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なんとなく重たい雰囲気が伝わってくるようだが、ひょっとして、なにかよからぬ事でも起こったのか。
とにもかくにもルカが、まもなく小屋の前へ。そして、
「どーかされたんですか」
戻ってくる小舟を横目に、その脇の人々に尋ねてみた。この雰囲気の理由を、である。
すると、全部で4人。揃ってゴシック調という身なりのよい男女のうち、ひとりの年輩男性が、
「あいや、旅のお方…実は、かくかくしかじかでございまして…」
なにやら、ルカに説明してくれた。
その老人の名は、オギーン氏。70歳。いま自身の脇に立つ、品よき中年夫妻の従者なのだそうだ。
で、そのオギーンさんの言うことにゃ、なんと主たる同夫妻の愛娘が、これから当ナガレーヌ川に棲む巨大な怪物の生け贄に。それすなわち、その怪物と結婚させられてしまうらしいのだ。
そう、その夫妻の娘というのは、いまや岩の上に1人で座り込んでいる、例のドレス姿の女性に違いなかった。
そんな不幸な彼女は、ミーナ。ここオペロン村で、最も可憐で美しいと評判の十七歳である。