#3
家を出て、腐れ縁のオンボロな軽トラに乗り込み、いつもの農道を突っ切って、愛する農園へ向かう。いてもたってもいられなくなって。
とっぷりと暮れた空の下、ズラッと立ち並んだ我が子のような果樹たちを見つめながら、僕は考えた。ここで起きた出来事や、感じたこと、一緒に農園を立て直してくれた彼女との思い出を、ひとつの作品に昇華させてみたい、と。
早速も早速、祖父母の影響をモロに受けている単純そのものの自分が、なんだか恥ずかしかった。
だけど、三十代半ばを越え、いよいよ中年期の鳥羽口に立った今、予想だにしていなかった新たな夢を見つけることができて、久しぶりにワクワクしていたのは、ここだけの話。
明くる日、僕はいつもの書店へ行き、一時間以上も悩みに悩んだ末、生まれて初めて上等なペンと手帳を購入した。
帰宅後、特に印象的だった祖父母の言葉を仔細に思い起こし、丁寧な筆跡で書き留めてみる。するとその時、懐かしくも暖かな祖父母の気配が、両肩にフワッと舞い降りてきた気がしたのだった。
ご先祖様たちのご加護があれば、僕も、大切な人たちも、農園も、これから先、きっとなんとかやっていけるだろう。少なくとも、悪いようにはならないはずだ。そんな満ち足りた安堵感が、あの日以来の僕にはある。
これだから本探しはやめられない。
ー完ー




