2/13
始まり
私は塾が大嫌い…だった。
今となっては過去形なのだけれど。
あれは私が中1の後半のころ。
あの日も私はいやいや塾に行ったんだよね。
「澪ー。塾行くんでしょ?準備して」
「はーい…」
私は大の人見知りだった。
それは今でも変わらないけど。
それで個別の塾に通わされていた。
それでまたいやいや車に乗り込んで
いやいやシートベルトを締めた。
塾に行くときの私はいつもこうだった。
とにかく「嫌い」だったのだ。
ゆっくり教室のドアを開けて
中に入る。
(だ、誰…?)
塾長と話していたらしい
一人の男の人が振り向いて
私と目が合った。
それが谷川先生との出会いだった。
黒髪に長い、とも短い
とも言えない丈の髪。
ちょっとだけ低めの身長に
ちょっとだけ童顔。
最初は高校生か、とびっくりしたのは
今じゃ絶対に言えない。
その時一つだけ分かったのは
その男の人は「今日からここの先生!」
ってこと。
その人はすぐに塾長に向き直って
また話し始めた。
私も何もなかったように
その場を通り過ぎた。