苦渋
「………Wait、朱雀。俺が言うのもあれなんだけどよ。きつい試練受けさしたしよ。でも……その試練、終わらせる気、あるか?」
様々なり理由で中断され続けた、四神獣、朱雀の試練。
方法は青龍や悟空(?)と同じで、証となる宝石を持つ者だけが試練を受け、見ることができるらしい。
だが特別に朱雀は、隠す必要もないということで試練の方法だけは教えてくれた。……のだが。
その方法とは、あの二人にとっては最難関ともいえるものだった。
「朱雀は試練を人によって変えるし、一番必要なものにするから反対するつもりはねぇよ。だが……なぁ。」
その試練の内容は、「一万個の白い正方形の欠片から、針一本の幅分一片の長さの違う欠片を見つけろ」というもの。正直、俺も初めに聞いたときは二度聞きしてしまった。
「妾の選んだものに文句があるというのか、悟空?」
「NoNo。そういうことじゃねぇよ。」
「ならよい。」
「朱雀。」
「なんじゃ、輝?」
「朱雀は、なんでその試練を選んだんだ?そういえば、まだ理由を聞いていなかったなと思って。」
「そうじゃな……理由はいくつかあるが、一番大きな理由としては、あやつらの集中力を鍛えるためじゃ。」
「集中力ならあると思うんだが………」
「お前の言う集中力とは、例えば戦場で、全体を見続ける集中力のことじゃろう?それはあやつらにもある。じゃが、お前やお前の仲間、悟空にはあり、あやつらにはないものがある。」
「なんだ?」
「わからぬのか?」
「残念ながら。」
「ハァ………あやつらに足りぬのは、「一つの事象に対する集中力」じゃ。「執着心」ともいうが。それ眼ければ、いくら強かろうと、相手を完全に仕留めることなどできぬ。己の勝利に、生に、相手の敗北に、死に、どこまで執着できるかが、勝利の最後の鍵を握るのじゃ。」
確かに、これまでの二人の戦い方は基本、最後の仕留めるのを俺に任せ、その支援をする、という流れだった。そして二人はその過程で、自分の能力を思う存分使えていない。
「力を持つ者は、人のために己のため以前に、思う存分その力を振るえるようにならんとならぬ。でないと、それは普通の雑兵以下、自分の力にうぬぼれる愚か者じゃ。目がつぶれようと、血を吐こうと、体が動かなくなろうと、思考が止まろうと、命ついえる最後の瞬間まで己の価値に執着する。それが、もっとも勝利への近道となる。」
今思えば、二人が力を好きなように使ったのを見たは、俺があの二人に初めて会った時と、城下のごろつきを掃除しに行ったときのみ。特に城を移してからというもの、あまり能力を見せていないような気がする。
「能力を使わなさすぎることも悪いことなのじゃ。体に負担がかかり、下手をすれば死ぬこともある。勝ちへの執着や、その勝ちに対する自信がなければ、むろん能力も答えることはない。おぬしらの能力は、獣になることだけではないだろう?」
朱雀は厳しい性格に見えて、実が一番人のことをよく見ているのだろう。その厳しい物言いも、相手を確実に強くするための、いわば飴と鞭の鞭の方なのかもしれない。
「ちなみに、時間制限みたいなものはあるのか?」
「ないに決まっておるじゃろう。あやつらがそれを見つけるまでは、一生祠から出すつもりはない。」
「だろうな…」
「輝さま。これを。」
俺が二人のことを心配しつつ上を向くと、後ろに控えていた鎖が、突然一つの書状を手渡してきた。その書状はところどころおれており、早馬がだいぶ急いで届けたもののようだ。
「今先ほど、桜さまが早馬から受け取ったものです。まだ開封はしておりません。」
俺はそれを聞き、その書状を広げる。その中には、驚くべきことが、でかでかと、ただ一つだけ残されていた。
「焔光城が……攻められてる⁉」
「なっ…!」
「またやん。輝、攻められる才能あるんちゃうか?」
「今はそんなことを言っている場合じゃないですよ、慶斗様。」
「どうするの?」
「………………………………………………………………………………」
今ここで動かなければ、すぐにでも城は落ちることになる。そうなれば俺たちは、この短い間で城を二度もうしないことになるのだ。それはどうにか避けたい。
だがここで動けば、試練を受けている二人を置いていくことになる…………
「二人を置いて行っても、何もないやろ?」
「それは…………そうだが…」
「なら、しゃーないやろ。それよりも今は……」
俺はその言葉を聞き、苦虫を噛み潰したような気分になる。しょうじき自分が情けない。
こんなことで迷うことも、いい方法を見つけられないことも、我がままを通そうとするところも。
だが………
「行くぞ。朱雀。二人を頼む。」
「言われずともわかっておる。それよりも早う行け。」
「わかった。」
そう答え、朱雀と双子を残し、俺たちは全速力で城へと馬を進めるのだった。




