場に揃ったな」


先生が一呼吸置いて口を開いた。


「君達が予想している通り、儂はこの521組の担任を請け負う、ラファエル・ランドクイストという者である。担当科目は魔法だ」


教室中がザワザワとざわめいた。耳をすますと「まじかよ」「あの人が?」という囁き声が聞こえてくる。だけど、俺には何の事だかさっぱりだ。


「静まれ、今は儂のターンだ」


先生は指揮者のように両手を上に掲げた。その手は冗談抜きに照明へ届きそうな勢いだ。


「ニュースを見ている良い子なら解ると思うが、魔法界から派遣された高校教師というのは、君達の目の前にいる老人だ」


ここ最近はVRMMOをプレイしてニュースとはとんとご無沙汰であるが、何故みんなが驚いていたのかがようやく脳内で合点した。魔法界はその名の通り魔法の本場で、7つの国が合体して出来た連合魔法王国という場所にある。


いわゆる魔法界の魔法と日本の魔法は進歩の具合が天と地ほどの差があるので、ワザワザ日本に来る魔法使いは余程の変人だと言われている。そんな噂のせいで、クラス中が驚きの声で包まれたのだろう。


「さて、自己紹介は終わりにして行こうか」


先生はクルリと横に回って部屋から出ようとする。


「先生ッー! どこに行くんですか?」


1人のクラスメートがイキのいい挙手をした。


「入学式だよ」


先生がウインクをして返事をした。


(よっしゃ! この時を待ってたぜ)


俺は足若丸高校の入学式に憧れて、生まれて初めて必死に勉強したのだ。嬉しさのあまり叫びそうな身体を何とか押さえつけて、みんなと共に待ちに待った入学式の開場へと向かった。




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