一難、一難、一難、一難…
ごめん、少し遅くなった。後、もう少しで新しい別の話も上げるかもです。あ、でも、そっちは完全にサブなので、投稿頻度はだいぶ遅くなるかもしれないです。
「で、なんでこうなるかな?俺たち、ここから出たいんだけど。」
「知らねぇよ。御大将がお前らの邪魔をしろっていうんだ。」
贄喰を倒し、双子の親やそれに組していたものたちを縛り、一度居城に戻ろうとしていた俺たち。この後すぐ、二人に朱雀の試練を受けさせるつもりだったのだが……その矢先、俺たちの前に現れたのは、筋骨隆々な体をし、片手でその身の丈と同じほどの大きさの戦槌を担ぐ男だった。羽織は完全に着ることなく方にはおっており、その背には、配色を反対にした焔雲の家紋が大きく縫い付けられている。
「黒曜の手の物か。」
「そうだぜ。お前さんが言ってた弟さんか。で、そっちの白い髪のが妹さんだな?………てか、」
男は俺たち……いや、黒曜の兄弟であるものを確認すると、そのまま双子の親たちの方へと赴く。そして……次の瞬間には、その全員の首が吹き飛んでいた。大きな打撃音すら、聞こえるのはそれらすべてが吹き飛んだあとだ。
「おいおいおい。やられたつってきてみれば、こんな手勢にやられたのかよ。贄喰ってやつもいねぇしよ。手合わせしたかったのに、これじゃ、俺より弱いってことになっちまうじゃねぇか。」
「おい、何してる。もう遅いが、そいつらは俺たちの管轄だ。勝手に手を下したことについては、どう説明するつもりだ?」
「ああ、すまねぇすまねぇ。ついな。それより、お前さんら、今急いでるか?」
俺が朱雀の方を振り向くと、朱雀は小さく首を横に振る。そこまで急ぎではないらしい。
「いや、大丈夫だ。」
「そうか。」
そういうと、その男はどこからか大きな酒瓢箪を取り出し、おもむろに飲み始める。
「飲むか?」
「いや、遠慮しておく。」
「お前ら、ここを通りたいんだよな?」
「ああ、すごく通りたい。そしてついでに、お前がありえないほど邪魔だ。」
「………俺は、あと一時間ぐらいしたら出ていくつもりだ。もう先に行ったっつってな。それでも、今行きたいか?」
「まあ、できるだけ早くは出たいな。」
「………じゃ、シャアねぇ。かかってこい。俺はお前らの邪魔にならないといけないんだ。」
男は地面に置いていた血塗られた戦槌を再び持つと、まるで刀のように構えてみせる。
「俺は複数人相手は嫌なんだ。一対一でやりたい。が、今そっちに力自慢はいないみたいだからな。何人でもいいぜ。その代り、幻獣さん方は使うなよ?」
「わかった。」
俺はそういうと、陰と影に合図する。
「残念だが、戦えるのはこれで全員だ。手加減してくれないか?この二人も疲れてるんだ。」
「そりゃ聞き入れられないな。手加減なしで行かせてもらうぜ!」
そういうと、男は頭上から一気に、その戦槌を振り下ろしてくる。その速度、もはや刀である。
「あの速度であのような大ぶりな武器を⁉」
「鎖といったな。下がっていた方が身のためじゃぞ。」
俺は後ろで何か鎖と朱雀がしゃべっているのを聞きながら、その戦槌を前転してよけ、転がった先にある足に向かって刀を振るう…が、
「…は⁉」
男は戦槌を振り下ろした反動を利用し跳びあがる。ここまでは予想通りなのだが……その男の手には、これまた身の丈ほどある大剣が握られている。
「どっから出した⁉」
「ずっと背に背負ってたぜ?」
その体験が地面につくと同時、俺はそこに再び一線を入れるが、またしても当たらない。そしてその代わりに見えるのは、とてつもなく大きな弓!
「クッソ…」
俺はそこから飛んでくるいくつもの矢を刀でたたき落とし、その間に待機していた二人が、両側から氷と毒を男に向け放つ。
「おっと、アブねぇ。」
男は持っていた弓を地面にたたきつけ跳びあがると、地面に刺さったままの大剣を抜き、そのまま陰の方に振りぬく。俺はその瞬間を見計らって刀で受けるが、その物量に押され二人そろって奥へと吹き飛ばされる。
「マジか。あいつ、いくつ武器持ってんだよ…」
「とりあえず、攻撃し続けるしかないんじゃない?」
「………いいや、飽きた。それにお前ら、今万全の準備じゃないんだろ?」
「ああ。」
「なら、やっぱり通っていい。御大将には何とか言っておく。」
「いいのか?」
「敵でも見方でも、お前らみたいな若いのが強くなっていくのを見るのは好きだからな。またどうせ戦うことになるだろ。だが、その時は手加減しないからな?」
「わかった。恩に着る。」
「それほどでもないさ。」
そんなことがあって、身も心も完全にへとへとになった双子を両方とも馬にのせ、俺たちは帰路を歩んでいた。二人に試練を受けさせるにしても、ここまでくると危険だろうということで、朱雀も了承してくれた。俺もそろそろ眠くなってきて、ほかの誰かしらに馬の手綱を頼もうとした時……突如、猛烈な頭痛が俺の意識をすべて奪った。
「なっ…?」
「久しいな。輝。」
「お前は…蒼⁉なんでこんなところに。」
「安心しろ。ここはお前の持つ指輪の中のようなものだ。それより、伝えなければいけないことがある。落ち着いて聞け。話せる時間はそう長くない。」
「わかった。言ってくれ。」
「朱雀たちに伝えろ。『獄晩狼』が死んだ。遺産が残っている。至急取りに行け、猶予はないと。」
こうして俺たちは、またも馬を走らせることになるのだった。
どうでしたか?誰でしょうね、あのおっさん。能力もいまいちわからないですし…とにかく力持ちなようですが。次回は何が出てくるでしょう。