決別
今回は朝早く書けました。あと注意事項。今回の話、メッッッッッッッッッチャ長いです。いつもは二千字ぐらいで収まるようにしているんですが、今回は何と五千字に迫ろうとしています…前書きとあとがきは含みません。
理由は内容を読んでみるとわかると思うのですが…分けると少しぐちゃぐちゃとしてしまいそうなんですよね……なので、ご自分で分けて読んでいただけると幸いです。ただ、一気に読んだ方がわかりやすいかな…とは。
というわけで、お楽しみください。
洞内に、刀と怪物の体が打ち合う音が響く。炎が舞い、黒いしぶきか飛び散り、打撃音が鳴り、怪物の叫ぶ声が響き、鋭い視線がその怪物の動きを射抜く。そしてその少し動かくなった瞬間には、俺がもう一度刃を入れる。
「わかってるな?輝。こいつに勝つ鍵はお前の指輪と鎧だ。もう少し詳しく言うなら、その力に充てられたお前の刀だ。その刀なら、あいつの酸を気にせず攻撃できる。あいつは、青龍の炎が苦手なんだよ。お前がその鎧を着ているなら、お前が出す炎も青龍の力を浴びているはずだ!」
俺は今、青龍にもらった鎧と指輪をつけている。
「………わかった…力を貸してくれよ…蒼!!」
そう叫んだ途端、鎧の隙間という隙間から、真っ青な炎が噴き出す。それに合わせてか、鎧もさらに青く輝き始める。
「鎧は色ごとに名前があるんだ。そいつは……」
刀を強く握りしめる。体の奥底から、炎が湧き出すようだ。
「Ty.1 蒼勇」
「やってやるぜ。」
肩からは翼のように。ひじからは棘のように炎が噴き出す。その炎から、蒼の優しい笑顔が思い浮かぶ。
「輝。」
「なんだ?」
「怒るなよ?」
「ああ。」
返事をすると、俺は贄喰に向けて駆け出す。
足でけったところからは炎が噴き出し、俺のはしった軌跡が、その炎で映し出される。紅かった刀の¥刀身も、その炎で青く見える。
「こりゃ、俺たちが出を出すほどでもなさそうだな。」
「よもや、奴が最初からこれほどの力を引き出せるとは。蒼はずいぶんと気に入っていたようじゃな。」
「じゃ、俺たちは雑魚処理をするぞ。」
贄喰いの伸ばす触手を、俺は迷いなく刀で切り裂いていく。直感が、戦い方を教えてくれるようだ。
攻撃を加えるたび、贄喰は耳障りな声を上げ、俺の体に攻撃をしてくる。先ほどからはパターンも変化し、爪や体も使うようになってきた。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「本当に耳障りだ。まあいい。」
俺は肩の炎をふかし、贄喰の頭部に向け一閃を放つ。
「グウウウウウウウ」
悟空いわく、贄喰の弱点は頭部に存在するらしい。ただ、その狙うべきものはとてつもなく小さく、並の物では探すことさえできないという。
「で、俺はこの刀を差さないといけないってことだな。印象だが、まだ経験の多い鮮血の方が強いな!」
俺は贄喰いの頭頂部に立ち、手に持つ刀を一気にそこへ突き立てる。
「グ…ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
突き刺した瞬間、贄喰は道内のすべての個所に向けて触手を放つ。それにはもちろん、あのすべてを飲み込まんとする酸もついている……が、
「こんなもの、悟空に方法を聞かなくてもわかる!」
俺は刀を中心に、その触手のすすむ先に炎の壁を作り、その進行を妨げる。炎に当たった触手はまるで蒸発するように消滅していく。
「そして、これを狭めていけば!」
俺が中心に向けて炎の壁を狭めていくと、贄喰いは苦しそうに唸り声をあげる……………………瞬間、俺は背筋に冷たいものを感じる。
「なっ!」
俺が刀を捨て飛び降りると、贄喰いは姿かたちを変え始めていた。体は跡形もないほど肥大化し、口は、その体半分ぐらいのところまで避けている。脚は貧弱なものが四本生えているだけで、腹を引きずっている。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」
「武器を取られたのは痛いが、要するに方法はあっていたってことだろ⁉」
「ああ。今は酸を出さないから、俺たちは隙に攻撃できる。さっさと頭の核を見つけるぞ。」
「了解!」
俺は拳に青い炎を集め、贄喰に殴りかかる。
「意外とこんなものか。八聖獣の中にもだいぶ格差があるみたいだな!」
「いや、それに関しては奴がおかしいだけじゃ。」
「俺が強すぎるって?Thank You。」
「ほめてなどおらぬ!」
その間に贄喰は、俺たちのスキをつけたとでも思ったのか、向こうで休んでいる双子の方に向けて前進し始める。
「そこにはいかせねぇよ!」
俺は真っ向から贄喰いの頭めがけてその拳をたたきつけ、ひるんだすきに刀を回収する。そしてそのまま刀と体にまとう炎の量をより多くする。
「焔流 草薙!」
俺は贄喰が口を大きく開けた瞬間、その内側に一撃を入れその体内に飛び込む。
「狙いは悪くないが……良いのか?」
「別に。あいつなら抜け出してこれる。Don’tworry.」
贄喰の中は一見人間と同じに見えて、実のところひどく入り組んでいる。本来心臓に当たるところを見てみれば、そこには脳のようなものがある。
「つまり、脳があるところに核があるわけだ!」
だが正直なところ、ここの中がいくら広いとはいえ、そこを的確に狙う自信はない。歩いて井戸医学にも精通していたことがあるから、人体に関しての知識はある程度あるつもりだが、悟空によれば、その核は大体小指ほどらしい。
「なら…喰ったほうが早いな。」
「なるほど、そう来るか。」
「That's interesting!」
俺は内側で狼の姿になり、おそらく頭部があると思われる方向に突撃した。体の大きさを変えることはできないため、内側から炎をまとい、贄喰の肉を焼き払いながら頭部に向かった突き進む。そうしている間に俺は、小指程度の大きさがある、丸い宝石のようなものを見つける。
「これだな?正直仲間にできないのは残念だが、この能力自体も、いつかはおさらばしないといけなくなるわけだ。それが俺の目指すところだからな。……じゃあな、贄喰。次はお前の、幸せなところに生まれろよ?」
そういって俺は、その球体を牙でかみ砕いた。そしてそのままもう一度体を炎で包み込み、外に出るまで突撃する。外に出て振り返ると、贄喰の体は青色の炎に焼かれ、ぼろぼろと消滅しているところだった。
「ああ…贄喰さまが……」
「そっか、まだこいつらが残っているんだったな。」
俺は人の姿に戻ると、そのまま悟空や鎖、朱雀や慶斗たちがとらえてくれたこの集団の棟梁らしき者の前に立つ。
「ちょっと待ってぇ…」
「輝……その二人は…」
「ああ、言われなくてもわかる。お前ら、あの二人の親だろ?」
「ああ、そうだ。」
「あたしたちがいないと、あの子たちの面倒を見る人がいなくなるんじゃない?私たちを生かしてくれるなら、二人の面倒は見ていてあげるし、あなたたちに協力もしてあげるわよ?」
「……いい提案だな。」
「Why?」
「輝。正気か?」
「まさか、贄喰いの中に入ってとち狂ったのではあるまいな?」
「俺は瘴気だよ。いい提案だと思う。実に。でも、一ついいか?」
「ああ。」
「なに?」
「お前ら……………………ンなもんで許されると思ってんのか?」
「……え、」
「なっ、貴様!」
二人の父親の方は、俺の言葉が気にふれたのだろう。その縛られた体を動かし、俺の攻撃を加えようとするが、すぐに鎖に押さえつけられる。
「まず面倒見自体がいらない。俺が面倒を見れるし、面倒を見る必要がどこにある。それに、この二人を一度捨てた相手に、もう一度渡すほど、俺は馬鹿じゃない。舐め腐ったこと言ってんじゃねえ。」
「で、でも、あなたたちのところは忍び部隊なんていないでしょ?それに私たちが味方になれば、あなたのお兄さんのところの軍の情報も手に入るのよ?」
「今ここで吐かせても手に入るだろう?」
「で、でも、まずまず、あそこに攻め入るには戦力が足りないんじゃない?」
「いや、戦力に関してはこれから集める。」
「これから、それで集めると…」
「輝さまは集まるといっているのです。」
「で、でも…」
「あと、忍びならいる。」
「は?」
俺がそういうと、すっと陰と影が俺に身を寄せてくる。
「最強の忍びがな。」
「で、でも部隊自体はいないわけでしょ?なら好都合なんじゃ…」
「そうかもしれないな。でも、俺からしたらいらないんだよ。あとは双子の意見だな。こいつらはお前たちの親だ。もしいてほしというなら、いい待遇を受けさせてやろう。」
「………」
「……」
「二人とも?もちろんいてほしいわよね?だってあなたたちの親だもの。まさか、親wp見捨てるなんてそんな過去と…」
「って、子を捨てた親に言われてもねぇ。」
「正直、響くものはない。」
「な、なんでよ。」
「そのままの意味だけど。」
「今までの話聞いてても、ずっと手のひらくるくるさせてるだけだしねぇ。きっと、誰かに負けたらそっちにつくと思うよ。」
「だろうな。大体予想はついていた。」
「あんたたちねぇ!」
「そうやってすぐに起こるからダメなんだよぉ?」
「悪寒がする。」
実際、この二人がされたのは放置だけではない。最初に会った時の傷などから察してはいたが、やはり虐待のようなものを受けていたらしい。こうやって普通を装って話していはいるが、俺にふれる二人の体は小刻みに震えている。
「ほ、ほらあんたも離れなさいよいい加減!これは私たち家族の問題でしょ?二人も震えてるじゃない!」
「え、まさかお母さん、輝に対して震えてると思ってたの?親って、大体の子供の気持ちくらい見抜けるもんじゃないのかなぁ。」
「さすがにここまでだとは思っても見なかったけど………正直言って、私たちもう、家族じゃないし。」
「そうだよ。私さ、家族っていうのは、そばで見守ってくれる人のこと言うと思うんだよ。それに、あんたたちは該当しない。正直、血さえつながってなかったら、かかわりもないとも思うけど。」
「じゃ、じゃあ、あんたたちにとって家族って誰なのよ!」
「まず、捨てられた私たちにいろいろ教えてくれた薬屋のおじさん。これは外せないよねぇ。」
「次に……焔雲のみんなかな。」
「いろいろとしてくれたしねぇ。あ、鎖は別口だよ………ええっと、悪い意味で?」
「なんでだよ。」
「まあそりゃ、あのままでも生きれはしたわけだし?」
「捕まえたのが俺じゃなかったら一発終わりだぞ?」
「ウソウソw。感謝してるよ。」
「私も。」
「そっか。で、そうしたいんだ?おまえらは。自由に決めていい。こいつも言っていた通り、お前ら家族の問題だからな。」
「もおっ。そんなわかりきったこと聞かないでよぉ、輝。」
「そうそう。」
「ま、やっぱそうだよなぁ。わかった。その方向で決めておく。」
「え、どうなるの?仲間に迎え入れてくれるわよ…」
「斬首。」
「えっ?」
「斬首。」
「なっ!」
「お父さんもお母さんも、お耳悪いのぉ?聞こえてた?斬首って言ったんだよ?ざ・ん・しゅ。」
「陰。そんなこと言っても仕方ないよ。この人たち、斬首の意味すら分かってないみたいだから。」
「あ、そっか。ごめんごめん。首切りって言ったほうがわかりやすい?首をね、刀でチョッキンてするの。あ、でも切腹のほうがいいかな?介錯なしの。」
「あと陰、この人と私たち他人だよ?お父さんとお母さんなんて私たちにはいないでしょ?」
「あ、そっかぁ。ごめんごめんついついね。」
そうして話す二人の顔はとても怖いものだが、やっとこのつながりを断ち切れてせいせいしたようにも見える。処分は、あの二人と話して決めることにしよう。
「輝。忘れたわけではあるまいな?」
「ああ、わかってる。あの二人に試練を受けさせてくれ。」
そうして二人は、朱雀の試練を受けることになったのだ。……この後すぐだったけど。