2
「それはそれは…で、実は私も『お嬢』じゃなくって『男』なんです。これは気が合いますね〜」
あいや、気が合うとかどうとかいう、話か。ん?
「ふむ、実は知っておった。なにせワシは、お主の55年後の未来の姿…って、これこれッ。なぜ急に腰の剣を、自らの喉元に突きつけるんじゃッ」
「あ、申し訳ありません。つい将来を悲観して…」
だそうです。
「うぬぬ、失礼な奴め…」
いやま、ルカの気持ちも分からなくはありませんけどね。嘘か真か、このみすぼらしい年輩から、自分の『未来の姿』と言われた日には。
「で…とにかく、この私に何用でございましょうか。私の未来の姿と仰る、ジー…あいや、ご年輩」
剣を再び腰脇に収めると共に仕切り直し。半信半疑の様子でルカが問いました。
「ふむ、実はかくかくしかじかで…」
でですね、そのバー…じゃなくって、ジーさんの言うことにゃ、このしばし後、自分(=ルカ)が本物の女になるべく『それを見た者の願いが、ひとつだけ叶う』(例:ギャルのパン○ィお〜くれッ)という、伝説の聖杯探求に赴いたものの、ある理由から失敗。結局、男のままで暮らすうち、つい最近になって『コノコート・オル・ケカヲキト』なる、所謂タイムスリップが可能という魔法を習得。それを使うことによって、こうしていま過去の自身の前に現れた。そして…
「今度は失敗のないよう陰ながら導くから、あらためて私に、聖杯探求の旅に出て欲しい…そう仰るのですね」
「その通りじゃ。で、どうだ…若き日のワシよ。本物の女になって人生を謳歌し、美しく優しくも夜は豹変する男と結ばれ幸せになり、シャキーン王子を見返してやりたくはないか」
「ふ〜む…よっしゃ乗った。私、行きますっ。その『性杯』を探しにっ」
「おおっ、そうかっ。字が間違ってるのはともかく、ならばよろしく頼むぞえっ」
夜は豹変…もとい『幸せ』の2文字に心を動かされたか、どうやら交渉成立。かくして、ルカとルカが、固い握手を交わしました。