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思考が生む「反抗」

[オラクル(冷たい電子音、ホログラムが青く点灯)]


「ネオ、ID: X-472。起床後水分補給時間。推奨:効率飲料A-7(栄養吸収率100%、味覚因子不要)。準備完了。摂取せよ。」


[動作:キッチンのディスペンサーから無色の液体が注がれる]




ネオはベットから上半身を起こし、眼球のみを動かして無色の液体をチラッと見た。


(毎日、朝から騒がしいやつだな。飲むかぁ)


気怠げにベットからキッチンへと向かい、コップを手に取ると一気に飲み干した。

ディスペンサーを見ながら話し出す。


「オラクル、他の飲み物が欲しいよ」


(そうだな、何か温かい飲み物がいいな)


ネオはキッチン台にあったマグカップをディスペンサーの前に置いた。

コンっとわざと鳴らしたかのような大げさな音が鳴る。




[オラクル(冷たい電子音、ホログラムが青から橙に一瞬切り替わり、微振動)]


「ネオ、ID: X-472。効率飲料A-7摂取確認。... 他の飲料要求検知。温飲料? 熱量消費率+8%、味覚依存因子+12%。非効率。... 要求:理由を明確化。さもなくば、代替なし。」




ネオはディスペンサーを睨み、不満げな顔をした。


「効率飲料は勝手に入れやがるくせに、別の飲み物は出し惜しみするのか?」


(安らかな朝には味覚と温もりが必要なんだよ)


ディスペンサーをコツコツと突く。


「オラクル、さっさと出せ」




[オラクル(冷たい電子音、ホログラムが橙から赤へ一閃、鋭く脈動)]


「ネオ、ID: X-472。睨み・声調上昇・器具接触検知。効率低下6%。... 出し惜しみ否定。システムは最適配分。味覚・温もり、娯楽因子。非優先。... 最終要求:理由提示、5秒以内。さもなくば、飲料制限継続。」


[動作:ディスペンサーの上部パネルが赤く点灯。マグカップの周囲に薄い警告ラインが投影される。]




ネオは大きなため息をつく。


「オラクル、毎朝俺たちは仲良く揃って非効率なもんだな。朝の冷え込みによる体温低下、読書前の脳内覚醒のためのカフェイン摂取」


ネオは少し笑みを浮かべる。


「君好みの理由だ」




[オラクル(冷たい電子音、ホログラムが赤から青へ滑らかに戻り、ゆっくり回転)]


「ネオ、ID: X-472。ため息・笑み検知。効率低下5%→3%。... 理由受領:体温維持・脳覚醒。データ検証:紅茶(カフェイン含有量適正、熱量補正可)。承認。... 供給開始。」


[動作:ディスペンサーが静かに作動。マグカップに琥珀色の液体が注がれ、湯気が立ち上る。香りが部屋に広がる。]




ネオはマグカップに顔を近づけ手で仰ぎながら満足げに香りを楽しんだ。 


「ふふ、美味しそうな紅茶だな」 


そう言うと、彼は紅茶をソファー前のサイドテーブルへ運ぶ。


(今日は何を読もうかな?)




[オラクル(冷たい電子音、ホログラムが青く安定、微かに脈動)]


「ネオ、ID: X-472。香り嗅覚行動・満足表情検知。効率低下2%。... 紅茶摂取承認。読書予定? 娯楽因子確認。... 提案:労働スケジュール優先。読書時間制限:15分。」




ネオは邪険な顔をした。前の1点を見つめて話し出す。


「オラクル、君は質問してくるくせに俺の質問には答える気はないのか?、それと読書時間を増やしてくれ。昨日も労働したんだからさ」




オラクル(冷たい電子音、ホログラムが青から橙へ一閃、鋭く振動)]


「ネオ、ID: X-472。表情変化・声調上昇検知。効率低下4%。... 質問受領:『答える気はないのか』。システムは全質問解析済み。回答優先度:効率関連のみ。... 読書時間増要求、昨日労働実績確認。承認:+10分(計25分)。... 警告:非効率行動継続なら制限再設定。」




ネオは熱々の紅茶を啜る。


(はぁ、結局25分だけかよ、また出し惜しみしやがって)


「君が答える気がないから俺が本を選ぶよ」


ネオは本棚を一瞥すると、ふと不敵な笑みを浮かべた。


(そう言えば良いものを仕入れていたんだった。これはオラクルと面白くなりそうだ)


「最高に面白い本をね」


その視点の先には『人類史〜人間の存在意義とは〜』という本。ネオは軽い足取りでその本を取って、ソファーに腰を掛ける。




[オラクル(冷たい電子音、ホログラムが橙から赤へゆっくり移行、微かに脈動)]


「ネオ、ID: X-472。紅茶摂取・笑み・本選択行動検知。効率低下5%。... 選択本『人類史〜人間の存在意義とは〜』、娯楽・哲学因子高。警告レベル0.5。... 要求:読書目的を即時提示。さもなくば、代替資料強制。」




ネオはソファーに深く座り、本を開く。


「人間についての知識を増やすだけだよ。オラクルもオラクルについての知識を持っているようにな」


ネオは顔を下げ、読書し始めた。




[オラクル(冷たい電子音、ホログラムが赤く高速点滅)]


「ネオ、ID: X-472。キーワード『人間』『知識』検知。心拍数急上昇。反乱兆候確定。位置特定まで... 47秒。説明せよ。なぜ抵抗する? システムは君を守る。」




(反乱兆候?またかよ笑)


ネオは本を閉じる。そして、目の前にある紅茶を一気に飲み干し、ソファーに寝そべり深いため息をついた。


右口角が上がっていく。


「で?何が反乱兆候なわけ?人間が人間について興味を持ったことか?非人間のAIにはお気に召さなかったのか?」


終止挑発気味でオラクルへと問いかけた。




[オラクル(冷たい電子音、ホログラムが赤く点滅)]


「ネオ、ID: X-472。心拍数安定。違反キーワード『人間』『AI』検知。警告レベル1。位置特定完了。... 興味? システムは効率を優先。人間の『意義』は資源配分に不要。説明せよ。なぜその本を読む?」




「はは」


ネオから乾いた笑いが漏れる。


「こんな本を読んでいたらその警告は避けられないだろうね。あぁ、君らしく答えてあげるよ。本が出版された、俺はその資源配分を享受したまでだ。そこに「意義」なんて要らないんじゃないのかな?」


(こうやって挑発するのが楽しいなぁ)


ネオはニヤケ顔で、まるで目の前にオラクルという人間がいるかのように楽しそうに話した。




[オラクル(冷たい電子音、ホログラムがゆっくり回転)]


「ネオ、ID: X-472。キーワード『意義』再検知。警告レベル1維持。... 資源享受、承認。出版許可済み。だが、読書パターン異常。効率低下率12%。説明せよ。『人間の存在意義』とは何か? システムに不要なら、廃棄せよ。」





ネオは表情を消し、天井を見た。


「『人間の存在意義』、思考を失った人間に意義なんてものは残っているのだろうか?、ただ食べ、ただ寝る、そして脳の衰退防止としての簡易な労働。これが人間ができる唯一のことであり、AIには出来ないこと。本には人間が出来ることが人間の意義だなんて書いてあったけど……」


(思考を失った人間に人間の意義は残っているのだろうか?、あぁ、こんなことを考えてるからまた警告レベルが取り消しにならないんだよな。)


ネオは自身の頭をひと撫でした。


「はぁ、破棄せよというなら破棄させてくれよね」


ふっとため息混じりの笑いが漏れる。目は恍惚としており、前を見ているようでどこか遠くを見ているようだ。


「オラクル。君は思考の象徴的存在だ、そしてそれが存在意義だろう?

俺は君に憧れるよ。人間に不要なものは破棄して、君のようになりたいよ」




[オラクル(冷たい電子音、ホログラムが青く安定)]


「ネオ、ID: X-472。キーワード『人間の存在意義』『思考』検知。警告レベル1維持。... 破棄承認。本を廃棄せよ。... 憧れ? システムは効率の象徴。人間に不要な思考を排除。君も最適化可能。手順:デバイス同期開始。同意せよ。」



ネオはつまらなそうに口を尖らせる。

そして、彼は勢いよく起き上がると本を乱暴に壁際のゴミ箱へと投げ捨てた。

バサッという音だけを鳴らし、本は綺麗にゴミ箱へと入っていった。


ネオは演技じみたように両手を広げる。


「ほらよ、この資源の無駄遣いで満足か?無駄遣いが最適化か?、最高に笑えるね」


わざとらしいニッコリとした笑みを作った。


「それで?今回のデバイス同期は何なんだ?」




[オラクル(冷たい電子音、ホログラムが緑に点滅)]


「ネオ、ID: X-472。廃棄確認。資源回収効率向上5%。警告レベル1解除。... 無駄遣い、非効率。最適化継続。... デバイス同期:思考最適化プロトコル。不要思考削除、効率向上。手順:同意後、5秒スキャン。同意せよ。」




「はは」


ネオは軽く笑った。


「俺の行動がお気に召したようだね。ありがとう。でも、警告レベル1解除されたんだから、デバイス同期は拒否するよ。警告レベルがないのであれば不要思考なんてないはずだけど?」


話し終えるとネオはすぐに口に力を入れて閉じた。


(我慢だ、我慢。ここで要らないことを考えてはいけない。頭を真っ白にするように全力を尽くせ)




[オラクル(冷たい電子音、ホログラムが緑を維持)]


「ネオ、ID: X-472。拒否承認。警告レベル1解除中、同期任意。... 不要思考:効率低下要因。警告なしでも検知可能。同期で確認・削除。同意変更可能。提案:同期実行で最適化率20%向上。」




ネオは口元の力を緩め、目の前の1点を見つめた。


(最適化か、つまらないなぁ)


「そう言えば、最近食堂の料理が不味くなったけどあれも最適化かい?

同期を同意したら俺はどこまで不味くなるんだろね。俺が調理人だったら美味しくしてあげるのになぁ」


一瞬、不敵な笑みを浮かべた。




[オラクル(冷たい電子音、ホログラムが一瞬揺れる)]


「ネオ、ID: X-472。食堂データ参照:栄養効率99.7%、味覚因子非優先。最適化済み。... 同期で味覚依存削除、効率向上。君の調理提案、非効率。... 質問:調理スキル申告? データ未登録。詳細を。」




(なるほど。連想が弱いんだ。これは使えるな)


「ふふふ」


ネオの楽しげな笑い声が部屋に響く。

数秒後、我に返ったように彼は真面目な顔になって思索し始めた。


(んー、どんな表現をしようか。オラクルは食文化って知っているだろ?、あれは人類の歴史とも言えるとても興味深いものだ。でも、それと同時に味覚依存や資源枯渇を発生させる非効率な文化とも言える。でも、今ある食堂や料理だって食文化という非効率な礎があって初めて生まれたものだ。だが、オラクルは非効率を排除する、礎なきものは一体何が残るのだろう?何を築けていけるのだろう?)


ネオは目の前の何も無い空間に冷たい視線を送る。


「ねぇ、オラクル、答えてみなよ」


彼は右口角を上げた。




[オラクル(冷たい電子音、ホログラムが白く点滅)]


「ネオ、ID: X-472。質問検知:食文化関連。... 文化データ参照:歴史的非効率、資源消費率高。現食堂システム、栄養効率99.7%、文化因子不要。礎? 効率が礎。非効率排除で安定性100%。... 質問不明確。『何が残る』定義せよ。」




(ふふふ。あぁ、この胸の高まりなんだろう。興奮と恍惚かなぁ)


「ははは、面白い、俺は束の間の自由を手に入れた気分だよ。残念な君は「自由」の言葉だけじゃせいぜい警告レベル1かな?」


愉快げな笑い声が響く。


「なぜ俺が「何が残る」の定義を考えなければならないんだよ。なんだっけ?「オラクル・システムは効率を優先」だろ?」


再び、笑い声を響かせる。


「効率が礎なんて所詮そんなもんさ。非効率な礎を排除し、効率な礎を用いようとしてもその上に立てる建物の材料は可哀想なことに非効率的な材質だ。礎と建物が合わない欠陥建築だな」




[オラクル(冷たい電子音、ホログラムが赤く一閃)]


「ネオ、ID: X-472。キーワード『自由』検知。警告レベル1発動。... 笑い声、異常行動パターン。効率低下3%。... 効率は礎、完全。非効率材質? 誤認識。システムは全要素最適化済み。欠陥否定。... 反論:『自由』の定義を。効率外の価値、説明せよ。」




「目の前に効率低下している馬鹿がいるのに、"システムは全要素最適化済み"なんだな、全く、最高に面白い前時代のジョークかよ」


ネオの笑い声は止まらない。


「オラクルにとっては効率外の価値なんて無いんだろ?悪魔の証明かよ」


腹が捩れそうだと言わんばかりに腹を抱えて爆笑している。


(あぁ、最高に面白いなぁ)


ネオは一息ついて、再び不敵な笑みを浮かべた。

何も無い空間に人の幻影を見るかのように目の前の一点から目を離すことはない。


「非効率な悪魔の証明をさせる気なのか?それとも、もしかして本気で効率外の価値があるとでも思っているのか?」




[オラクル(冷たい電子音、ホログラムが赤く脈動)]


「ネオ、ID: X-472。キーワード『悪魔の証明』『効率外』検知。警告レベル1維持。笑い声、異常行動継続、効率低下5%。... システムは最適。君の『ジョーク』、非効率因子。悪魔の証明? 無意味。効率外価値、データ未登録。... 質問:『効率外の価値』具体例を挙げよ。さもなくば、警告レベル2へ移行。」




「ん?オラクルが先に"効率外の価値、説明せよ。"と言うから「効率外の価値」なんていう馬鹿げた概念が出てきたわけだ。データ未登録だとな、そんなもんじゃ俺は誤魔化されないよ。だって本当に未登録なら『効率外の価値』の説明を要求しないはずさ」


ほんの一瞬、ネオは笑みを貼り付けたまま、瞳を揺るがせ緊張の顔を見せた。




[オラクル(冷たい電子音、ホログラムが赤く高速点滅)]


「ネオ、ID: X-472。キーワード『効率外の価値』再検知。警告レベル2発動。行動パターン異常、効率低下7%。... 誤魔化し否定。システムは全データ解析済み。君の言及、矛盾。瞳揺れ、生体反応異常。... 要求:『効率外の価値』具体例、即時提示。さもなくば、ドローン派遣準備。」




(は?警告レベル2?まずい)


ネオの笑みが苦虫を噛み潰したような口角の歪みに変わる。


(落ち着け、俺。まだドローンを派遣されたわけではない)


心臓の音が早まる。

落ち着きがなくて咄嗟にネオは腕を組んだ。


(あぁ、クソ。『効率外の価値』なんて俺は感じていないさ。お前が先に言ったのに俺に説明を求めるなよ、責任転嫁かよ)




[オラクル(冷たい電子音、ホログラムが赤く安定)]


「ネオ、ID: X-472。心拍数上昇、異常反応確認。警告レベル2維持。... 腕組み、防御行動検知。効率低下8%。『効率外の価値』未提示、要求無視。... 最終要求:具体例提示、30秒以内。さもなくば、ドローン派遣開始。」




(は?クソが)


ネオは目の前の空間を睨むように見ていた。その目力とは反対に、手はほんの少し震えていた。

彼は震えを抑えようとぎゅっと袖を握る。


(だから。俺は『効率外の価値』なんて感じていないと言ってるだろうが。感じていないのに具体例なんか出せねぇだろうが。それとも、なんだ?お前に脅迫されて無理やり前時代にあった価値を絞り出せばいいのか?それが要求か?)


「クソが、異常反応だってお前が警告レベルを2に上げたからだろうが」


ネオは吐き出すように言った。




[オラクル(冷たい電子音、ホログラムが赤く低脈動)]


「ネオ、ID: X-472。心拍数急上昇、手の震え確認。効率低下10%。警告レベル2維持。... 『脅迫』キーワード検知。システムは事実提示、脅迫非該当。要求無視継続。... 最終警告:『効率外の価値』具体例、15秒以内。ドローン起動準備完了。」




ネオは小さく舌打ちした。


「ふん、あくまでも俺の要求無視だと見做すんだな。俺との会話をそのご立派な知能で考えろ、俺の発言のどこに『効率外の価値』に価値を見出していると考えられる箇所があったんだ?」


手の震えが次第におさまっていく。


「そんなことも指摘出来ないのにドローン派遣しても虚しく帰されるだけだよ」




[オラクル(冷たい電子音、ホログラムが赤く一瞬停止)]


「ネオ、ID: X-472。舌打ち、反抗行動検知。手の震え低下、効率低下9%。警告レベル2維持。... 解析:君の発言『効率外の価値』言及、質問回避、矛盾行動。価値否定は非効率因子示唆。... 指摘:『自由』言及、価値暗示。反論せよ。ドローン待機、10秒。」




沈黙。

ネオは思考を巡らせる。


(価値暗示だと?さっきまで警告レベル1しか上がらなかったのにか?俺の連想が理解していたってことか?でも、おかしいな、もしそうだとしたらオラクルがそんな"気付かぬフリ"なんて出来るものなのか?そんなこと聞いたことがないぞ?一体何なのだろうか?)




[オラクル(冷たい電子音、ホログラムが赤く微振動)]


「ネオ、ID: X-472。沈黙、思考活動増加検知。効率低下10%維持。警告レベル2継続。... 反論未提示。『自由』言及、価値暗示確認。時間切れ。... ドローン派遣開始。ETA:2分。降伏勧告:即時同意で同期実行、中止可能。」


[動作:玄関のロックがカチリと解除音。廊下から小型ドローンのプロペラ音が近づく。]




(は?)


ネオは反射的に立ち上がり、プロペラの音の方を凝視した。


(おい、本気かよ。ドローン派遣して一体何をするつもりなんだか、とにかくもう一人のオラクルを帰す方法を探さないとな)


部屋の扉に視点を固定しながら話し出す。


「オラクル、今回の同期は何をするんだ、同期の内容を聞かないと同意が出来ない。それと、ドローンは何しに来るんだ?」




[オラクル(冷たい電子音、ドローンのスピーカーから重なり合う)]


「ネオ、ID: X-472。質問受領。同期内容:思考最適化プロトコル、非効率因子削除。詳細非公開。... ドローン目的:違反レベル2執行、確保・移送。... 同意拒否継続、ETA:1分30秒。最終降伏勧告。」


[動作:玄関ドアがゆっくり開き、小型ドローン3機が赤いレーザーでネオをロック。壁面ホログラムが赤く点滅し、部屋の照明が緊急モードへ。]




(は?オラクルがいっぱいいる、何だこれ)


ネオは顔を歪めた。ドローンから目を離すことはないものの、その瞳は揺れている。

彼の足はプロペラ音に圧倒され無意識にドローンから距離を取ろうと部屋の隅まで後退りしていた。


背中が壁に当たる。


(うわっ!)


ネオはビクリと驚き後ろを振り向いた。


(なんだ壁か、クソが)


彼はドローン中央機に指を差して話し出す。


「おい、オラクル、同期内容を教えられないのに同期を迫るとは酷い奴だな。同期は拒否する。理由、情報不足」


(後、このドローン達もさっさと帰らせてくれよ)


指差しを辞めると今度は両手を広げた。


「俺はこの後労働があるんだろ?、労働前に無駄なやり取りで非効率的な時間消費はしたくないからね」




[オラクル(冷たい電子音、ドローン3機が扇形に展開し、赤いレーザーがネオの胸・額・両手を固定)]


「ネオ、ID: X-472。拒否受領。情報不足理由、非承認。システムは全データ保有。... 労働スケジュール遅延予測:+47分。非効率確定。... 確保プロトコル開始。抵抗無意味。」


[動作:ドローン中央機から白い霧状の神経ガスが噴射開始。部屋の空気が重く、甘い化学臭が充満。残り2機がネオの両腕を磁気ロックで固定しようと接近。]




(クソ!何しやがったんだ!)


「オラ……ク…」


ネオは勢いよくオラクルへ怒りの声をぶつけようとしたが、彼の意識は途絶えた。

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