謎の老人が言うことにゃ
「…なにさ、ちょっと男だからっていうだけで、婚約破棄だなんて…」
2日後。言われた通りお城を出たルカは、愛馬クロノス号に跨り、ぶつくさ言いながら実家へ向かっています。
ちなみに荷物の方は、昨日、一足先に宅配便で実家に送ったので、身体ひとつでの里帰りなのですが…それにしても『彼女』が、その身に革鎧など纏い、また腰脇に剣を帯びているのは何故でしょう。
はい、実のところルカは、元々はシャキーン王子の父、現キリス国王モロ1世お付きの騎士だったのです。
して、それを息子たる王子に見初められた訳ですが、まあ、あとは言わずもがなです。
さて、本日は髪を下ろした状態。その艷やかな絹糸状を揺らしつつルカが、やがて、ある小さな森へ入った時のことです。
「ちょいと、煌めく眼のお嬢さん…」
「ん…?」
その声に、はたと馬を止めて見下ろせば、ひとりのみすぼらしい老人が、その辺の大きな石に腰掛けています。
「いま、ワシを無視したのう。いかにワシが、このようななりとはいえ、騎士たる者が、年輩に挨拶しなくてもよいのかえ」
「あいえ、おばーさま、ちょっと考えごとをしていたもので…失礼」
言ってルカが、馬から降りて一礼。
「そうかそうか。だが、こー見えてもワシゃ、ジーさんじゃ」
…って、ここにもルカと同類が。