8/13
偽り 2
そんなことがあった次の日。
昨日のことがウソみたいに
気分は晴れていた。
何であんなに泣いたのか
さっぱりなくらいに。
でもやっぱり美奈実に「裏切られた」
ような気がしてそこは気になった。
その日の夕方に塾に向かった。
今までの塾に対する「嫌」って気持ちは
もうなくて
「楽しみ」って気持ちが強かったのです。
「こんにちは」
そうやっていつものように教室に入って
席に着いた。
でも今日は少し早すぎたらしくてまだ
前の授業の生徒が残ってて。
それでたまたま知ってる子もいなかったから
一人寂しく席に座っていたわけです。
そんな時話しかけてくれた…
「やぁ」
「!! 先生…」
「びっくりした?」
「はい」
あの時の先生に私は
胸が「きゅん」とした。
このときの私はいろんなことがあったせいで
感覚が鈍っていたらしく
大きな何かが始まろうとしているのにも
気付くはずがなくて…
「君…さ」
「はい?」
「もうすぐ最後の大会でしょ?」
「そうですね」
「頑張れ」
「! …はい」
白衣に包まれた先生の背中が
愛おしく思えたのは
気のせいじゃなかった。