今日の街で起きたこと
発信:父・息子
宛先:ママ(エミリー)
件名:今日の街で起きたこと
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エミリーへ。 今日は、少し落ち着いてからこの手紙を書いています。 信じられないことが続いた一日だったけれど、まずは二人とも無事だということを伝えたい。
1.商店街を歩いていたときのこと
昼前、ルークと一緒に商店街を歩いていた。 君の好きなオレンジを買って帰ろうと思ってね。
そのとき、ルークが空を見上げて言った。
「パパ、月が変だよ」
見上げると、月の表面がゆっくりと、 まるでミカンの皮を剥くみたいに外側へめくれ上がっていた。 最初は錯覚かと思ったけれど、周りの人たちも気づき始めて、 あちこちで悲鳴が上がった。
ルークは、あの状況でこう言った。
「パパ、ミカンが食べたくなった」
正直、笑ってしまった。 あの子は強い。
2.街の石化が始まった
最初に気づいたのは、駐車場のSUVだった。 ボディが灰色に変わり、表面がざらついていく。 次の瞬間には、完全に石になっていた。
その後、通り沿いの車が次々と石化していった。 エンジン音が消え、街が静かになった。
移動手段がなくなった人たちが歩き始め、 混乱が広がった。
3.暴徒らしき人たち
途中で、数人の男たちが店のガラスを割ろうとしていた。でも、彼らの持っていた鉄パイプも石化していて、重くて振り回せず、ガラスにも傷ひとつつかなかった。
暴徒というより、ただ混乱しているだけの人たちだった。
4.パパの拳銃のこと
念のために持っていた拳銃を確認した。 合法的に登録してあるやつだ。
ホルスターから抜いた瞬間、 拳銃はすでに石になっていた。
重くて、冷たくて、 ただの石の塊だった。
「パパ、それ、石ころだよ」
ルークの言う通りだった。 殺傷能力なんてどこにもなかった。
5.ミカンを食べた
混乱の中、買っておいたミカンを二人で食べた。 皮をむくとき、月のことを思い出して、 なんだか不思議な気持ちになった。
ルークは笑っていた。 その笑顔に救われた。
6.家に帰ってきて
家の中の家電は、ほとんど石になっていた。 テレビも、電子レンジも、洗濯機も。
信じられないと思う。 でも、これは本当に今日起きたことなんだ。
7.最後に
エミリー、どうか落ち着いて読んでほしい。 僕たちは無事だし、ルークも元気だ。
世界がどう変わっていくのかは分からない。 でも、家族でいれば大丈夫だと信じている。
帰ったら、三人でミカンを食べよう。
ジョナサン
ルークより 「ママ、ぼくはこわくなかったよ。」




